タンパク質に対してどんなイメージを持っていますか?
◇タンパク質ってどのような働きをしているの?
◇タンパク質にはどんな種類があるの?
◇タンパク質を多く含む食品を知りたい
このような疑問を抱えておられる読者の方に向けて、管理栄養士である筆者がタンパク質についてご紹介します。
タンパク質とは
タンパク質とはアミノ酸が多数結合した化合物のことで、英語名をProtein(プロテイン)といいます。
プロテインはギリシャ語で「一番大切な」という意味です。
プロテインというとサプリメントを想像する人もいると思いますが、肉や魚などいろいろな食品に含まれているタンパク質もプロテインです。
アミノ酸とプロテインは全くの別物ではなく、アミノ酸がたくさん集まればプロテインになりますし、プロテインがばらばらに分解されれば、それはアミノ酸になります。
タンパク質の代謝回転
肉や魚のタンパク質を摂取すると、胃や十二指腸、小腸で消化され、アミノ酸まで分解されて小腸などから吸収されます。
吸収されたアミノ酸は血液を介して各組織へ運搬され、筋肉などに生まれ変わります。
このように新しいタンパク質を材料にして古い組織を新しく作り替えることを代謝回転と言います。
ヒトの各臓器のタンパク質代謝回転は、筋肉や脳に比べて肝臓や腎臓で早いことがわかっています。
このことは計量のあるスポーツで絶食をした場合、タンパク質が分解して筋肉よりも早く肝臓や腎臓などの臓器にダメージが生じる可能性を意味します。
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タンパク質の主な働き
体内におけるタンパク質の働きは、まず1gあたり4kcalのエネルギーとして利用できます。
スポーツの場面では本来、筋肉をエネルギーで使うことは好ましくありませんが、エネルギー不足の状態ではエネルギーとして利用されてしまいます。
他にも・・・
①筋肉、骨、髪、爪、皮膚などの結合組織を作る構成成分になる
②酵素やホルモン、抗体の材料になる
③栄養素や酸素の運搬する
④鉄を貯蔵する
などの働きがあります。
必須アミノ酸と非必須アミノ酸
ヒトの身体は20種類のアミノ酸で作られており、これらのアミノ酸は、
・必須アミノ酸(ヒトの身体で合成できないか合成できてもわずかしか作れないため食事から摂取しなければならないアミノ酸)
・非必須アミノ酸(足りなくなった時にはヒトの身体で合成できるためわざわざ食事から摂取しなくてもよいアミノ酸)
に分けられます。
必須アミノ酸は9種類
バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンがあります。
非必須アミノ酸は11種類
グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、システイン、チロシン、プロリンがあります。
そのうち必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類を分岐鎖アミノ酸(BCAA:Branched Chain Amino Acid)といいます。
アミノ酸はサプリメントとして売られていますが、実際にはサプリメントだけでなく、タンパク質を含む食品(分解するとアミノ酸になる)からも摂取できます。
またアミノ酸1000mg=タンパク質1gです。(ちなみにアミノ酸スコア100の牛乳は、コップ1杯=タンパク質が約7g含まれています)
タンパク質の効果的な摂取方法
食品中に含まれる必須アミノ酸の組成を理想的な必須アミノ酸の組成と比較して、タンパク質の「質」を点数化したものがアミノ酸スコアです。
肉類、魚介類、卵、牛乳など動物性のタンパク質および大豆はアミノ酸スコア100で良質のタンパク質です。
対して精白米93、薄力粉56のように植物性食品に含まれるタンパク質はアミノ酸スコアが少し劣ります。
しかし、スポーツ選手は白飯などの主食を多く食べることから、これらのタンパク質も上手に利用したいものです。
そこで、アミノ酸スコアの低い米やめん、パンなどの小麦製品にアミノ酸スコアの高い肉や魚などの食品を組み合わせて、足りない分を補っていきます。
するとアミノ酸スコアがアップしてアミノ酸のバランスが整います。
例えば朝食に、パンだけでなく牛乳や卵を組み合わせたり、白飯に焼き魚や納豆を組み合わせたりします。
筋肉を増やしたいと一生懸命トレーニングをしている人は、ぜひ主食と主菜を組み合わせて食べることをおすすめします。
タンパク質が豊富な食品
肉類
鶏肉(皮無しは低脂質)、豚肉(ビタミンB1豊富)、牛肉(鉄も一緒に摂れる)など
魚介類
マグロ、カツオ(鉄も多い)、タラ(低脂質)、サバ、サンマ、イワシ(n3系(オメガ3)脂肪酸)、ぶり、鮭など
卵・卵製品
生卵、温泉卵、ゆで卵、卵焼きなど
大豆・大豆製品
大豆、納豆、豆腐、厚揚げ、油揚げ、がんもどき、豆乳など
牛乳・乳製品
牛乳、ヨーグルト、チーズなど
最近では、タンパク質を強化したプロテインバーやインスタントラーメン、ココア、カップスープなど様々な市販食品も売られています。
タンパク質【1日の推奨量】
一般成人の1日当たりのタンパク質摂取基準は、男性15~64歳65g、65歳以上60g、女性15~17歳55g、18歳~50gです。
スポーツをしている人がより自分に適したタンパク質必要量を知りたい場合、体重1㎏あたり1.2~2.0g程度を掛け算することで求められます。
例えば、持久系のスポーツをしている場合1.5g×体重(kg)を目安に、レジスタンス系のスポーツでは2.0g×体重(kg)を目安に算出します。
しかし厳密には、トレーニング内容、糖質やエネルギーの摂取状態によってタンパク質の必要量は変わるため、あくまでもおおよその目安量となります。
面白いのは、ベテラン選手よりも新人選手のほうがタンパク質を多く必要とすることです。
一緒に食事をする際は、新人選手はベテラン選手に遠慮せずに、タンパク質を含む料理をしっかりと食べましょう。
筋肉を増やしたい人は
筋肉を増やしたいとトレーニングをしている人は、プロテインを摂取しないと筋肉が増えないと考えている人も中にはいるかもしれませんね。
しかしその場合、タンパク質は必要量を充足することが大切です。方法は食事からでもサプリメントからでも構いません。
例えば、豚肉の生姜焼きやさばの味噌煮など主菜1人前にはおよそ25~30g程度のタンパク質が含まれています。
主菜を3食食べると1日に約75~100g程度のタンパク質を摂取できます。
さらに主食のタンパク質量を加えると、タンパク質の必要量は食事からでも十分に摂取できることがわかります。
後述しましたが、タンパク質は摂りすぎによる悪影響もあります。
そのため、タンパク質が食事で不足していたり、運動後すぐに食事が摂れないなど、自分の食生活を見直してみて、本当に必要であれば、サプリメントの利用を考えてみるのもよいのではないでしょうか。
タンパク質不足による影響
タンパク質が不足するとさまざまな悪影響が現れます。
免疫力が低下して病気への抵抗力が弱くなったり、高齢者ではサルコペニア(筋肉量が大きく減ってしまうこと)やフレイル(運動機能の低下「虚弱」)に注意が必要です。
また、低タンパク血症による浮腫、貧血、骨折、低栄養性の脂肪肝、発育障害、けがや炎症の治癒遅延などが挙げられます。
タンパク質の過剰摂取による影響
健常人において1日あたり体重1㎏あたり2.0g以下の摂取では、タンパク質の多量摂取による影響は見られていません。
しかし、多量摂取が継続すると尿中カルシウム排泄量の増加、腎臓の弱い人は腎機能障害の悪化が起こることがあります。
またタンパク質の多量摂取で摂取エネルギーのオーバーが続くと体脂肪を増やすことにもなりかねませんのでお気をつけください。
残念ながら、タンパク質は摂ったら摂っただけ筋肉になるものではありません。多すぎず、少なすぎず、適量の摂取が望ましいでしょう。
タンパク質まとめ【要約】
・タンパク質とはアミノ酸が多数結合した化合物のこと
・減量で絶食すると筋肉よりも早く肝臓や腎臓にダメージが現れる可能性有り
・タンパク質は筋肉の材料だが、エネルギー不足の時はエネルギーとして使われる
・タンパク質の利用効率を上げるには主食と主菜を組み合わせて食べるのがカギ
・タンパク質は適量を守ることが大切、自分の必要量を調べてみよう
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