炭水化物と対してどんなイメージを持っていますか?
◇炭水化物ってどのような働きをしているの?
◇炭水化物にはどんな種類があるの?
◇炭水化物を多く含む食品を知りたい
このような疑問を抱えておられる読者の方に向けて、管理栄養士である筆者が炭水化物についてご紹介します。
炭水化物とは
炭水化物とは、ヒトの体内で消化、吸収でき、エネルギーとして利用できる糖質とヒトの体内でほとんど消化されない食物繊維の2つに分けられます。
炭水化物の主な働き
炭水化物のうち糖質は1gあたり4kcalのエネルギーを持ち、スポーツの場面では主に運動時の筋肉のエネルギーとして使われたり、集中力をキープする脳のエネルギーとして働いたりしています。
中にはオリゴ糖のようにお腹の調子を整える働きをもつ糖質もあります。
食物繊維は1gあたり0~2kcal程度でエネルギーとしてはほとんど期待できません。
しかし、その代わりに水溶性食物繊維では血糖値の上昇を抑えたり、肝臓の脂肪代謝を変えてコレステロール量を調整したりします。
また不溶性食物繊維は腸の蠕動運動の促進や便の量を増やして腸内環境を改善するのに役立っています。
炭水化物(糖質)の種類
糖質には糖類(単糖類、二糖類)、少糖類、多糖類があり、スポーツ時にはこれらを使い分けしています。
糖類とは1つの糖または2つの糖からなる糖質のことで、甘みがあり、水に溶けやすい特徴があります。
体内での吸収が速いため、血糖値を急激に上昇させます。
また過剰摂取の場合には体脂肪になりやすいという一面もあります。
スポーツの場面では、この吸収が速くエネルギーに変わりやすいことを利用して、練習の合間や試合間など、運動で使ったエネルギーを素早く回復させる時に摂取します。
単糖類
単糖類はこれ以上加水分解されない糖質のことで、穀類や果物に多く含まれるグルコース(ブドウ糖)、果物や果汁、はちみつに多く、砂糖の1.5倍の強い甘みを持つフルクトース(果糖)、その他ガラクトースなど200種類以上あります。
二糖類
二糖類は単糖類が2つ結合したもので、料理や菓子などに使われる砂糖のショ糖(スクロース)、母乳や牛乳に含まれる乳糖(ラクトース)、麦芽や水あめに多い麦芽糖(マルトース)などがあります。
少糖類
少糖類は単糖が3~9つ結合しているものでオリゴ糖ともいいます。
甘みがあり、水に溶けやすく、体内に吸収されにくい特徴があります。
フラクトオリゴ糖やマルトオリゴ糖など、砂糖のように甘みを持ちますが、食物繊維のように消化されにくい糖質甘味料で難消化性糖質ともいわれます。
大腸でビフィズス菌の栄養源となり、おなかの調子を整えたり、血糖値を上げにくいなど有用な働きがあります。
多糖類
多糖類は多くの単糖が結合したもので、甘くなく、食品にとろみをつけたりしています。
糖が鎖状に長く結合しているため、吸収の早い糖類に比べてゆっくりと吸収されます。
しかし一度にたくさんの糖質を補給できるメリットがあることから、スポーツの場面では消耗したエネルギーを翌日の練習や試合までに回復させるなど、筋グリコーゲン(筋肉に貯金された糖質のエネルギー源のこと)の回復に時間が長くとれる時に摂取するのがおすすめです。
多糖類の代表的な種類にでんぷんがあります。
これは、ご飯やパン、めん類などの小麦製品、じゃがいもなどの芋類、片栗粉などに多く含まれており、ブドウ糖が長い鎖状に結合しています。
炭水化物を多く含む食品
糖質を含む食品
・糖類の多い食品(吸収が早いので素早いエネルギー補給に)
砂糖、スポーツドリンク、ジュース、エネルギーゼリー、果物、果汁ジュース、はちみつ、あめ
・多糖類の多い食品(吸収がゆっくり、しかし一度にたくさん摂取できる)
ご飯、うどん、そば、パスタなどめん類、パン、バナナ、じゃがいもなどいも類
食物繊維を含む食品
・水溶性食物繊維
熟した果物、こんにゃく、海藻、プルーン
・不溶性食物繊維
ごぼうなどの野菜、さつまいも、玄米、全粒粉パン、きのこ、豆類、ココア
炭水化物の摂取目安量
糖質の1日の摂取目安量は、1日の総エネルギー摂取量の50~65%です。
1日の総エネルギー摂取量が2000kcalの場合、目安として1000~1300kcalを糖質から摂取します。
おおまかに考えると、1日に摂取したエネルギー量の半分からそれよりも少し多い位を目安に糖質から摂取するとよいでしょう。
それから本格的にスポーツをしていて、もっと自分に適した糖質量を知りたい人は、運動の内容に合わせて糖質摂取の目安量を算出してみましょう。
以下に示す体重1㎏あたりの糖質摂取目安量にあなたの体重をかけ算すると、あなたに適した1日あたりの糖質摂取目安量が求められます。
・低強度または技術トレーニング時は3~5g/㎏体重/日、
・中強度(1時間以内)の練習時は5~7g/㎏体重/日、
・持久的なトレーニング(1~3時間の中・高強度トレーニング)時は6~10g/㎏体重/日、
・高度なトレーニング(4~5時間以上の中・高強度トレーニング)時は8~12g/㎏体重/日
(Burke LM et al, 2011)
例えば、体重60kgで1日2時間、中強度のスポーツ活動をしているAさんの場合
6~10g/㎏体重/日×60kg=360~600g/日
すると1日あたりの糖質摂取目安量は360~600gになります。
ちなみに、丼ご飯1杯(飯300g)の糖質量はおおよそ100g、コンビニサイズのおにぎり1個の糖質量はおおよそ35g位です。
またスポーツドリンクに含まれる糖質量は100mlあたり、おおよそ6g程度、1ℓでおおよそ60g位になります。
ざっくりとではありますが、Aさんの場合、毎食丼1杯のご飯を食べて、スポーツドリンクを1ℓ飲むと1日あたり360gの糖質を摂取したということになります。
実際には、そのほかの食品や調味料にも糖質が含まれているため、栄養計算のできるアプリなどで確認してみるのがよいでしょう。
食物繊維の摂取基準は1日あたり成人男性21g以上、成人女性18g以上が目標です。
炭水化物の不足による影響
糖質が不足すると体脂肪や筋肉のたんぱく質を分解して血糖に変える糖新生が始まります。
エネルギーが不足してくると疲労感や脱力感が表れ、脳や神経のエネルギーも補給されないため、ひどい場合は意識を失うこともあります。
このようなエネルギー切れの状態でスポーツを行うと、競技力の低下や集中力の低下、低血糖が起こり、けがのリスクも増加します。
また長期的に不足すると体重が減少します。
炭水化物の過剰摂取による影響
摂取して使われなかった余分なエネルギーは最終的に中性脂肪になって蓄積され、過剰になると肥満になります。
炭水化物まとめ【要約】
・炭水化物は糖質と食物繊維に分けられる
・糖質の多い食品は、筋グリコーゲンの回復時間に合わせて選択しよう
・糖質の摂取量は総エネルギー摂取量の50~65%が目安
・糖質が不足するとエネルギー切れに、自分に適した量を摂取しよう