ワールド・ベースボール・クラシック(WBC:World Baseball Classic)はメジャーリーグベースボール(MLB)機構とMLB選手会が設立した組織で運営される、事実上の野球世界一決定戦です。
日本は第1回、第2回を連覇した強豪であり、今回も優勝候補の一角として大きな期待を担っています。
この記事では、WBCの代表基準と、日系人メジャー選手の招集動向などについて詳しく解説します。
WBCが定める代表基準とは?
まず最初に、大会主催者であるWBCが正式に定めている代表基準(出場資格)について確認します。
WBCへ出場できる選手は、下記に挙げる条件のうちいずれか一つに該当する必要があります。
・当該出場国の国籍を有すること
・当該出場国の永住資格を有すること
・当該出場国で出生していること
・本人の両親のどちらかが当該出場国の国籍を有すること
・本人の両親のどちらかが当該出場国で出生していること
・当該国の国籍またはパスポートの取得資格があること
・過去のWBCで当該国の最終ロースター(*)に登録されたことがあること
(*)「登録簿」「名簿」の意味で、出場登録された選手のこと
上記の要件は、最近日本の活躍で注目が高まっているラグビーと比較するとかなり厳密に感じますが、他の多くのスポーツでも、国籍条項などを含め、類似の規定を設けている場合が多いようです。
ただし、この条件は、オリンピック憲章のように明確に定められている訳ではないため、一部の代表選手は複数の国の代表資格を保有している場合があり、最終的な判断は本人や所属国代表チームの判断が加味されます。
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WBC日本代表における代表基準は?
WBCが定める代表基準について確認しましたが、日本の場合、WBCのメンバーは実際にどのようにして決定されるのでしょうか。
結論からいえば、日本チームの場合、これまでは基本的に国内プロ野球またはMLBで活躍している「プロ選手」を基準として選定されてきました。
プロ野球選手がベースとなっている主な理由としては、他国の競合チームも同様に、優勝を目指すために最高の技量を誇るプロ選手を代表として選定していることが挙げられます。
(ただし、これも野球強国であるキューバのように、そもそもプロ野球組織がない国は該当しませんが、国内最高レベルの選手を選ぶという趣旨は同じです)
なお、代表選手の起用に際しては、日本代表監督(第1回優勝:王貞治監督、第2回優勝:原辰徳監督など)やスタッフの要望、また本人の希望だけではなく、それぞれの所属チームとの交渉が必要となります。
その理由は、WBCの開催時期が概ね春先となっており、本番のシーズン前の大切な調整時期と重なるので、各選手の所属チームからも選手起用の理解や協力を得ることが必須条件となるからです。
日系人メジャー選手も招集へ
今回の代表基準では、日系人のメジャー選手が召集可能となっているのが大きなポイントです。
具体的な候補選手としては、カージナルスのラーズ・ヌートバー外野手や、ガーディアンズのスティーブン・クワン外野手の名前が挙がっています。
ヌートバー外野手は母親が日本人であり、クワン外野手も母方の祖父母が日本人で、母親が日本で出生しているため、代表基準となる出場資格を満たしています。
今季MLB2年目のシーズンを過ごしたヌートバー選手は14本塁打の打撃に加えて好守も光り、クワン選手はMLB開幕戦でメジャーデビュー後、打率.298の好成績を記録しています。
この2選手の選出は、メジャーでの環境に慣れ、結果を残した選手を聖域なく選ぶ決意の表れともいわれており、所属球団との交渉などが順調に運べば、召集される見込みが高い状況です。
日本人メジャー選手の選考について
WBCの第1回、第2回大会を連覇したメンバーのうち、イチロー選手や松坂大輔選手など、MLBでも大活躍して全盛期を誇った多くの選手がチームの主軸として優勝に貢献しました。
ところが、2013年の第3回大会(優勝:ドミニカ共和国)を経て、第4回大会(優勝:米国)となった2017年大会では、日本人メジャー選手の不参加が相次ぎました。
その背景として、日本人メジャー選手がそれぞれ所属するチームの事情とMLBの開幕シーズンが関係しているといわれました。
主催元であるWBCが、MLB本番シーズンの開幕直前ということもあって、選手の怪我や故障のリスクを冒してまで出場するよりも、各所属チームに残って本番シーズンへ向けて調整して欲しいと考えるMLB球団が多く、こうした球団は自軍の選手を可能な限り出場させたくたい思惑があったのです。
選手も同様、自分のコンディションを万全に整えてシーズンをスタートさせたいという理由から、WBCは回避してチームでの調整に専念したいと考えたのです。
WBCは、主催者である一方、日本とは異なり「WBCよりもMLBのシーズンを優先してほしい」という希望がMLBの各球団にあったため、その結果として、MLBに所属する日本人選手に不参加が相次いだのです。
今回の主な代表候補
今回のWBC代表は現時点(2022.11現在)ではまだ正式発表されていませんが、主な代表候補を挙げてみます。
まず、問題となる日本人メジャー選手ですが、今回はMLBで現在活躍中の選手を招集する方針と伝えられています。
昨年のMVPで、今年も投打にわたって歴史的な大活躍を続けたエンゼルスの大谷翔平選手をはじめ、好成績を収めたパドレスのダルビッシュ有投手、カブスの鈴木誠也外野手の参加が有力視されています。
国内組では、強化試合のメンバーに選出された選手を中心に、更なる追加招集が予想されます。
完全試合を達成したロッテの佐々木朗希投手や、三冠王に輝いたヤクルトの村上宗隆選手、投手4冠の山本由伸投手や「甲斐キャノン」で名を馳せた甲斐拓也捕手など、錚々(そうそう)たるメンバーが選ばれ、活躍が期待されます。
日本人メジャーリーガーや国内組みに加えて、前述した日系人メジャー選手も招集されれば、更に選手層が厚くなり、まさに多士済々の最強軍団となる可能性があります。
ちなみに、日本代表を率いるのは、日本ハムで長らく指揮を執り、優勝経験もある栗山英樹監督が決定しています。
まとめ
野球の世界一を決定する大会である第5回WBCにおける代表基準と、日系人メジャー選手の招集状況や該当者などについて詳しく解説しました。
来春に開幕を迎える最高峰の大会に誰が選ばれるのか、それぞれがどんな活躍をして、その結果優勝を奪還できるのか、期待に胸が膨らむばかりです。