鉄分に対してどんなイメージを持っていますか?
◇鉄分ってどのような働きをしているの?
◇鉄分にはどんな種類があるの?
◇鉄分を多く含む食品を知りたい
このような疑問を抱えておられる読者の方に向けて、管理栄養士である筆者が鉄分についてご紹介します。
鉄分を含むミネラルとは
ミネラルは炭素、水素、酸素、窒素以外の元素で無機質ともいわれます。
働きは骨などの身体の構成成分や体水分のバランスを保つなど機能を調整しています。
現在、ミネラルは食事摂取基準が示されているものは13種類あり、多量または微量に含まれるものに分けられます。
体内に比較的たくさん存在する多量ミネラルが5種
・カルシウム
・ナトリウム
・マグネシウム
・カリウム
・リン
体内にごくわずかしか存在しない微量ミネラルが8種
・鉄
・亜鉛
・銅
・マンガン
・ヨウ素
・セレン
・クロム
・モリブデン
ミネラルは適量の幅が狭いことから、過剰症や欠乏症を起こしやすいものもあり、中には上限量や目標量が示されているものもあります。
日本人の場合は、カルシウムや亜鉛は不足しやすく、ナトリウムやリンは摂りすぎに注意が必要な傾向にあります。
今回はアスリートの身体作りやコンディショニングに欠かせないミネラルの鉄について解説します。
鉄分が必要な理由
鉄分は体内に3~4g含まれ、このうち70%が血液中や筋肉中にあり機能鉄(ヘモグロビンなど)といいます。
残りは肝臓や脾臓にあり、機能鉄分が不足すると使われるため貯蔵鉄(フェリチンなど)といわれます。
これらの鉄分は体内でたんぱく質と結合して存在しています。
特に身体全体に酸素を運ぶ役割のある赤血球中のヘモグロビンは、鉄分を含む色素(ヘム)とたんぱく質(グロビン)からできています。
ヘモグロビンは、材料である鉄分が不足すると、体内に酸素を十分に送れなくなるため、身体は酸欠状態になり皮膚や粘膜の蒼白や息切れ、頭痛、めまい、易疲労感など貧血症状が現われます。
スポーツの場面では、これらの症状に加えて、強度の高いトレーニングができないことも問題となるため、鉄分が必要になります。
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鉄分を多く含む食品
レバーのほか赤身の肉や魚に鉄分が多く含まれています。その他には貝類や青菜、大豆製品も鉄分のよい供給源です。
以下に記した鉄分を多く含む食品を積極的に食べることが大切ですが、鉄分の必要量が多くなると、毎日の食事で必要量を充足させるのが難しい場合もあります。
その際は鉄分を強化した栄養機能食品なども使いながら1日分の鉄分の必要量を充足させるとよいでしょう。
鉄分を多く含む食品一覧
豚レバー(1回使用量60g)鉄分含有量7.8mg
鶏レバー(60g)5.4mg
牛もも赤身肉(80g)2.2mg
まぐろ(80g)1.6mg
かつお(80g)1.5mg
あさり(5個)1.5mg
小松菜(80g)2.2mg
ほうれん草(80g)1.6mg
生揚げ(1/2枚)2.6mg
納豆(1パック)1.3mg
乾燥ひじきステンレス釜製法(4g)0.2mg
乾燥ひじき鉄分釜製法(4g)2.3mg
栄養強化シリアル(50g)5mg
栄養機能食品ヨーグルトドリンク(1本)6.8mg
栄養強化米(米100g=飯220g)2.5mg
鉄分の1日の摂取基準
1日当たりの鉄分の摂取基準は以下のとおりです。
この推奨量を目安に鉄分を含む食品を組み合わせて食べることで、1日分の鉄分の必要量を充足させることができます。
また月経のある女性は、鉄分損失を考慮して男性よりも必要量が多くなっています。
アスリートは、運動による溶血や血色素尿および発汗による損失に加えて鉄分吸収率が低いことなどを考慮し、一般人よりも多くの鉄分が必要と考えられています。
これまでの研究報告から多く見積もって20mg/日程度が望ましいと思われますが、運動量やエネルギーバランスの違いなど個々の身体の状態で鉄分の必要量も異なってきます。
そのため定期的な血液検査を行い、体内の鉄分が足りているか個々で確認して、摂取量を決めるのがよいでしょう。
推奨量(mg) | 許容上限量(mg) | ||||
年齢 | 男性 | 女性(月経なし/月経あり) | 男性 | 女性 | |
8~9歳 | 7.0 | 7.5 | 35 | 35 | |
10~11歳 | 8.5 | 8.5 | /12.0 | 35 | 35 |
12~14歳 | 10.0 | 8.5 | /12.0 | 40 | 40 |
15 ~17歳 | 10.0 | 7.0 | /10.5 | 50 | 40 |
18~29歳 | 7.5 | 6.5 | /10.5 | 50 | 40 |
30~49歳 | 7.5 | 6.5 | /10.5 | 55 | 40 |
50~64歳 | 7.5 | 6.5 | /11.0 | 50 | 40 |
65~74歳 | 7.5 | 6.0 | 50 | 40 |
妊婦初期は+2.5mg、中期・末期は+9.5mg、授乳婦は+2.5mg
鉄分不足による影響
鉄分が不足すると鉄分欠乏性貧血になります。
酸素が全身に供給されず、組織は低酸素状態になり以下症状が現れてきます。
・頭痛やめまい
・顔色不良
・倦怠感
・易疲労感
・呼吸困難
・心拍数増加
・動悸
・息切れ
・食欲不振
鉄分の過剰摂取の影響
鉄分は吸収率が低いため、通常の食事で過剰症が現れる心配はまずありません。
しかし、サプリメントでは簡単に多くの鉄分が摂取できるため、摂りすぎに注意が必要です。
過剰に摂り続けると、以下の影響が現れます。
・嘔吐などの胃腸症状のほかヘモクロマトーシス(組織損傷または5g超の全身鉄分量を引き起こす鉄分沈着)
・ヘモジデローシス(組織の損傷を伴わない局所的または全身の鉄分沈着)など内臓機能の低下による体調不良、場合によっては臓器の障害や肝がんを起こします。
鉄分はスポーツ時に欠かせない栄養素ですが、必要以上に摂りすぎるとその弊害もあるため適量の摂取が望ましい栄養素です。
鉄分の効率的な摂取方法
鉄分は吸収率が低く、体内吸収率はおよそ15%程度と考えられています。
肉や魚の動物性食品に含まれるヘム鉄分は比較的吸収がよい食品です。
またヘム鉄分に比べて吸収率は落ちますが、青菜や大豆製品など植物性食品に含まれる非ヘム鉄分も摂取量や頻度を多くすることで吸収率の低さをカバーできます。
それからビタミンCは鉄分の吸収を促進してくれます。
赤身の肉や魚をそれだけで食べるのでなく、野菜や果物を一緒に摂取すると鉄分の吸収もアップするのでおすすめです。
運動後は鉄分の吸収や再利用を減少させるへプシジンというホルモンの濃度が高くなることがわかっています。
そのため鉄分欠乏のリスクのあるアスリートは、運動後は鉄分の吸収や再利用が低いことも念頭におきながら、鉄分の多い食品をいつ食べるか個人のトレーニングスケジュールに合わせて工夫するのもよいでしょう。
鉄分のまとめ【要約】
・鉄分は酸素の運び屋ヘモグロビンの材料です
・鉄分が不足すると鉄分欠乏性貧血の症状が現れます
・鉄分の過剰摂取は臓器の機能低下による不調などにつながります
・動物性食品には吸収の良いヘム鉄分が含まれています
・鉄分とビタミンCを一緒に摂るのが効率アップのおすすめの食べ方です