競馬。それは騎手の乗った馬によるレースであり、その着順を予想することによる賭博でもあります。
賭け事の多くが違法と扱われる日本において、数少ない競輪・競艇・オートレースと並ぶ公営ギャンブル(公営競技)の一つです。
賭け事が好きで競馬場に通う人が多いことでしょうが、中には走る馬そのものに興味を持つ人もいることでしょう。
鍛え上げられた美しい馬たちが、鬣をなびかせながら走る様は圧巻の一言に尽きます。
茶色の馬が多いですが、中には白い毛の馬、黒い毛の馬と様々な種類がいます。
近年は、馬たちの姿が可愛らしい少女の姿に擬人化されたアプリゲーム「ウマ娘」の影響もあって、競馬と競走馬たちにさらに興味を持ったという人も少なくないのではないでしょうか。
では、そんな競走馬たちにはどんな種類があり、つけられる名前には何か法則があるのでしょうか?
今回はそんな競走馬たちの種類や名前を中心に、詳しく解説していきます。
【競走馬】歴史
そもそも、競馬という競技はどの国から始まったのでしょう?
その基礎を築いたのはイギリスであると言われており、馬の速さを競わせるということそのものは、馬が家畜化された頃から行われていたと考えられているようです。
文献において初めて競馬の存在が出現するのは、古代ギリシャホメロスの『イリアス』第23歌における戦車競馬(戦車競走)であるとのこと。
古代ギリシャの戦車競馬はただ馬に騎手が乗って走るだけではありませんでした。
騎手が二輪の車両(チャリオット)を馬2頭に引かせて競うもので、古代オリンピックの種目にもなっていたそうです。
現代の形に近い、いわゆる近代競馬が行われるようになったのは16世紀のイングランドになります。
では、そんな競馬はいつ日本に来たのでしょうか。
日本において西洋式の競馬が最初に行われたのは、万延元年9月1日(1860年10月14日)に横浜山手麓(現在の元町)とされています。
ただ、当時の日本の競走馬は西洋の馬と比べて質が劣っていたとのこと。
品種改良と競争を通して良質の軍馬を調達しよういう狙いもあり、国も積極的に競馬を奨励していったのだそうです。
【競走馬】種類
では、そんな競走馬にはどんな種類があるのでしょうか。
2011年に公開された映画「戦火の馬」では、本来農作物を耕すための馬を調達しにいった男性が、農耕馬ではなく一頭のサラブレッドに目を奪われて大金で落札してしまい非難を浴びるというシーンがあります。
映画の中には農耕馬とサラブレッドの両方が登場するのですが、その違いは外見だけでも一目瞭然。
細身で引きしまった体を持つサラブレッドは、がっしりとした足腰を持つ農耕馬とは根本的に役割が違います。
走るのが得意でも、重たい荷車を引いたり農具をひっぱったりする事には向いていないとされるからです。
しかし、競走馬と農耕馬が明確に違うものと位置づけられるようになったのは、競馬が始まってから暫くした後のこと。
黎明期では競走馬という品種は存在せず、乗用馬や農耕馬として用いられていた馬たちが競馬に出走していたからです。
その後、競馬の発祥の地であるイギリスではアラブ種を改良したサラブレッドが普及していくことになり、現在世界各国の平地競走や障害競走ではサラブレッドが主流となっています。
48~59kg(これは、上に乗る騎手自身の体重などを加味したものです)の重量を背負った状態において、数分間継続して60~70km/hの速度で走ることができるという種類になっています。
ゆえに競馬と言えばサラブレッドだ、という印象の人は少なくないことでしょう。
しかし、サラブレッド以外の馬が競馬を走ることもあるのです。
この他に日本独自のばんえい競走においては、ペルシュロンなどの大型馬(重種馬)を混血化した日本輓系種という独自の種類の馬も存在しています。
元となったペンシュロンという種類は青毛、芦毛等が多いのが特徴であり、体型はサラブレッドに比べ足が短く、胴が太いとされています。
体高は160~170cmで大きなものでは2mを超え、その体重はサラブレッドの倍にもなると言われるほど大きな馬です。
1トンもある馬なんて想像できない、と驚く人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、体は大きいものの性格は大人しいとされています。
【競走馬】名前のつけ方
では、そんな競走馬たちの名前はどのようにしてつけられるのでしょうか。
レースを見ていると、カッコイイ名前から少し面白いネーミングの名前まで様々存在しているのがわかるかと思います。
では、その名前は馬主が自分の好みで好きなようにつけていいものなのでしょうか。
実は、競走馬の名前にはいくつもの厳格なルールがあり、審査を通らないとつけることができないのです。
馬名登録の際は、公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルに申請して審査を受ける必要があります。
この時第3希望まで提出することができ、希望する馬名の片仮名表記とアルファベット表記、意味、由来をあわせて記載します。
この審査に通らなかった場合は、意味を損なわない程度で読みかえたり、まったく違う名前に変更したりすることによって再度申請することができます。
名前は競走馬登録前であれば何度でも変更でき、競走馬登録後は、初出走前であれば1回に限り変更することができるのです。
ただし、初出走が終わってしまうと、いかなる理由があろうとも変更は認めらないので注意が必要です。
馬名には、いくつか守らなければいけないルールがあります。
1つ目はカタカナ。(1928年までは漢字の馬名も存在しましたが、今はカタカナでなければいけない決まりです)
2つ目は現代仮名遣いであること。「ヰ」や「ヱ」などの文字は使用できないことになっています。
「ヲ」については、1997年からOKということになりました。
長音は使用可で、「ハ」は「ハ」と「ワ」、「ヘ」は「へ」と「エ」の二通りの発音が認められています。
「ヴ」の場合はやや特殊で、外来語として原音の意識が残っているものについてのみ使用が認められるようです。
3つ目はアルファベット18文字(空白含む)以内、かつ片仮名2文字以上9文字以内であること。
戦前までは、カタカナで1文字だけの名前の馬なども認められていたようですが、現在は不可となっています。
また、これらの条件を満たしていても審査で落とされてしまう名前もあります。
簡単に言ってしまうと、他の馬と名前が被ってしまったり、まぎらわしい名前を付けてしまったりすると落とされてしまうことになります。
特に馬名登録原簿に記載されている馬名や、父馬・母馬と同じ馬名、外国の重要な競走の勝馬の馬名などはつけることができません。
もちろん、公序良俗に反する名前もNGです。
著名な人物等の名称と同じ馬名もつけることができません(過去に堀江貴文氏が所有していた馬に「ホリエモン」とつけることが許可されたケースがありますが、これは本名ではなく通称であること、当時そこまで知られていなかったなどの理由からOKされたと言われています)
言葉の意味と性別が異なる馬名などもつけることができないので気を付ける必要があります。
【競走馬】近年活躍した名馬たち
では、近年活躍した名馬たちにはどのようなものがあるのでしょうか。
まずはなんといっても、競馬史上初の3冠馬が揃った2020年ジャパンカップを制して現役引退したアーモンドアイでしょう。
日本競馬で発国内外のG1レース(芝)で9勝をあげ、芝G1勝利数歴代1位に君臨しました。鹿毛であり、黒い鬣が特徴のメスです。
2018年、2020年のJRA賞年度代表馬、2018年の最優秀3歳牝馬、2020年の最優秀4歳以上牝馬でもあります。
また、ディープインパクトの名前はまだまだ記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
シンボリルドルフ以来、2頭目となる無敗の牡馬クラシック三冠馬です。
武豊騎手が騎乗するディープインパクトの実力はまさに圧倒的であり、競馬に詳しくない人でもその名前は聞いたことがあるという人は少なくないのではないでしょうか。
同じく鹿毛で、額にちょこんと白い模様が入っているのが特徴です。
この馬が、元々は小柄で非力であることを心配されていたというのはあまり知られてはいないかもしれません。
他にもクラシック3冠を獲得し、古馬になってからも「宝塚記念」「有馬記念」などのG1を勝利する実力を持っていたオルフェーヴル。伝説の逃げ馬として名高いサイレンスズカ。
天皇賞秋でジェンティルドンナに付けた、5馬身差の圧勝劇を見せつけたジャスタウェイなど、伝説的な馬たちが数多く存在しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
競馬はどうしてもその順位に注目されがちですが、現在ではそれとは別に馬そのものに注目するファンも増えているといいます。
彼等の姿、名前、そこにこめられた想い。それらに想いを馳せながらレースを楽しむのも、また一興なのではないでしょうか。
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