各地区の予選を勝ち抜いた高校が出場できる夏の甲子園。
これに対して、春のセンバツ高校野球は出場基準が分かりにくいと言われます。
中でも難しいのが「21世紀枠」ではないでしょうか。
今回は、センバツ独特のシステムである21世紀枠について、その歴史や出場の条件、戦歴をご紹介します。
【21世紀枠】の意義と歴史
そもそも春のセンバツとは「選抜高等学校野球大会」のこと。
これに対して夏の甲子園大会は「全国高等学校野球選手権大会」と言います。
ちなみに春の大会は毎日新聞社の主催で、夏の大会は朝日新聞社の主催です。
大きな違いは、出場枠の考え方。
夏の大会は各都道府県の予選を勝ち抜いた1校(北海道と東京は2校)が出場権を勝ち取るという形です。
これに対して春のセンバツはその名にある通り、選抜された高校に出場資格が与えられるという形になります。
つまり夏の大会は試合の結果が全てであるのに対して、春のセンバツは秋季大会の成績を基準にしつつ選考会で出場校が選ばれるということ。
この特性が21世紀枠誕生の背景となっています。
21世紀枠の誕生
21世紀枠が設立されたのは、21世紀初年の2001年。
甲子園にあと一歩届かないチームに大舞台を経験させることで高校野球のレベルアップを図るという意図で誕生した制度です。
主催者である毎日新聞社は21世紀枠について、「勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を」選ぶとしています。
この21世紀枠は他の競技にも波及。
ラグビーの選抜大会には「チャレンジ枠」、テニスの選抜大会には「ドリーム枠」が誕生しています。
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【21世紀枠】センバツ出場条件
センバツの出場校は合計32校で、毎年1月下旬頃に選考委員会で選ばれます。
選抜の出場枠は、21世紀枠を含めて3つ。
その中で21世紀枠の「技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を選ぶ」とはどういうことでしょうか。
他の枠の選抜基準と合わせてご紹介します。
一般選考枠
一般選考枠は28校。
選考委員は高校・大学など野球部の元指導者や元新聞記者で構成されています。
選考基準は前年の秋季大会の成績。
ただし試合内容も考慮されるため、大会成績では下のチームが選出されることもあります。
それぞれの地区の出場枠は以下の通りです。
・北海道=1
・東北=2
・関東・東京=6(関東4+東京1+どちらかからもう1枠)
・東海=2
・北信越=2
・近畿=6
・中国・四国=5(中国2+四国2+どちらかからもう1枠)
・九州=4
明治神宮枠
秋季大会の優勝校の枠。
この1校は一般選考枠には含まれないため、結果としてその地区の出場枠は1校増えることになります。
21世紀枠
一般選考枠と明治神宮枠は、ほぼ秋季大会の成績で決まります。
それに対して21世紀枠は「技能だけではない」基準で選ぶもの。
とはいえ全高校が対象になるわけではありません。
21世紀枠は、まず「秋季都道府県大会のベスト16以上」であることが条件。
加盟校が129校以上の都道府県はベスト32以上が対象となります。
つまり「惜しくも上位に入れなかった」と言える程度の実力は必要なのです。
その上で、以下の推薦例のどれかに当てはまることが条件となります。
・少数部員、施設面のハンデ、自然災害など困難な環境の克服
・学業と部活動の両立
・近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない
・創意工夫した練習で成果を上げている
・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている。
また条件にはありませんが、21世紀枠で出場した高校はほとんどが公立校。
私立校は2013年に「全力疾走」のモットーで選抜された土佐高校だけとなっています。
21世紀枠選考の流れ
21世紀枠の選考は、まず各都道府県の高野連が推薦校1校を選びます。
続いて全国9地区の代表推薦校を選抜。
最終的に東日本1校+西日本1校+いずれかからもう1校が選出されます。
【21世紀枠】の戦歴
21世紀枠の高校は実力で選ばれたわけではないため、甲子園での成績もどちらかというと初戦敗退のイメージが強くなっています。
2022年までの通算成績は、20勝58敗。
出場した58校のうち44校は初戦で敗退しています。
しかし初戦を突破しただけでなく上位に食い込む活躍をした高校も。
宜野座高校
21世紀枠が始まった2001年に沖縄県から選抜された宜野座高校は、「部員全員が地元中学出身者で地域貢献を果たしている」として選ばれた高校。
21世紀枠で初出場するとベスト4まで勝ち上がり、さらにこの年の夏の甲子園にも出場しています。
利府高校
宮城県の利府高校は夏の県大会では何度も決勝まで勝ち進んでいた名門です。
2009年の時点では甲子園出場を果たしていませんでしたが、「地域の清掃活動に積極的に参加。小学校へ出前授業をしている。生徒が梨農家の手伝いをしている」として21世紀枠に選抜され出場。
こちらもベスト4まで勝ち進みました。
まとめ
選考基準が曖昧なこともあって議論を呼ぶことが多い21世紀枠。
選ばれずに涙を飲んだ球児が多い一方で、21世紀枠に選ばれたことで飛躍した高校もあります。
少なくとも部員不足や災害などのハンデを背負った野球部にとって21世紀枠は大きな希望の光となっているのではないでしょうか。
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