買ったままではとても硬い野球のグローブ。
手に馴染むように一生懸命柔らかくしても、イマイチな仕上がりになることもあります。そのようなことにならないよう、野球グローブを仕上げるプロがいます。さらに、私たちでも得られるグラブアドバイザーという肩書きもあります。
今回はグローブの仕上げと手入れに関わるお仕事、自分でもできることをご紹介します。
グローブのプロが行う「型付け」
新品のグローブは硬すぎて、買ってすぐには使い辛いもの。そこで多くのショップでは「型付け」という作業をオプションで行ってくれます。
グローブを柔らかくしてすぐに使えるように加工してくれる作業ですが、いくつかの種類があります。
湯もみ型付け
お湯の中にグローブを入れて柔らかくする方法。
お湯にくぐらせ、出してから強く押し、水気を切り、もみほぐしながら形を整えていきます。続いて木製のハンマーで叩いて革を柔らかくし、使用する人の手に合わせてボールを押し付けて捕球面を整え、さらに乾燥と蒸しを繰り返しながら柔らかくしていきます。
グローブが最も柔らかくなる方法ですが、お湯にくぐらせる時間や力加減、蒸し時間など、高度な職人の勘が要求されます。
スチーム型付け
グローブ専用のスチーマー(蒸し器)で革を柔らかくする方法です。蒸してから、もみ、叩いて型付けしていきます。
手間のかかる湯もみほどグローブが柔らかくはなりませんが、万が一グローブが自分に合っていないと思った時、スチームをやり直して再加工しやすいというメリットがあります。
一方のデメリットは、スチームの前に特殊なオイルを塗るため、オレンジやナチュラルなど薄い色のグローブの場合、オイルのシミが残ってしまう場合もあることがあります。
多くのお店で行われる加工ですが、職人の技量によってフィット感に差が出ることがあるため、信頼できる職人がいるお店で作業してもらう方が安心です。
手もみ型付け
お湯やスチームを使わず、オイルで柔らかくしながらひたすら手でもみ、叩くことで仕上げていく方法です。
湯もみやスチームほど柔らかくはならず、手で開閉できる程度の硬さに仕上げますが、革へのダメージが少ないのがメリット。使用する人がゆっくりと手に馴染ませていくことができます。
こちらも使う人が曲げたい部分をしっかり柔らかくするなど、仕上がりをイメージして作業を行う職人技が求められます。
プロの知識を習得「グラブアドバイザー」
国内のグローブメーカー「YAMATO」が主催している「グラブアドバイザー」という民間の資格があります。養成コースを受講し、認定テストに合格すれば資格を得られるというものです。
講義では、正しいグローブの見立て方や、プロのお手入れ方法、グローブの革、ローションやオイルなどの基本的な知識から「グローブのあごの閉じ方」、「逆綴じ」、「被せ締め」といった実践的な技までを学べます。認定テストに合格すると、「グラブアドバイザー」としてお手入れセミナーを開催することも可能。
学校の先生やコーチの他、息子のグローブをしっかり手入れしてあげたいお父さんが受講することもあるそうです。
素人でもできるグローブの手入れ
とはいえ、グローブの手入れは専門資格がなければ絶対にできないものではなく、「お金をかけずに自分でやりたい」という方もたくさんいます。
型付け
自分で型付けをする際にはお湯やスチームは使わず、「手もみ型付け」で行うのが一般的。その際に重要なのが、柔らかくする部分です。
柔らかくすべきなのは、3カ所だけ。
・小指の付け根の「ヒンジ」
・下の部分の「土手」
・人差し指と親指の間の「ウェブ」
動くべき場所はここだけなので、これ以外を柔らかくしないように注意します。
まず重要なのは、ヒンジの部分。この部分が硬いままではグローブを開閉することはできません。折り畳んでからよく叩き、しっかり揉んで柔らかくします。
土手の部分は柔らかければ自由に動きますが、ある程度硬さを残した方がいいという人もいます。好みの硬さになるまで叩いたりもんだりして仕上げます。
ウェブは人差し指に近い部分で折れ曲がるので、ここを重点的に柔らかくします。無闇に全体を柔らかくすると打球に負けてしまうことになるため、他の部分は硬いままにします。
メンテナンス
グローブは普段のメンテナンスも重要。手入れを怠って型が崩れたり、カサカサの表面になったりすると、打球の回転が止まらず、エラーに繋がります。
捕球面にポケットを保ち、表面をしっとりさせておくことで格段に捕球しやすくなるのです。メンテナンスでは、まずブラシで土や埃を落とします。グローブの革の繊維は縦に入っているため、手の中心から指先に向かってブラシを動かすと落としやすくなります。
次にクリーナー(グローブローション)を薄く塗ってから雑巾で拭き取ることで汚れと古いオイルを落とし、その上でオイル(ドロース)を塗り、油を補給します。全体にまんべんなくではなく、乾いている部分に重点的に塗るのがコツ。
最後にブラシやムートンで仕上げれば完成です。
まとめ
愛情を込めると、長く使え、パフォーマンスもアップするグローブ。その世界にはプロの高度な技があります。一方、自分でできることもいろいろとあります。
自分だけのグローブを大切に育てる参考にしてください。
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