日本のプロ野球の平均試合時間は約3時間20分。
しかし別の見方をすれば平均試合時間は20分程度だとも言われています。
いったいどういうことでしょうか。
これには「ボールインプレー」と「ボールデッド」という考え方があります。
今回は、野球のボールデッドをご紹介。
気をつけなければならないボールインプレーとの違いも解説します。
【ボールデッド】定義
ボールデッド中のボールは英語で書くと「dead ball」。
ではデッドボールのことなのでしょうか?
確かにデッドボールはボールデッドですが、ボールデッド=デッドボールではありません。
混乱しそうな話ですが、これはどういうことでしょうか。
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ボールデッドとデッドボールの違い
まず混乱を解消するために、日本語のデッドボールの方から解説します。
バッターに投球が当たってしまうデッドボール(死球)は、英語では「hit by pitch」。「投球に当たった」となります。
一方、今回のテーマであるボールデッドは英語では「the ball is dead」。
つまりボールデッドはボールが死んでいる=プレーが停止している状態を表します。
バッターがデッドボールになったときはプレーがいったん止まりますから、これはボールデッドの状態でもあるのです。
ボールデッドの基本的なルール
ボールデッドの逆の状態がボールインプレー。
ボールインプレーはプレーが行われている状態です。
ボールデッドになるとプレーは止まり、次にスタートするまでの間はどのようなプレーも無効になります。
例えばタイムがかかっていてピッチャーの周りに内野陣が集まり、励ましているような場面はボールデッド中。
このときにランナーが盗塁をしても、元の塁に戻されます。
またボールデッド中に野手が隠し玉をしてランナーにタッチしてもアウトにはなりません。
ボールデッドからボールインプレーになるのは、ピッチャーが投球姿勢に入り、球審が「プレー!」と宣言したとき。
逆に言えば、ボールデッド中に試合が動くことはありませんから、あまり気にする必要はありません。むしろ覚えておかなければならないのは、ボールデッドだと思ったら実はボールインプレーだったというときです。
【ボールデッド】プレーが止まる場面
ではボールデッドになる場面には、具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。
審判によるタイム
審判が「タイム」とコールしたらボールデッド。
具体的には例えば以下のような場面でタイムを宣言します。
・選手や監督・コーチがタイムを要求したとき
・汚れたボールを交換するときや、ボールを検査するとき
・軽い怪我の応急処置をするとき
・降雨や日没で試合続行が難しいとき
他にも多くの場面がありますが、いずれも審判がタイムをかけた時点でボールデッドになるのがポイント。
選手や監督がタイムを要求しても、審判がコールするまではボールインプレーです。
また審判は1つのプレーが継続しているときにはタイムをかけず、プレーが止まってからタイムをコールします。
デッドボール
前述のようにバッターがデッドボールになるとボールデッド。
審判がデッドボールをコールすると自動的にボールデッドになり、バッターには1塁への安全進塁権が与えられます。
ホームラン
大きなファールなどで打球がフィールドの外に出ると、ボールデッド。
ホームランもボールがフィールドから出てしまった状態ですから、審判がホームランのジェスチャーをすると自動的にボールデッドです。
そしてバッターはボールデッドの間に4つの塁を進んでホームインできます。
つまりホームランは4つの安全進塁権を与えられるボールデッドと言えるのです。
ボールデッドですから、ホームランを打ったバッターが途中で肉離れを起こすなどの事態でベースを一周できないときは代走を送ることも可能。
プロの試合でも実際に2回、そのような記録が残っています。
ダッグアウトやベンチにボールが入る
ボールがスタンドやベンチ、ダッグアウトなどに入った場合も自動的にボールデッド。
送球が暴投などでこれらの場所に入ったときはボールデッドにした上でランナーには1つの進塁が認められます。
2022年の日本シリーズ第2戦では延長12回にこのプレーが起こり、2塁から一気にホームインしたオリックスのランナーが3塁に戻されるという事態も起こっています。
他にも3塁打になる当たりなのにバウンドしたボールがスタンドに入り、エンタイトルツーベースになることがあるのも同じようなケース。
ボールデッド+安全進塁権で攻撃側が損をすることも多いのです。
ボーク
ピッチャーがボークをして審判が「ボーク!」と宣告したときも自動的にボールデッド。
塁上にいたランナーにはそれぞれ1つの安全進塁権が与えられ、ランナーがいなかった場合には、バッターに1つのボールカウントが与えられます。
インターフェアやオブストラクション
打撃妨害や守備妨害といったインターフェア、走塁妨害のオブストラクションがあったときも、審判がその宣告をすれば自動的にボールデッドになります。
このときもボールデッドになるのは審判がコールしてから。
プレーが続いていて審判が止めるまではボールインプレーです。
【ボールデッド】ボールインプレーの場面
ボールデッドと似た場面でもプレーが継続するケースがいくつかあります。
うっかりボールデッドだと思い込まないように注意が必要です。
ファールボール
勘違いされがちなのが、ファールボールです。
ファールボールが転がった場合は、自動的にボールデッド。
つまりファールの度に球審は再び「プレー!」のコールをしなければなりません。
一方、ファールボールを野手がノーバウンドで捕球したら、ボールインプレー。
そのためファールフライでもランナーはタッチアップを狙うことができます。
フォアボール
デッドボールはボールデッドですが、フォアボールはボールインプレーです。
ボールデッドの状態ではありませんから、ランナーは盗塁も可能。
1塁ランナーはフォアボールで自動的に2塁までは進めますが、例えばフォアボールとなった投球をキャッチャーが後ろに逸らした場合、ランナーは3塁まで走ることもできます。
インフィールドフライ
インフィールドフライはボールインプレー。
つまりルール上はタッチアップもでき、落球してもボールインプレーなのでランナーは進塁も可能。
2012年には高校野球神奈川大会で、サヨナラインフィールドフライという珍しい記録も生まれています。
送球がランナーに当たる
打球が走者に当たった場合は守備妨害でボールデッド。
また走者が故意に送球に当たった場合も守備妨害でボールデッドですが、故意ではなく送球に当たった場合は守備妨害とはならず、ボールインプレーです。
野手が勝手に故意だと判断している間にランナーが進塁してしまうことがありますから、注意しなければなりません。
まとめ
プレーが止まった状態であることを表すボールデッド。
冒頭で紹介した試合時間3時間20分と20分の違いは、試合時間全体とボールインプレーの時間になります。
つまり試合時間のうち3時間はボールデッドだということ。
野球はとてものんびりしたスポーツなのです。
しかしそのボールデッドとプレーが続行しているボールインプレーの違いを理解しておかないと、思わぬところでピンチを招いてしまうことがあります。
普段から具体的な状況を想定して、「これはボールデッド」、「これはボールインプレー」などと素早く判断する訓練をしておくと良いかもしれません。
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