健康な生活を保つために、適度な運動は大切なものです。ダイエットもかねて、簡単な運動、可能ならスポーツを始めてみたいと思う人も少なくないことでしょう。
今や世界中には、数えきれないほど様々なスポーツがあり、こうしている間でも日々世界のどこかで新しいスポーツが産声を上げている現状にあります。
ですが、スポーツを始めるにあたってどうしても心配なことがある、という人もいるのではないでしょうか。例えば、運動神経が非常に良くないとできない競技では?ということ。
一人一人の高い身体能力が求められるスポーツや、経験者が多数いるようなスポーツはなかなか初心者が始めるにあたり敷居が高い傾向にあります。同じく、ルールが複雑で覚えにくいスポーツもどうしても足が遠のいてしまいがちでしょう。
また、そもそも人と競うのが苦手である、という人もいるでしょう。球技には興味があるけれど、誰かと競争したくない。誰かを蹴落とすようなことになったら嫌だし、というマイナスのイメージをスポーツに持ってしまっている人もいるかもしれません。
しかしながら、実はそんな人にもぴったりなスポーツがあるのです。それが、今回紹介するフレスコボール。誰かと競うわけではなく、シンプルなルールで、何より相手と絆が試される。そんな素敵な競技を、本日ご紹介いたします。
フレスコボールの起源・歴史について
フレスコボールって、そもそも何語?そう思った方もいることでしょう。これはスペイン語、ポルトガル語の名前であるようです。
始まったのは1945年のこと。ブラジルのリオデジャネイロでのことだったそうです。しかし残念ながら、正確にはどこの誰が作り出したスポーツなのかははっきりしていないとのこと。どうやら、最初からフレスコボールという名前がついていたわけではないようです。
こんな話があります。1950年代に、ある男性がコパカバーナ地区に住む友人と頻繁にビーチでテニスをしていたそうです。しかし、潮風のせいでラケットが傷んでしまったり壊れてしまったりすることも少なくなく、海水にも耐えられる木製のラケットを欲しがっていました。そこで、別の友人へ作成を依頼。その友人は大工仕事をしていたためラケット作りに挑戦してくれ、現在のラケットの原型を作ったのだとか。そして、このような取り組みが実を結んだ結果、スポーツとして進化を遂げ、現在では“フレスコボール”と呼ばれるようになったのだそうです。
ラケットでのスポーツといえば、卓球やテニス、バトミントンを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、この競技は他の多くのラケットスポーツとは根本的に異なり、“相手が打ちかえせない球を打ちこむ”ことではなく、“相手がいかに打ちかえしやすい球を打つか”を考えることが求められるのです。
目の前にいるのは対戦相手ではなく、共に高得点を目指すためのパートナー。まさに思いやりのスポーツと呼ぶことができるでしょう。
日本におけるフレスコボールの歴史について
思いやりのスポーツと言われる一方、日本ではさながら激しい羽根突きの様なスポーツと表現されることもあるというフレスコボール。では、この競技はいつ頃日本にやってきたのでしょうか。
きっかけは2013年、後に日本フレスコボール協会を設立することとなる窪島剣璽氏が、リオデジャネイロでフレスコボールと出逢った事だったと言います。彼は同年に協会を立ち上げると、日本での普及を目指し、翌年である2014年から精力的に活動するようになりました。
フレスコボールと関連のあるスポーツ
フレスコボールは、日本の羽子板のようだと言われることがあります。それは、ラケットの形がテニスラケットよりも、卓球や羽子板を想像させるようなデザインをしているからでしょう。
その羽子板というものについて、日本人でありながら詳しく知らないという人は少なくないのではないでしょうか。
そもそも羽子板というものは室町時代の宮中のお正月の遊びの一つで、正式な名前を羽子板飾りと言うそうです。お正月に部屋に飾ってあったのを見た、という人もいることでしょう。実際、羽子板とは飾っておく用のものと、バトミントンのように羽根つきをして遊ぶ用と二種類あったとされています。元々は高貴な身分の人々のためのスポーツだったのが、少しずつ庶民に広がりを見せていき今の形になったとされています。
さらに江戸時代の後期頃にもなると、羽子板は歌舞伎役者の姿を押し絵の技法を用いて描くようになり、より庶民の人気が高まっていったと言われています。
ではスポーツとしてではなく、飾る方の羽子板はどういった意味があるのでしょうか。
お正月に羽子板を飾る風習や、女子の初正月に羽子板を贈るという習慣は、様々な邪気をはね(羽根)のけて健康に育ってほしいという理由から始まったものだとされています。
医療が発展した今は元気に育つ赤ちゃんも増えましたが、昔は幼くして亡くなる子供やお母さんが少なくなかったからなのでしょう。
フレスコボールの競技人口について
残念ながら、明確な競技人口は分かっていません。しかし今や発祥国であるブラジルのみならず、スペインやイタリアといったヨーロッパ各地で広がり続けているスポーツです。
また、オーストラリアやニュージーランドでも普及しつつありますし、アメリカではフロリダやカルフォルニアといった西海岸を中心に人気を博しているようです。
フレスコボールのルールについて
フレスコボールの魅力の一つは、とにかく道具が少なくて済むことでしょう。2枚のラケットと専用のゴム製ボール、そして共にゲームをプレーしてくれる相棒が一人いればいいのです。
道具が買えなくてスポーツができない、という理由で競技を諦める子供達が少なくない中、フレスコボールは金銭面でもやさしいスポーツであると言えるでしょう。
競技は採点方式となっていて、ラリーがどれほど続くか、どれほど華麗な技を見せるかによって審判に加点されていく方式となっています。
競技時間は5分間ですが、任意で1分の休憩を取ることもできます。ただし、休憩している分は当然ボールを打ち合うことができない、ポイントを稼ぐことができないので注意が必要です。
選手と選手の距離は最低7mとされていますが、大会やシーンによって変更されるケースもあります。ソーシャルディスタンスが大事と言われるコロナ渦においては、選手同士の接触もないため非常にプレーしやすい競技と言えるかもしれません。
そして、大事なことは審判によって加点されていくタイプの競技であること。大会ごとにラリー回数やテクニックなどの評価基準が設定されています。
基本のテクニックには“フォアハンド”“バックハンド”“フックショット”“ダストショット”の4種類があります。フォアハンドやバックハンドは、テニスなどをプレーしたことがある人には分かりやすいかもしれませんが、フックショットやダストショットは聞き覚えがないかもしれません。
フックハンドというのは頭上にきたボールを叩きつけるように打つ打法です。当然強い打球になりますので、パートナーにはそれを打ち返せるだけのテクニックが要求されます。パートナーを信頼してこその技と言えるかもしれません。
逆にダストショットというのは、低い位置に返されたボールをすくい上げるように打つ打法です。
フレスコボールの国際的な大会について
初めてフレスコボールの世界大会が開催されたのは、2015年のことだとされています。
メキシコ、プラヤ・デル・カルメンにて開催された、第1回フレスコボール世界選手権では世界各国から多くの選手が集まりました。15ヶ国(ブラジル、日本、メキシコ、ギリシャ、イタリア、スペイン、イスラエル、ペルー、アメリカ、ベネズエラ、アルゼンチン、コスタリカ、フランス、ベルギー、スイス)もの国々から、選手とスタッフ関係者合わせてなんと100名以上が参加する大規模な大会となりました。
同じラケットを扱う競技ということもあり、プロのテニスプレーヤーでありながらもフレスコボールの大会に参戦した選手もいます。スペイン・トレド出身の男子プロテニスプレーヤー、フェシリアーノ・ロペス選手もその一人だそうです。
世界から見た日本のフレスコボールの強さのレベル
2019年の時点で、日本には約2000人の競技人口がいると言われています。先述した2015年の世界大会において、日本はアジアで唯一出場を果たした国となりました。
男子ペアの部に参加した藤元俊輔選手と後藤隆志選手は、最終的に16位という成績を残しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。競い合うのが苦手、争うような競技は得意じゃない、複雑なルールを覚えられる自信がない。そんな人でも安心してプレーできる、いうなれば絆を問われるスポーツ。それが、フレスコボールなのです。
まだまだ日本ではマイナースポーツの域を出ませんが、これから多くの国々で人気が高まっていくであろうこのスポーツ。興味を持った方は是非、さらに詳しくチェックしてみてください。
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