世界中にたくさんの愛好者がいる空手。
しかしそのルールは門外漢には少し理解しにくい面があります。
それは空手の流派が非常に多いから。
ここでは、空手の流派による違いを整理しつつ、主にオリンピックなど世界大会で行われている空手のルールや試合形式、禁止事項について解説します。
【空手】基本
そもそも空手は1つのルールでまとめられるスポーツではありません。
大きく分けると伝統空手と実践空手の2種類があり、そのルールには大きな違いがあるのです。
さらに空手の流派は200以上で、その数だけルールが存在します。
伝統空手の主な特徴
伝統空手は、別名「ノンコンタクト空手」。
直接の打撃を行わないのが主な特徴で「寸止め空手」とも称されます。
古くからの伝統に則ったルールがあり、下段回し蹴り(ローキック)は行わないなどの決まりも存在。
ただしルールは流派によって大きく異なります。
実践空手の主なルール
寸止めを行う伝統空手に異を唱えて誕生した実践空手は別名「フルコンタクト空手」。
決められた部位に突きや蹴りなどを直接当て、技の強さと巧さで勝敗が決まります。
技のバリエーションが豊富なのも特徴。流派によっては掴んでの投げや、寝技も行います。
スポーツとしての空手
このように大きく2つの系統がある空手ですが、オリンピックで採用されている空手は、伝統空手です。
そして現在、競技としての伝統空手には2つの大きな団体が存在します。
「日本空手協会」は昭和23年に結成された歴史ある団体。
伝統空手の中の松濤館流が寸止めルールによる空手の競技化を目指して立ち上げた団体で、一流派の統括団体としては世界最大の規模を誇ります。
一方、昭和39年に伝統空手の四大流派などによって結成された団体が「全日本空手道連盟」。古くからオリンピックへの採用を目指して尽力してきた団体です。
オリンピックの空手も統括する世界空手連盟に加盟しているのは全日本空手道連盟の方。
そこでここからは、世界空手連盟が採用している全日本空手道連盟のルールを中心にご紹介します。
【空手】ルール 2つの種目
オリンピックで採用されている空手には、「形(かた)」と「組手(くみて)」の2種類があります。
「形」のルール
「形」は、仮想の敵に対する攻撃技と防御技を一連の流れで演武するもの。
2名が先攻・後攻に分かれて1名ずつ形を披露します。
形は自由ではなく、世界空手連盟が認定している102種類の中から選択するルール。ひとつの大会で同じ形を2度行ってはならないと決まっています。
演武の前に形の名前を宣言。7人の審査員が評価します。
採点は、テクニカルポイントが70%。
その項目は、立ち方・技・正確な呼吸法・タイミング・流れるような動き・空間の把握・極めとなります。
そしてアスレチックポイントは30%。
項目は、スピード・力強さ・バランスです。
公平に審査するため、テクニカルポイント、アスレチックポイントそれぞれで審判7名のうち上位2名・下位2名の点数を除外。残りの3名の合計点数が得点となります。
同点の場合は、再度対戦。
それぞれの選手が行っていない形を演武します。
「組手」の基本
「組手」は選手が1対1で戦う種目です。
競技場の広さは8m四方。制限時間は3分間で、男女それぞれ体重別に3階級に分かれて試合を行います。
伝統空手ですから「寸止め」がルールです。
【空手】ルール 組手の勝利条件とポイント
オリンピックをはじめとする世界空手連盟主催の「組手」は、相手を倒すのではなく、技のポイントによって勝敗が決まります。
勝敗の条件
組手の勝敗の条件は、上から順に、以下のようになります。
①相手に8ポイント差をつけた選手が勝利(制限時間内に勝利確定)
②試合終了時にポイント数で上回った選手が勝利
③試合終了時に同点の場合、最初のポイント(先取)を得た選手が勝利
④先取がない場合、副審4人と主審1人による判定で多数票を得た選手が勝利
ポイント
空手のポイントはどこに当たっても同じではなく、攻撃が成功した部位と技の種類によって、一本=3点、技あり=2点、有効=1ポイントと決められています。
・一本:上段蹴り・投げるか倒した相手への突き
・技あり:中段蹴り・背部への突き・相手を崩しての得点・手技の組み合わせ
・有効:上段突き・中段突き・上段打ち・中段打ち
柔道と同じ言葉ですが、世界空手連盟のルールはポイント制であるため、一本勝ちとはなりません(日本空手協会は一本勝負)。
実際の試合では打ち技を使う人はほとんどいないのが現状。
上段蹴りや中段蹴り、上段突きや中段突き、または足払いなどで倒した相手への攻撃がほとんどです。
特に一本は上段蹴りか倒してからの攻撃、技ありは中段蹴り、有効は突きが大半を占めます。
【空手】ルール 組手の禁止事項
組手の禁止行為は「カテゴリ1」と「カテゴリ2」に分類。
さらに罰則は5段階に分かれています。
カテゴリ1
カテゴリ1は負傷につながる反則行為です。
・寸止めをせず、攻撃部位へ過度の接触をする
・有効部位以外の場所に攻撃する
・平手や貫手の攻撃をする
・回転軸が腰よりも上など、危険な投げ技を使う
試合でのほとんどの反則は「過度な接触」となります。
寸止め空手といっても完全に止めるのは難しいもの。そのため軽く当たった程度なら反則とはなりません。
カテゴリ2
カテゴリ2は、その他の反則です。
・相手をつかむ
・場外に出る
・打撃を与えられた際、大袈裟に負傷を演じる
・相手選手に話しかける・挑発する
・審判への無礼な態度や道徳に反する行為
など、主にスポーツマンシップに反する行為が定められています。
5段階の罰則
反則は軽い方から、忠告・警告・反則注意・反則・失格の5段階。
繰り返す回数に応じてペナルティが課せられます。
禁止事項への軽い違反の場合、一回目の「忠告」にはペナルティはなし。
2回目の「警告」は相手に1ポイント、3回目の「反則注意」では相手に2ポイントが与えられます。
その上の「反則」が宣言されると反則負けに。
特に悪質で重大な違反に対しては、いきなり反則が宣言されることがある上、さらに厳しい「失格」になると競技への出場資格を失うこともあります。
まとめ
多くの流派があり、ルールも千差万別だと言える空手。
オリンピックなどの国際試合を観戦する場合は、今回ご紹介した世界空手連盟のルールを参考にしてみてください。
そしてその他の団体の大会はルールが大きく違うことがあると覚えておくと良いかもしれません。