誰もが知るアイドルホースのオグリキャップを始め、三冠馬ナリタブライアンや競馬会に衝撃を与えたディープインパクト。
最近では女傑アーモンドアイ、そしてあの北島三郎さんを漢にしたキタサンブラックなど挙げればキリがないのです。
そう言えばあの馬どうしたんだろう…
そう思い出させるならばまだしも、走ることだけに生まれて来たとも言える競走馬であるにもかかわらず1勝も挙げられずに引退する馬がほとんど。
そんな競走馬の引退後に今日は焦点を当ててみたいと思います。
走るために産まれてきた競走馬のサガと悲哀
毎年どれぐらいの競走馬が生まれ、そして2歳でのデビューを果たすのでしょう。
今回はJRA、日本中央競馬会のケースを取り上げたいと思います。
JRAのホームページによると、日本中央競馬会設立当初の昭和29年にはおよそ3,000頭、その後増加の一途をたどり昭和49年には10,000頭を超え、そして平成4年にはピークを迎え12,874頭に達しました。
その後はアラブ競馬の廃止や地方競馬の規模縮小等により平成24年には6,837頭まで減少したものの、再び増加に転じて令和3年の生産頭数は7,731頭となっています。
その競走馬たちも晴れてデビューできるのは約65%とも言われ、その数を7,000頭で考えると4,500頭余りが晴れてデビューを迎えられるという計算になります。
日本ダービーで競馬実況のアナウンサーが「4,000云頭の頂点は果たして!?」などと口にする、まさにその数を指しています。
それ以外の2,500頭余りは体が弱かったり、また競走馬としての能力に至らなかったりとの理由でデビューできずに競走馬としての使命を果たせなかったと言うことになります。
さらにその4,500頭余りのデビューした競走馬のうち、3頭に1頭は1勝も挙げられずに未勝利のまま登録を抹消されて引退を余儀なくされるのです。
その引退する1,500頭のうちまだ能力が見込めるのならば地方競馬に転籍する、さもなければ乗馬として供用される、または血筋が良ければ繁殖牝馬として牧場に残る、そんなセカンドキャリアがあります。
また、それ以外の馬はどうなってしまうのか。多くは食用に供されると言う悲しい顛末を耳にしますがそれでよいのでしょうか。
それが競馬界で考えるべきSDGs持続可能な開発目標であろうと考えます。
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引退後の競走馬の様々なセカンドキャリア
競走馬として華やかな成績を残せば言わずもがな【種牡馬】や【繁殖牝馬】としての道が待っています。
たとえ競争成績が芳しくない振るわなくとも競馬はブラッドスポーツと言われる世界、血統が良ければ種牡馬や繁殖牝馬としてセカンドキャリアを歩むこともあり得ます。
しかしながら名馬と言われるGⅠを何勝もする競走馬は塩ひと摘みにも満たない、GⅠを勝てる確率はたったの0.3%と言われるのですから、人間が東大に入るよりも難しい熾烈な過当競争、生き残り競争の中に競走馬は立たされています。
種牡馬や繁殖牝馬にならなかったらどうなるのか、事細かに見ていきましょう。
競馬場でレース前に出走馬を誘導する馬をご覧になられたことありますか。
これが【誘導馬】と言われる第二の人生、働き口です。
パドックから本馬場まで入場する馬を誘導する、貴族のスポ―ツでもある競馬は可憐さなど見た目も重視されるために特に芦毛の馬が重用される傾向にもあります。
そして日本全国ある乗馬施設で【乗用馬】として供用される馬たち。
彼らにはあまり成績も関係なく、乗用馬としてトレーニングを積んで新たな道でデビューを果たすのです。子どもたちを乗せることもあるでしょうから、従順でおとなしく操作性の高い素養の馬が選ばれるのでしょう。
そして近年台頭をしてきたのが【セラピーホース】と呼ばれる馬たち。
海外では以前からセラピーに盛んに活用されてきましたが、ここ日本でも精神疾患者や身体障碍者の心や体を癒す役割を与えられた馬たちが活躍しています。
競走馬を引退しても供養に必要な資金
競走馬を引退したからっといって飼い葉が不要になる訳でもなく費用はかかります。
近年では競走馬の引退後の余生にも注目が集まり、一般の方々から馬を引き取りたい、馬の余生を支援したいなどの働きかけが生まれ始めました。
また馬主のみなさんも縁あって手にした馬たちの余生をしっかり見届けたいとの機運も高まっています。
その功労馬の飼育にいったどれほどの資金が必要なのでしょうか。
自分の所有する牧場でとなれば餌代(飼い葉代)と馬房の床材に毎月3万円から8万円程度、最低でも年間100万円近くの費用が掛かります。
自分の牧場で供養するとなっても、金銭的な費用負担のみならず馬房の掃除や馬の手入れ等で時間的な費用負担も必要です。
また、乗馬クラブに預託するとした場合にはさらに費用はかさみ、世話代など預託料は年間120万円程度、装蹄の費用や獣医の費用等で併せて年間200万円以上かかると言われています。
世話を自身でしない代わりに当然費用負担は大きくなりますね。
牧場に預けるとしても恐らく200万には満たないまでもそれ相応の資金が必要になることは想像できます。
そんな中、TCC(サラブレッドコミュニティクラブ)と言う団体があるのをご存知でしょうか。
言わば競走馬の一口馬主のシステムを引退馬にも応用導入した引退馬の支援団体です。
多くの支援者がいるからこそ成り立つ制度で、TCCの会費が年間12,000円、引退馬一口に対し4,000円の負担で最大40口まで応募できます。
年間16,000円から引退馬の供養に貢献できる素晴らしい取り組みです。
所属する馬たちもここから乗馬クラブ等に派遣されて生きがいを持って余生を堪能することができます。こんな支援の輪がどんどん広がるといいですね。
ふるさと納税で引退馬の余生を支援できる
日本全国に乗馬施設は多々あれど、毎年5,000頭にも及ぶ馬を受け入れるほどの余力はないのが現実です。
実際引退馬の動向も○○乗馬クラブへと書かれていてもその後が消息不明だったりすることも散見されて馬を愛する人たちにしてみると悲しい残酷なニュースです。
実際は食肉として供与されることもあるのは言わずと知れた事実でもあります。
この世に生を受けた馬たちが、人間たちの都合でその命を絶つなどあってはいけない、そう思うのはだれしも同じではないでしょうか。
こんな取り組みが東京オリンピック前にありました。
皆さんご存知のふるさと納税制度、例えば地方に寄付する代わりにその地の肉や海産物など地元の名産品などを返礼品として受け取る制度です。
実は、2018年に岡山県吉備中央町がJRA日本中央競馬会の調教師であった角居勝彦氏が立ち上げたサンクスホースプロジェクトのパートナーとして、2020年の東京オリンピックに引退競走馬が活躍できる場所を作ろうとふるさと納税を活用して寄付金を集めました。
なんと目標値を大きく上回り2,000万円にも上る寄付金を集めて注目されました。
素敵な取り組みはこれで終わらずに益々日本全国で広がりを見せて欲しいものです。
まとめ
競馬を知らない方々がその多くの競走馬の余生が悲しいものだと知っていただけるだけでもこの記事を書いた価値があろうかと思っています。
SDGsの取組の一つとしてこの競走馬の引退後の余生についてももっと可能性を広げられる選択肢をJRAはじめ馬主、牧場主、競馬ファンなどが一体となって考える時が来たのではないでしょうか。
生きるものとして生まれるのは人間だけではない、そんな気持ちにさせられる競走馬の引退後の現実です。
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