日本で人気のスポーツといった時、皆さんはどんなものを思い浮かべるでしょうか。
やはり、学校の部活動でメジャーであり、テレビ中継でよく見ることも多いスポーツであるサッカーや野球やバスケットボールを想像する人が多いかもしれません。
実は、日本人が“見るのが好き”なスポーツと、“自分がプレーするのが好き”なスポーツでは大きくランキングが異なることがわかっています。
見るのが好きなスポーツには、中継でおなじみのサッカーや野球、相撲といったものがランクインしてきますが、自分でやるとなった時に一番人気とされているのはランニングやウォーキングといった、歩いたり走ったりするスポーツなのです。
また、球技ではボウリングの競技人口が多いことでも知られています。
日本人で、人生で一度もボウリング場を訪れたことがないという人はあまり多くはないことでしょう。
そんなボウリングのボウルは、他の競技と違って非常に重くできています。
これは、他の競技のようにボウルを人間に向かってパスをしたりシュートをしたりということをするスポーツではないためです。
一人で黙々と練習できるし、自分との戦いが向いている、という人にこそお勧めのスポーツと言えるでしょう。
ではボウリングのように、ボウルを投げてスコアを競うスポーツは他にはないのでしょうか。
走ったり動き回ったりするのは苦手、でも仲間とともに勝利を味わいたい。
そんな人にぴったりな競技、それが今回紹介するクッブなのです。
クッブの起源・歴史について
クッブは、アルファベットでは“Kubb”と書きます。英語ではなさそうだけれど何語?と思った人も多いことでしょう。
これは、スウェーデン語であり、薪を意味しています。
これはこの競技が生まれたスカンジナビア半島、スウェーデン沖にあるゴットランド(Gotland)島に由来しています。
どの家の軒下にも薪のあった時代、この薪を用いて遊びが行われていたことが競技の始まりになったとされているのです。
正確には、この競技の発祥がいつであったのかはわかっていません。
ただ一般的には、この競技はバイキング時代の文化から生まれたのではないか、という説が有力視されています。
これはゴットランド島がかつてバイキングの活動拠点となっていたため。
島の住民たちは、そんな勇猛に海を駆け抜けた祖先に想いを馳せ、自らのアイデンティティを確認する役割を競技に託したのではないかと言われているのです。
そのためか、またの名を“バイキング・ゲーム”とも呼ぶのだとか。少なくとも、中世後期のハンザ同盟各都市で普及していたというのは間違いないことであるようです。
今はルールの統一も行われ、薪ではなく競技規則に則った共通の道具が使用されるようになりました。
1995年からは毎年ゴットランド島において“クッブ世界選手権(VM i Kubb)”が開催されるようになっています。
日本におけるクッブの歴史について
日本クッブ協会のホームページによれば、協会が設立されたのは平成21年(2009年)12月1日であるとされています。
日本に導入されたきっかけは、2003年頃に日本レクリエーション協会から紹介されたことだとされています。
その結果、全国のレクリエーション協会会員を通じて広がりを見せ、中国地方などでも各県クッブ協会が誕生するようになりました。
特に広島には同時期に伝えられ、直後から普及活動が始まったとされており、広く親しまれるスポーツとなりました。広島市佐伯区、西区、安芸区、東区で特に人気があるようです。
クッブと関連のあるスポーツ
クッブとよく混同されがちなスポーツに、モルックというスポーツがあります。
さらば青春の光・森田氏が日本代表となって精力的に活動していることもあり、注目を集めている競技です。
テレビでも取り上げられることが増えたので、知っているという人も多いのではないでしょうか。
木の棒を投げて点数を競う、という意味では非常によく似た競技ですが、異なる点も数多く存在しています。
例えば、発祥国。クッブはスウェーデンであるのに対して、モルックはフィンランドから生まれたスポーツだと言われています。
同じ北欧出身のスポーツという意味では、兄弟に近いものがあるかもしれません。
モルックは2~3人でプレーされるスポーツです。
ずらりと並んだ数字の書かれた木の棒、スキットルを倒すことによって点数を競います。
ただし、ただひたすらたくさん倒せばいいというわけでもありません。
何故ならピンを1本倒すとピンに書かれた数字と同じ点数が貰えますが、2本以上のピンを倒すと倒したピンの数と同じ点数が入る仕組みに変更されるからです。
例えば11点のピンを一本倒した時は11点が貰えるのに、11点と12点を一緒に倒してしまうと一気に2点になってしまうのです。
また、この競技は“より多くの点を稼いだ選手が勝利”するのではなく、“先に50点ぴったり稼いだ選手が勝利”するというルールになっています。
50点を越えてしまうと、25点まで点数が戻ってしまうので注意が必要です。
場合によっては、わざと複数本のピンを倒して点数を減らす、などの工夫をしなければいけないというわけです。
また、3回連続で標的のピンに1つも当たらなければ失格となってしまいます。
細かなコントロールと計算が試される、こちらも非常に興味深い競技なのです。
クッブの競技人口について
クッブの正式な競技人口はわかっていません。
しかし、毎年の世界大会が大いに賑わいを見せていること、そして日本だけでも競技人口が1万人いるとされていることを鑑みると、それより遥かにたくさんの人がこの競技を楽しんでいるのは間違いないことでしょう。
クッブのルールについて
クッブは原則として、6対6のチーム戦で行われます。
木片=クッブ10個、大きな木片=キングが1個、薪のかわりに投げるものとして用意される道具であるカストピンナ(木棒)に、コーナーピンナ4本が必要となります。
先攻チームがまず、ベースライン後方から相手ベースライン上のベースクッブ(キングではない、小さなクッブのことです)をめがけてカストピンナをひとりずつ投げ、ベースクッブを倒していきます。
王様であるキングクッブを倒せば勝利というゲームなのですが、王様を狙うためにはこのベースクッブを全て倒して権利を得なければいけないためです。
6人全員が投げ終わると、後攻チームに後退して相手チームのベースクッブを倒しにいきます。
この時注意しなければいけないのは、権利を得ていないのに途中で誤って王様をベースクッブより先に倒してしまうと、そのチームが即敗北になってしまうということ。
より早く正確に、狙ったクッブを倒していくコントロールが求められるのです。
クッブの国際的な大会について
先述したように、1995年から毎年ゴットランド島において「クッブ世界選手権(VM i Kubb)」が開催されています。
ゴットランド島の住民のみならず、もとよりスウェーデン本土や他の北欧・バルト海沿岸諸国からも多くの参加者が訪れます。
また、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダなどといった国からもはるばる参加するチームもあり、大いに賑わいを見せているようです。なんと8才から80才まで幅広い年代層のクッブプレーヤーがおおよそ400~500人も集まったと言われています。
さらにはアメリカのクッブ協会では毎年8月初旬にウィスコンシン州で大会を開いているとのこと。
今後、さらに人気が高まっていくことは間違いないことでしょう。
世界から見た日本のクッブの強さのレベル
オープン大会であるため、クッブの世界大会は予選なしですぐにでも参加することができます。
ただし、現在では個人参加の日本人選手はいても、日本クッブ協会から選手を派遣したことはないそうです(2021年12月14日現在)。
しかし日本では毎年、ジャパン・クッブ・オープンをはじめとした様々な大会が開催されており、切磋琢磨が続いています。
世界で活躍する日本人選手が現れるのも、そう遠いことではないかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ぶつかりあって怪我するのが怖い、体力がない人間でもできるかどうか不安、そんな人であってもチャレンジできるのがこのクッブという競技です。
安全かつ、繊細な技術が求められるこの競技。興味を持ったらぜひチェックしてみてください。
ひょっとしたら、次の日本代表選手はあなたになるかもしれません。