世界に数多く存在する格闘技団体の中で急成長し、存在感を増しているのが「ONE」です。
アジア最大の格闘技イベントと言われるONEとは、いったいどのような格闘技なのでしょうか。
今回は、今の格闘技を語る上で最重要なONEについて解説。
本拠地や団体の特徴などをご紹介します。
【ONE】 概要
ONEの正式名称はONE Championship(ワン・チャンピオンシップ)。
アジア最大の総合格闘技の団体です。
本拠地はシンガポール。
2011年に設立されると急拡大しました。
2012年には王座の認定を開始、2018年にはムエタイとキックボクシングの試合と王座の認定、世界王座が懸かったプロボクシングの試合も行うように。2019年には修斗、パンクラスとパートナーシップ契約を結び、初の日本大会も開催しています。
実力派選手の白熱した試合とエンターテイメント性の高い演出がミックスされたイベントは「アジア版UFC」と呼ばれることも。
規模ではまだ及びませんが、人気や勢いでは世界最大の格闘技団体であるUFCを超えるほどになっています。
理念
ONEがスタートしたきっかけは、「アジアの格闘技を一つにしたい」という思い。
これまでアジアの人々はバスケットボーやサッカーなど、欧米発のスポーツを輸入して楽しんできました。
しかしONEの最高経営責任者(CEO)であるチャトリ・シットヨートン氏は、アジアにとってマーシャルアーツ(格闘技)は最も大切な文化だと気付きます。
日本には柔道・空手・合気道があり、韓国はテコンドー、中国は武術太極拳や散打、タイにはムエタイが存在。しかもアジアには40億を超える人が住んでいます。シットヨートンCEOは、「アジアの格闘技が一つになったら、欧米にも負けないスポーツリーグ(イベント)ができる」と考え、ONEを旗揚げしたのです。
ONEという名前には、ナンバーワンの格闘技団体になるという目標と、アジア人は一つという思いが込められています。
【ONE】 特徴
アジアの格闘技団体であることを前面に押し出しているONEは、基本的には世界の他の総合格闘技と似たルールを採用しています。
しかしアジアの格闘技がもともと備えている誠実さや相手への敬意などの武士道精神を大切にしているところが特徴。
近年のUFCは全ての格闘技を満遍なく習得したオールラウンダー型の選手が増えていますが、ONEでは一つの格闘技を極めてきた選手を多く集めています。
各競技のルール
総合格闘技だけではなく、ムエタイなども行うONE。
例えば総合格闘技ではグローバル総合格闘技ルールを採用しています。
選手は4オンスの総合格闘技用グローブを着用。試合時間は1ラウンド5分の3ラウンド制で、世界タイトルマッチでは1ラウンド5分の5ラウンド制となります。
またムエタイではグローバル・ムエタイ・ルールを採用し、選手は4オンスの総合格闘技用グローブを着用。
試合時間は1ラウンド3分の3ラウンド制で、世界タイトルマッチは1ラウンド3分の5ラウンド制です。
他にはグローバル・キックボクシング・ルールの試合やグローバル・サブミッション・グラップリング・ルールの試合も開催されます。
階級制度
ONEの階級は、ヘビー級からアトム級まで10階級。
その階級設定は世界の他の格闘技団体とは大きく異なっています。
ONEでは格闘技界で問題となっている「水抜き」減量を率先して禁止。その代わりに試合前に選手の身体の水分量や体調、健康状態を守るシステムを導入しているのです。
具体的には試合前と試合が行われる週の複数回の計量とハイドレーションテストを通じたウォーキングウェイト制を採用。
選手は日常的なトレーニング時の体重をウォーキングウェイトとして記録され、運営側はそのウェイトに基づいて階級を指定します。
試合オファーは厳密にウォーキングウェイトに基づいて行われるため、試合直前の水抜きダイエットによる大幅な体重調整は不可能に。
そして試合が行われる週には選手の計量とともに尿比重検査を実施し、水分量によって無理な減量が行われていないことが確認されます。
ファイトマネー
日本の総合格闘技団体の多くはファイトマネーが安く、ほとんどの選手は副業をしなければ生活も難しい状況です。
それに対してONEは平均してファイトマネーが高く、トップ選手なら約500万円。かつてONEからオファーを受けたというシバター選手も500万円のファイトマネーを提示されたと証言しています。
さらに人気選手のオファーには数千万円を提示することも。
これはアジアでは圧倒的に高いファイトマネーとなっています。
資金力
高いファイトマネーを支えているのはシットヨートンCEOのビジネス力です。
彼はムエタイや柔術に通じた武道家ですが、同時にハーバードビジネススクールでMBAを取得した敏腕経営者。
これまでのコネクションを活かし、シリコンバレーのセコイア・キャピタルやシンガポール政府のファンドであるテマセク・ホールディングスなどからの資金調達に成功したのです。
その額はなんと5億ドル(約700億円)。
しかも潤沢な資金を元に拡大したONEは、2021年には各SNSからの視聴回数で、スポーツとしてはなんとNBAに次ぐ世界2位を記録しています。
138億回以上というその数字はライバルのUFCの約2倍で、サッカーのチャンピオンズリーグやプレミアリーグ、MLBよりもはるかに上。
日本での知名度はあまり高くはありませんが、ONEはすでにビジネスとして巨大な成功を収めているのです。
まとめ
アジア人は一つという思いが込められているONE。
しかしアジア各国での人気と比較して日本ではまだ知名度が低い状態が続いています。そのためか、所属している日本人選手の試合があまり組まれないという問題も。
日本でもONEの人気が盛り上がれば、日本人の試合やオファーが増え、格闘技界は大きく変わっていくかもしれません。