「パデル」というスポーツをご存知だろうか?
1970年代に誕生した、テニスとスカッシュの要素を持ったラケットスポーツで、強化ガラスと金網に囲まれたコートでプレーするのが特徴だ。
ヨーロッパを中心に成長著しいスポーツで、発祥の地・スペインでの競技人口はサッカーを上回っている。
日本国内での認知度を高めるべく2023年1月、東京スカイツリーのふもとにパデルコート「パデル東京ミズマチ」がオープン。
ラケットスポーツ未経験の私がパデル初体験リポート!と共に、日本パデル協会副会長の玉井勝善さんにその特徴や魅力を伺った。
【玉井勝善(たまい かつよし)/一般社団法人日本パデル協会 副会長】
「パデル」の魅力に惹かれ、14年間経営したIT会社の社長を辞め、2015年10月パデル事業を行なう株式会社Padel Asiaを設立し代表取締役に就任。
また、日本パデル協会の副会長としてパデル普及や事業化推進を主導する。
インタビュアー・文:中嶋絵美
まずはパデルを体験してみた!
とにもかくにも、まずは体験!ということで、早速コート内へ。
今回は現役のパデル日本代表選手でもある吉元さやかさんと、パデル東京ミズマチの支配人を務める平田健一郎さんのお二人にレッスンを担当していただきました!
現役の日本代表選手からレッスンを受けられるとは…。大変恐縮です。
こちらのコートでは吉元さんが担当されるレッスンも多くあるとのことですので、是非現役日本代表のプレーを肌で体験してみてください!
吉元さやかさん
平田健一郎さん
パデルのコートは20×10メートルの長方形で、テニスに比べてやや小さいコートです。
四方をガラスと金網で囲まれているため、初心者の私でもボールがとんでもないところへ転がっていくことはないだろう、という安心感がありました!
ボールは硬式テニスとほぼ同じですが、ラケットは特徴的です。テニスラケットに比べて短く、面はガット(網)ではなく板状になっています。
テニスのラケットは真ん中に当てないとボールがうまく飛んでいきませんが、パデルラケットは短くて板状なので、どこに当たっても前に飛び、球技が苦手な人でもすぐにラリーができるようになりますよ!
試合は2人対2人のダブルスのみで、ルールはほぼテニスと同じ。
85~90%の要素をテニスが占めており、壁を使ったショットの一部がスカッシュに似ています。
そのうちの1つ「レボテ」は「跳ね返り」という意味があり、後ろの壁から跳ね返ってきたボールを打つ、パデル特有のショットです。
今回はスポスルから、私を含めパデル初心者4人で体験しましたが、壁を使ったショットが相手コートに返ると「おーっ!!」という歓声と拍手!
ミスショットや空振りをしても、「惜しい!」「難しい!!」なんて言いながら、自然と笑顔がこぼれていましたね!
↑吉元さんにお手本を見せてもらい…
↑私も実践!
ものの30分という体験時間でしたが、最後は試合形式でラリーを行うところまでたどり着くことができ、なんだか達成感と爽快感を感じることができました!!
最後は試合もさせていただきました!ミスしても笑いあって大盛り上がり!
この後インタビューさせていただいた玉井さんも試合に参加!
パデルは人を笑顔にする!パデル沼へようこそ
そんな楽しいパデル体験を終えた後は、パデルに出会いその魅力にどハマりしたという一般社団法人日本パデル協会副会長の玉井さんにお話を伺いました。
ーーー玉井さん!パデル、めちゃくちゃ楽しかったです!
玉井さん
やると分かると思うんですけど、パデルは“笑える”んですよ。
いいショットが出ても、空振りしても、みんなで「ワハハ」って笑いながら楽しめる。それがパデルの魅力ですね。
球技って基本的に、やってる人同士のレベルが近くないと一緒にプレーできないんです。
特にテニスの場合、サーブは上から打つので初心者には非常に難しく、ラケットも長くてボールを当てにくい。加えて、飛んできた強いボールをすぐに返さないといけないですよね。
それに比べてパデルは、サーブは下から。ラケットは短くて扱いやすく、壁に当たって勢いのなくなったボールを打ってもいいので、フィジカルがそこまで強くない方でもボールを返せる。
老若男女問わず、初心者も経験者も混ざってプレーできます。始めやすく、楽しい!ということから、全世界での競技人口が2500万人まで増えています。
ーーー今回体験させていただいた、私を含めたスポスルメンバーのみんなは口々に「楽しかった!」「またやりたいねー!」と話してました。
玉井さん
スポーツって何でもそうですけど「自分、ちょっとこのスポーツ上手いんじゃないの?」と思った時にハマるんですよ。パデルはそこがすごく優れています。
「ラリーできるし、壁も使えるからちょっとセンスあるかも?」って感じるんですよね。やり始めるとすごく難しいんですけど。
入りやすくて奥深いスポーツなんです、パデルは。よく“沼”って言われます。
怠け者が作ったスポーツに、肉を焼きに行ったら出会った!?
ーーーパデルはテニスを楽しもうという発想から生まれたスポーツだと聞きました。
玉井さん
実は、スペイン人が“怠け者”だからできたスポーツなんです(笑)
テニスって、ボールがかなり飛び散るので、初心者だと飛んで行ったボールを捕りに行く時間が試合時間60分のうち20分とか。
それをスペイン人が「いやだ!」ということで、コートの周りにレンガを置いたんです。
そうしたらボールが跳ね返ってくるようになって「これOKにしない?」という話に。そこからパデルが生まれました。
ーーーなんと!そんな起源があったんですね。玉井さんはパデルにどのようにして出会ったのでしょうか?
玉井さん
バーベキューです!
ーーーえ!?(笑)
玉井さん
友人からバーベキューに誘われたんですが、それが埼玉県所沢市のパデルコートでのイベントで、「パデルとバーベキューを楽しもう!」というものでした。
元々テニスをプレーしていて、パデルの存在も知っていたんですが、特に興味はなくて。
ただ、バーベキューには興味があったので(笑)参加してみたら、そこにすごい光景が待っていました。
国籍はバラバラ、レベルも関係なくパデルをプレーしながら、肉も焼いて、同じ空間でワイワイやっている。
「こんなスポーツ見たことない!おもろー!!!」と感じたのが、2015年5月のこと。
そこから3ヶ月で考えて「人生をパデルに捧げる!」と決め、会社を辞めました。それからはもう楽しくて、毎日のようにやっていたんですよ。肉焼いて(笑)
肉がなかったらパデルに出会っていないですね。
2032年のオリンピック正式種目への期待が高まっているというパデルは、既に様々な競技大会での採用が進んでいる。
・2022年 南米大陸オリンピックゲーム採用
・2023年 欧州大陸オリンピックゲーム採用
・2026年 アジア競技会(日本開催)での採用を目指す
また、日本パデル協会の名誉会長を務めるのは、大のパデル愛好家で、サッカー漫画「キャプテン翼」の作者・高橋陽一さん。
高橋さんがパデルを題材にした漫画を描く計画もあるという。
玉井さんは、リアルな大会と二次元の世界での日本人パデル選手の活躍から日本でのパデル人気に火が付くのではと期待を寄せる。
「パデル東京ミズマチ」をシンボリックなものにしたい
ーーー日本での認知度を高めるために必要だと考えていることは?
玉井さん
日本でのパデル人口は約3万人。(2023年6月現在)
施設自体がまだ少ないですし、何かシンボリックなものが必要ですね。
例えばスペインだと、王族が趣味としてパデルを始めたり、他の国でもサッカー選手や著名人がプレーしたりと、インフルエンサーがいるんです。
日本にもそれが必要だと思って「パデル東京ミズマチ」をつくりました。
ゴールデンウィーク期間には1日で2万人もの人が行き交うこの場所で、多くの人の目に触れてパデルを知ってもらうことが目的の一つです。
実際に通行人の方から「なんの競技?」と声を掛けられたり、「やらせて~」と入ってくる方もいたりして、地域での広がりを実感しています。
通行人の方にもわかりやすいように、施設入口にはパデルの紹介ポスターが設置されていました!
ーーー最後にパデル東京ミズマチのウリを教えてください。
玉井さん
アクセスの良さとスカイツリービューです!
また、施設のマネージャーも務めているパデル日本代表選手から、直接レッスンを受けられるところも魅力です!
こんな近くにスカイツリーが!絶景の中でのパデルを是非!
取材後記
スポスルから体験に参加した初心者4人、恐らく1人1回は「自分、上手いかも」と思ったはず。
それほどまでに入口はやさしいが、壁を利用した特徴的なショットなど、試合となれば頭脳プレーも求められるところに深みを感じました。
日本ではまだその魅力に気が付いていない人も多い、今が始めるチャンス!?
パデルを通して新しい仲間を増やすもよし、日本代表選手を目指すもよし!!
抜け出せないことを覚悟で、“パデル沼”に足を踏み入れてみては?
パデル東京ミズマチ
東京都墨田区向島1-32-4 「東京ミズマチ」内
(とうきょうスカイツリー駅 徒歩3分)
パデルはダブルスでのプレーだが、1人で参加できるイベント等も開催している。
(初めてプレーする際には60分の体験レッスンへの参加をおすすめしています。)
イベント情報や体験レッスンの申し込み等、詳細はパデル東京ミズマチのHPへ!!