プロ野球、アマチュア野球の両方でピッチャーの能力を評価するときによく使われる言葉が防御率です。
相手にどれくらい得点されたかを示す指標ですが、具体的にはどのように計算するのでしょうか。
そしてどれくらいの数字なら優秀なピッチャーだと評価されるのでしょうか。
今回は、野球の防御率について詳しく解説します。
【野球】防御率の意味
防御率はピッチャーが何点に抑えられるかを示す指標。
1試合の9イニングを投げたとしたら何点に抑えられるかを計算して出すのが特徴です。
ただしピッチャーが失点しても防御率が0という場合もあります。
それはなぜでしょうか。
【野球】防御率の計算方法
まずは防御率の計算式をご覧ください。
防御率 =(自責点×9×3)÷(投球回×3)
数字や言葉がいくつもあって面倒そうですが、意味を理解すれば実は単純。
それぞれの言葉や数字を解説します。
投球回・9・3の意味
投球回は、そのピッチャーが合計何イニング投げたかということ。
1試合完投なら9、2試合完投なら18、3試合目は5回終了時点で降板したら、合計23となります。
ただしピッチャーはイニングの途中で降板することも。
1イニングのアウトは3つなので、1アウト取ったところで降板したらその回は1/3だったということになります。
例えば3回の1アウトで交代したら、投げ切った2回にプラスして2回1/3です。
防御率の式で自責点と投球回にそれぞれ掛けている2つの「3」は、このアウト数を考慮した数字です。
一方、自責点の横の「9」は、「1試合投げたら」という意味で9イニングの9。
例えば1回の3人だけ抑えて自責点1だった場合を想定するとこうなります。
防御率 =(1点×9×3)÷(1回×3)=9
1回を投げて1点取られたピッチャーは、もし9回投げたら9点取られるという計算です。
これがワンアウトしか取れずに自責点1で降板したらこうなります。
防御率 =(1点×9×3)÷(1/3回×3)=27
野球は9回で27アウト。
1アウトしか取れずに1失点したので、もしそのまま9回投げたら27点取られていたという計算になるのです。
自責点とは
ここで問題となるのが、自責点という言葉。
失点は単純に相手に取られた点のことですが、自責点はピッチャーが責任を負わなければならない失点のことを言います。
公認野球規則には、「自責点は安打・犠飛・犠打・刺殺・四死球(故意四球を含む)・暴投・ボーク・野手選択・盗塁によって進塁した走者が得点したとき」に記録されると書かれています。
では自責点にならない失点とは何かというと、それはエラーがらみの失点です。
これについて公認野球規則には、「野手(投手自身も含む)の失策・捕逸・打撃妨害・走塁妨害によって出塁した走者、ファウルフライに対して失策があった後に安打などで出塁した走者、失策がなければアウトになったはずの走者が得点した場合は、自責点とならない」と書かれています。
また、エラー後に送りバント失敗などで入れ替わったランナーがホームインしたときも、そのランナーは最初のエラーがなければいなかったものとして自責点にはなりません。
さらに3アウトを取れるはずの場面でエラーがあった場合、それ以降の失点は自責点にはならないと決まっています。
それは、エラーがなければその回は終わっているはずだったからです。
ピッチャーが交代した場合の自責点
では塁上にランナーがいる状態で交代したピッチャーが打たれて失点したらどうなるのでしょうか。
この場合、塁上にいたのが前のピッチャーの責任によるランナーだったら、その分の自責点は前のピッチャーにつきます。
例えばピッチャーAがフォアボールを出しランナー1塁の場面で降板したとき。
交代したピッチャーBがホームランを打たれたら、自責点はランナーの分の1がAで、ホームランの分の1がBにつくのです。
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【野球】防御率の目安
ではどれくらいの防御率なら優秀なピッチャーと評価されるのでしょうか。
日本のプロ野球では防御率はだいたい以下のような評価になっています。
先発
防御率 | 評価 |
0点台 | ほぼありえない 過去に11人のみ(ほぼ戦前) |
1点台 | 圧倒的に抑え続けたエース |
2点台前半 | 最優秀防御率が狙えるレベル |
2点台後半 | チームのエース |
3点台前半 | 優秀な先発ローテーション |
3点台後半 | 普通の先発ローテーション |
4点台前半 | 1軍残留ギリギリ |
4点台後半 | 2軍落ち濃厚 |
5点台以上 | 即2軍落ち |
先発はなるべく点を取られず、長い回を投げるのが役割。
そのため先発に求められる防御率の数字は比較的厳しくなります。
中継ぎ
防御率 | 評価 |
2点台 | 優秀な中継ぎ |
3点〜4点台 | 一般的な中継ぎ |
5点台以上 | 2軍落ち |
中継ぎに求められる防御率は先発よりは甘くなります。
ただし中継ぎは投球イニング数が少なく、登場する場面もバラバラ。
そのため中継ぎは防御率だけでは安定した評価がしづらいと言われています。
セットアッパー
防御率 | 評価 |
1点台 | 優秀なリリーフエース |
2点台 | 十分なセットアッパー |
3点〜4点台 | 苦しいが仕方なく使っている |
セットアッパーは試合終盤の緊迫する場面で投入されるピッチャー。
防御率の悪いピッチャーはできれば使いたくないため、3点台や4点台のピッチャーがセットアッパーを任されているチームは投手事情が苦しいと言えるかもしれません。
抑え
防御率 | 評価 |
0点台 | 球界を代表する守護神 |
1点台 | 優秀な抑え |
2点台前半 | 標準的な抑え |
2点台後半 | あまり良くはない抑え |
3点台 | 抑えとしては失格 |
抑えのピッチャーは0点に抑えるのが役割で、失点が即敗戦につながる立場。
そのため抑えの防御率の評価はかなり厳しくなります。
まとめ
ピッチャーの能力が一目瞭然になる防御率。
一方で自責点には野手の守備範囲の広さなど、守備の上手さが関係してくるため不公平だという意見もあります。
そのため最近は「被本塁打・与四死球・奪三振」だけでピッチャーを評価するFIP(Fielding Independent Pitching=守備から独立した投球内容)という指標も登場。
ピッチャーの評価指標は変わっていくのか、今後の動向にも注目です。
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