テレビでプロ野球の試合を観戦していると、打者へのデッドボールや審判の判定などを巡(めぐ)って選手や監督・コーチが激高し、両チームのベンチから全員が集まってきて、言い合ったり詰め寄ったりした挙句、最悪は殴り合いなどの乱闘に発展するシーンを目にすることがあります。
この記事では、野球における乱闘の原因と最近の状況、また乱闘を減らす対策とペナルティについて詳しく解説します。
野球における乱闘とは?
日本のプロ野球(NPB)では、試合中にトラブルがあった際でも、大抵の場合は相手に詰め寄る程度で済むことが多いですが、米国メジャーリーグ(MLB)では対応が非常に激しく、激昂した選手がダッシュで相手に突進し、思いっきり殴り掛かることがあります。
その後は両チームのベンチから全員が殺到し、あっという間に乱闘に発展してしまいます。
このため、日本のプロ野球でも、外国人選手が詰め寄ってきたら一目散に逃げる光景も多く見られます。
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乱闘の起こる原因
野球で乱闘が起こる主な原因は、デッドボールを当てられ、審判の判定に怒った選手が瞬間的に感情を抑えられず、暴力に訴えて乱闘に発展する例が挙げられます。
ただし、全てが感情のままだけではありません。野球の試合で、ルールブックに明記された規則以外に多くの暗黙のルールがあります。そのルールが破られた場合に、報復行為として乱闘を起こすことが実は多いのです。
では、暗黙のルールとは何か、また報復行為とは何かについても解説します。
野球における暗黙のルール
野球における暗黙のルールは非常に多くあります。
暗黙のルールとは、前述のとおり正規のルール上は全く問題が無くても、相手への敬意を欠いた行為や、既に勝負の大勢が決している状況で記録を狙った自分本位な行為を行わないことが基本的な考え方です。
特にMLBではこの暗黙のルールが非常に重んじられており、破った場合の影響は大きくなってしまいます。
数多くある暗黙のルールのうち、特によく見かける、乱闘に繋がるシーンを攻撃側、守備側、そして共通のものについて抜粋して解説します。
【攻撃側の例】
・試合で大差(概ね6点以上)が開いている状況で、カウント3ボールノーストライクから打つことや、バントや盗塁を行ってはいけない。投手が打席に入ったら見逃し三振をする。
・ゲッツーの際に危険なスライディングをしてはいけない。
・ホームランを打っても大げさなガッツポーズはしない。
【守備側の例】
・三振を取った際に大げさにガッツポーズをしてはいけない。
・投手は野手にプレー上の文句を言ってはいけない。
・相手投手が打席に立ったときには、内角を攻めてはいけない。
【攻守共通の例】
・選手は審判に対し、ストライク・ボールの判定に文句を言ってはいけない。
・審判に抗議する際には、審判の指示に従って抗議をする。
・乱闘になった際には、ベンチにいる選手や関係者の全員が参加しなければいけない。
その他にも非常に多くのルールがありますが、それぞれ印象的な3点ずつを取り上げました。
乱闘に至る流れ
乱闘が起こるまでの基本的な流れとしては、上記のような暗黙のルールが破られた場合、相手側が対抗措置としての報復行為を行うことがきっかけとなります。
報復された側は、そのままでは気が済まず、また報復が怪我に繋(つな)がりかねない危険な行為だった場合に乱闘が起こる、という段取りです。
乱闘が収まり、状況がひと段落したら、乱闘の当事者や監督が退場処分や数日間(あるいはそれ以上)の出場停止処分、また罰金というペナルティが科せられます。
乱闘の減少と対策・ペナルティ
選手や監督・コーチの感情が高まったり、暗黙のルールを破った場合に起きてしまう乱闘行為ですが、ここ最近では乱闘が減少しているようです。
乱闘が減少した原因と、乱闘を少なくするための対策やペナルティについて解説します。
最近乱闘が減った原因
昭和や平成初期の時代は、NPBでも選手や監督・コーチが本格的に殴り合う乱闘がよく見受けられましたが、2000年代になると一気に減っていきました。
ある程度年配のオールド野球ファンにとっては、乱闘は見慣れた光景でもあり、それを一歩引いて楽しんで見る要素もあったので、最近の状況に物足りなさを感じている方もいるでしょう。
乱闘が減った主な原因についてみていきます。
選手同士が仲良くなった
最近乱闘が減った主な原因としては、他球団の選手と「仲良く」交流したり、自主トレを一緒に行うなどの機会が以前と比べて圧倒的に増えた点が挙げられます。
以前は、他球団の選手は敵であるといった認識が非常に強く、他チームの選手同士が一緒に戦うのはオールスター戦などに限られていました。リーグが違う場合は、永遠に交わることはなく、敵のままでした。事実、監督が選手に「他チームの選手とは口を利くな!」と厳命していた例もあります。
ところが、最近ではNPBでも交流戦が定着し、試合前後などに会話する機会も増え、またスマホやSNSの発達によって野球選手同士が気軽に交流できるようになり、相手チームの選手が敵だという認識は薄くなっています。
こうした背景から、(仲間同士での)乱闘というモチベーションが低下してきたのです。
国際試合で共に戦う機会が増えた
また、WBCやオリンピックに代表される国際試合が多く開催され、日本人選手が同じ目的を共有して共に戦うことが多くなりました。
その影響もあり、敵という認識よりも、同じ日本人であり、野球で相手と戦う同士という認識が一気に広がってきました。
このため、選手同士でいがみ合うのではなく、切磋琢磨する仲間であるという考え方が定着しました。
こういった流れもあって、他球団の選手とオフシーズンは前述のとおり合同自主トレをすることが当たり前となり、シーズン中は敵でもシーズンが終わったら同じ野球仲間という状況が当たり前になりました。
これが、以前と比べて乱闘が減少した大きな原因です。
なお、外国人選手の場合は日本人選手同士のような「横の繋がり」がないため、現在でも遠慮なく相手を殴りに行く場合があります。
対策とペナルティの強化
乱闘への対策とペナルティ強化も、乱闘が減った要因となっています。
乱闘を起こした選手や監督・コーチに対する出場停止や罰金などのペナルティが、以前と比べると厳しくなったことで、乱闘の抑止に繋(つな)がっているという見方もあります。
出場停止や罰金以外にも、報復行為や乱闘行為を未然に防ぐため、選手や監督を早い段階で退場させる警告試合の増加に伴い、乱闘も減少しました。
また、直接の暴力ではなくても、暴言や侮辱行為だけで退場させることで、乱闘に発展しなくなったという指摘もあります。
ただし、暴言や侮辱行為で退場させる行為は、公認野球規則(9.02)に明記されているので、行き過ぎた措置とはいえません。
まとめ
野球における乱闘の意味と、乱闘が起こる原因、そして最近乱闘が減少している理由と、乱闘対策やペナルティについて詳しく解説しました。
乱闘が起きて全選手・監督・コーチがベンチから飛び出して騒然となるシーンは、エキサイティングでもありますが、やはり怪我や負傷などのリスクもあるので、出来れば避けたいものです。
選手や関係者には、あくまでフェアプレイの精神で正々堂々と戦っていただきたいものです。
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