今回は、指導者と選手の関係性について書きたいと思います。
指導者から選手に対して行われるパワーハラスメント。これは種目もカテゴリーも問わず未だに全国各地で散見され、時には不幸な事件にも発展して大きなニュースになるようなものもあります。
そもそもパワハラって、どうして起きるのでしょうか。まず一番大きいのは、その指導者の知識不足と認識不足、そして思慮と配慮にも欠けているという、その指導者自身の質の問題ですよね。
そしてさらに、チームであれ何であれその組織において「指導者が上で選手が下」という上位下達の形態になっていること自体が、そもそもスポーツにおいては大きな間違いであるということを、自分は強く問いたいと思っています。
ではどのような関係性が理想で、指導者はどのようにその関係性を築いていけばいいのでしょうか。
素敵な関係性を築きたい
パワハラがなぜ起きるかといえば、先ほども書いたように指導者が上で選手が下という上位下達のポジショニング、そして選手にとっては「起用されるかされないか」という生殺与奪権(せいさつよだつけん)を指導者が握っている、という状態が引き起こすものでしょう。
だからこそ、まずはその状態を脱却するところからがスタートです。
指導者も選手も、同じチームで同じ時間を過ごし、同じ目標に向かう仲間同士です。
せっかくならば、大人と子どもという垣根を越えた「素敵な関係性」を築きたいじゃないですか。
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」
聖徳太子のこの言葉を、スポーツの世界でこそ当たり前の標準にしたい。
指導者は選手全員をしっかりと見て、背中を押し、大人としてできるサポートをしてあげる。
選手はそれに応える。
指導者と選手がともに同じ方向を見て、時には意見をぶつけ合い、時には一緒にふざけ合い、時には一緒に泣き笑う。
そんな素敵な関係性を築けたら最高ですよね。
上から目線ではなく、横から目線
よく使われる「上から目線」では、選手の心には伝わりません。前にも書きましたが、指導者と選手との間にもし「壁のようなもの」があるとしたら、それは壁ではなく「扉」なのだと思うべき。
扉ならば、まずはノックがマナーです。選手の心をノックして、選手が心を開いてくれるのを待つ。
選手がノックに応えてくれるかどうかは、指導者の姿勢によるでしょう。
指導者がいつまでも「俺は指導者だ、大人だ、お前らは言うこと聞いとけ」という上から目線でいては、選手は間違いなく心を開かない。「はい!」という返事をしたとしても、それは生殺与奪権で成り立つ関係上で従っているだけで、本当に心を開いているわけではありませんよね。
ここからは提案です。選手と素敵な関係性を築きたいのならば、まずは「上から目線」ではなく、「横から目線」でいきましょう。見下ろすのではなく、並列、横並び。
同じ目線に立ち、同じ方向を見て、同じ仲間として接すること。もちろん大人ですから、その横から目線に立った上で、そこから「大人にしかできないサポート」をしてあげる。
見守ること、そっと背中を押すこと、選手にはどうしても気づけないようなことを、こちらが気づいて配慮してあげる。
それだけでなく、その日の練習で必ず一人一人に声をかけるとか、サッカーに関係ない何気ない会話を持ちかけるとか、誕生日をちゃんと覚えてあげているとか、ちょっとした髪型の変化に気づいてあげるとか。そんな些細なことでも、選手には必ず伝わります。
「この人は僕のことをちゃんと見てくれている」
「僕の味方でいてくれている」
選手がそう感じてくれたら、きっと、少しずつでも心の扉を開いてくれるはずです。
その意味では、あまりにもいい人オーラを出しすぎていつもニコニコしているだけでなく、試合の場では一緒に戦う姿を見せるのも大事だと思います。
さらに言えば、選手が悪質なファールを受けたときや理不尽な判定を受けたときに選手よりも指導者が熱くなって抗議していく姿などを見せることも、時にはとても大事なのではないでしょうか。
指導者としては批判を浴びるのかもしれませんが、きっと「僕らのために熱くなってくれている」と、選手達だけは感じてくれるのではないかと思います。
まとめ
大人と子ども、指導者と選手、先生と生徒。
そんな関係性を越えて同じ仲間同士となれるのは、スポーツが持つ素晴らしさの一つではないでしょうか。
これまでいろんなテーマで書いてきましたが、結局どんなテーマでも共通しているのは「主役は選手達」ということであり、それを体現するためにまずは大人が自身を省みて改善していくこと、つまり「大人の姿勢」が問われているということです。
そんな姿を、選手達は必ず見ています。
そしてそれが伝わったとき、本当の仲間として認めてもらえるのではないかと思います。
そうして仲間として認めてもらえたそのときから、ようやく真の指導ができるのではないでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。