プロ野球ではめったに見られないプレーの一つがランニングホームラン。
1シーズンに2〜3度しかない珍しい現象です。
ところがこのランニングホームラン、過去にはかなり多かったことをご存知でしょうか。
ではこれまでに最も多くのランニングホームランを打ったのは?
メジャーリーグで日本人も打っている?
最短飛距離のランニングホームランは?
今回は、ランニングホームランにまつわる歴代記録をご紹介。
ランニングホームランという記録の定義についても解説します。
【ランニングホームラン】条件
そもそもランニングホームランとはどのようなプレーを言うのでしょうか。
2023年4月2日にはヤクルトの村上宗隆選手の「確信歩きからのランニングホームラン」が話題になっています。
これはランニングホームランなのでしょうか。
【関連記事はこちら】⇩
・ランニングホームランは記録上はどうなる?歴代達成者一覧も!
・ランニングホームランとは?定義や条件について解説!
村上選手のランニングホームラン検証
この打席で村上選手は打球を高々と打ち上げ、ホームランの“確信歩き”を披露しました。しかし打球はまさかのフェンス直撃。
これを広島のライト野間選手が捕球できず、さらに体勢を崩して送球が逸れます。村上選手はその間に確信歩きからの激走で二塁を周り、ホームインしたのです。ネット上には「確信歩きからのランニングホームラン」という言葉が飛び交いました。
ではこれはランニングホームランなのかというと、実は違います。
記録は2塁打+エラー。記録上はランニングホームランとはならないのです。
ランニングホームランの条件
村上選手の場合のように、エラーが絡んでバッターがホームインすることはよくあります。
しかしそれはいずれも、安打+エラー。エラーがなければ何塁まで進塁できたかを基準に、単打+エラー、3塁打+エラーなどと記録されます。
記録上ランニングホームランになるのは、エラーが全く絡まなかった場合だけ。
これは滅多にあるものではなく、具体的には外野に飛んだ打球がフェンスに当たって不規則な跳ね返り方をした場合、または外野が取れるかどうか微妙な打球にダイレクトキャッチを試みながら取れず、外野をボールが転々と転がった場合など、限られた状況でしかランニングホームランとはなりません。
【ランニングホームラン】歴代記録
ランニングホームランは近年では稀にしか見られないプレー。
日本プロ野球機構が発表している2016年以降の記録では7年間に15回しか達成されていません。
2016年 | 8月25日 | 茂木栄五郎(楽天) |
9月19日 | 茂木栄五郎(楽天) | |
2017年 | 8月1日 | 上本博紀(阪神) |
8月30日 | 高橋周平(中日) | |
9月14日 | 角中勝也(ロッテ) | |
2018年 | 6月14日 | 青木宣親(ヤクルト) |
9月27日 | 大山悠輔(阪神) | |
2019年 | 6月29日 | 上林誠知(ソフトバンク) |
2020年 | 7月25日 | 宗佑磨(オリックス) |
8月19日 | 外崎修汰(西武) | |
10月3日 | 辰己涼介(楽天) | |
2021年 | 5月3日 | 宗佑磨(オリックス) |
10月9日 | 若月健矢(オリックス) | |
2022年 | 3月27日 | 塩見泰隆(ヤクルト) |
5月15日 | 糸原健斗(阪神) |
2016年の茂木栄五郎選手のシーズン2本は1992年の巨人・川相昌弘選手以来の快挙。ランニングホームランはそれくらい打つのが難しいということが分かります。
戦前のランニングホームラン記録
そもそもランニングホームランは記録ではホームランと同じ。
公式記録員がスコアブックの余白にホームランの飛距離を記入するため、だいたい分かるようになっていますが、それも戦後のことで、戦前は一般的なホームランかランニングホームランかは全く分からないそうです。
また高校野球などでもホームランとしか記録されないため、実態が把握しにくくなっています。
では昔からランニングホームランは珍しかったのかというと、実はそうではありません。
ランニングホームランが少なくなったのは、球場の大きさや形がだいたい今の状態に落ち着いてから。
例えば完成当時の甲子園球場は両翼が110m、左右中間が130mもある広大な外野だったため、戦前の中等学校野球大会(高校野球の前身)や阪神のホームランの大部分はランニングホームランだったといわれています。
最多記録の選手
前述のように戦前のランニングホームランは数が多い上に実態が把握されていません。
戦後に判明している限りでのランニングホームラン最多記録は5回。
木塚忠助選手と杉山悟選手が達成しています。
木塚忠助選手は1948年に南海に入団した俊足の選手。1950年には当時の日本記録となるシーズン78盗塁を記録しています。
ランニングホームランは54年に2本記録。これは川井選手・茂木選手と並ぶ1位タイ記録ですが、木塚選手の場合、8月の1か月に2本を記録。月間の本数で日本記録となっています。
一方の杉山悟選手は1948年に中日に入団し、1952年には本塁打王を獲得したスラッガー。実は足は特別速いわけではなかったと言われています。
世界最多の記録
メジャーリーグ(MLB)の場合、古くからのランニングホームランの記録も残っています。しかもMLBの球場は歪な形が多く、外野に飛んだ打球が奇妙なバウンドをしやすいのも特徴。
そのためMLBのランニングホームラン最多記録はなんと55本にもなります。達成したのはレッドソックスなど4球団で活躍したジェシー・バーケット選手。
イチロー選手に破られるまで、シーズン220安打以上4回、安打1526本のMLB記録保持者でもあった選手です。
このバーケット選手の生涯本塁打は75本。つまり打ったホームランの73%がランニングホームランということになります。
ランニング満塁ホームラン
ランニング満塁ホームランは過去に7人が記録しています。
・1947年 野口明(阪急)
・1950年 阪田清春(広島)
・1974年 弘田澄男(ロッテ)
・1977年 ウィリー・デービス(中日)
・1989年 田辺徳雄(西武)
・1997年 高木大成(西武)
・1999年 小久保裕紀(ダイエー)
21世紀にはまだ1度もないというレアな記録です。
MLBの日本人ランニングホームラン
ランニングホームランが比較的でやすいMLB。
日本人選手もこれまでにレギュラーシーズンで3人が記録しています。
・2006年 松井稼頭央(メッツ)
・2012年 青木宣親(ブルワーズ)
・2022年 鈴木誠也(カブス)
松井稼頭央選手は3年連続シーズン初打席本塁打となる1本、青木宣親選手は本拠地初スタメンでメジャー移籍1号、鈴木誠也選手は左手薬指負傷から復帰初戦で記録と、いずれもドラマチックなランニングホームランでした。
しかしドラマチックといえば最も印象に残るのは、2007年MLBオールスターでのイチロー選手。オールスター史上初のランニングホームランで、イチロー選手はMVPを獲得しました。
最短飛距離のランニングホームラン
ホームランは前述のようにスコアブックに飛距離が記録されるため、ランニングホームランであることが分かります。
では最も短い飛距離のランニングホームランは?
日本プロ野球での記録は、なんとわずか22mです。
これは1972年7月4日にロッテの千田啓介選手が南海戦で記録したもの。
千田選手の打球はサードの前で大きく弾んで頭を超え、外野を転々。その間にランニングホームランとなったのですが、打球が最初に弾んだのは本塁からわずか22mの地点だったのです。
ところがアメリカの記録はさらに桁外れ。
1902年に雨の中行われたマイナーリーグの試合で、バッターの目の前にポトリと落ちた打球が泥沼状態のグラウンドに沈んでしまうという珍事が発生。野手がボールを探している間にバッターは塁を一周し、なんと飛距離50cmのランニングホームランが記録されました。
まとめ
近年の日本ではほとんど見ることがなくなったランニングホームラン。
いくつかの幸運と俊足がなければ達成は難しいだけに、エラーがらみではない真のランニングホームランは大きな価値のあるプレーということになります。
一生に一度でも球場で目撃できたら、かなりの幸運と言えるかもしれません。
【関連記事はこちら】⇩
・【MLB】ホームラン記録一覧|シーズン最多・通算本塁打もご紹介!
・【サヨナラホームラン】意味や条件について解説!記録一覧も