日本の国民的スポーツのひとつが野球。
一方で最も盛んな国がアメリカということもあって、いかにもアメリカ発祥のスポーツというイメージもあります。
では実際には野球はどこの国で生まれたスポーツなのでしょうか。
今回は、野球の発祥の国や歴史をご紹介します。
【野球の歴史】元になったスポーツ
野球の元になったと言われるスポーツは、実はいくつもあります。
それは何をもって野球の原型とするか、その考え方の違いによるもの。
古いものから、順にご紹介します。
球技の起源 ラ・シュール
2チームに分かれて行う球技ということで、12世紀フランスの「ラ・シュール」が野球の起源だという意見があります。
「ラ・シュール」は手や足、道具を使って敵陣の2本の杭の間にボールを通すスポーツ。
どちらかというとサッカーに近いものですが、あらゆる球技の起源という意味で野球のルーツだと言われています。
ボールを投げる ストールボール
「ラ・シュール」はイギリスに伝わり、さまざまなスポーツに変化。
14世紀に「ストールボール」という球技が誕生します。
これは農場の仕事をしている女性たちが楽しんだスポーツ。
1人が的に向かってボールを投げ、もう一人が素手でボールを止めて的を守るというルールでした。
こちらは2チームに分かれて攻守を競うボール投擲型スポーツの起源と言われています。
ボールを打つ クリケット
ストールボールは徐々に変化して、16世紀頃には「クリケット」が生まれます。
今でも世界2位の競技人口を誇ると言われるクリケットは、投げられたボールを木の棒で打つのが特徴。
かなり野球に近いスポーツであることが分かります。
野球の直接の先祖 ラウンダーズ
18世紀になるとイギリスで、クリケットの簡易版である「ラウンダーズ」が誕生します。
ラウンダーズは打者がボールを打った後、1番目のベースから順に回り、1周すると1点入るというルール。
現在の野球にかなり近いルールで、ラウンダーズが野球の直接のルーツだと言われています。
【野球の歴史】誕生と発展
ここまでを見ると、野球のルーツとなった国はイギリス、さらに遡ればフランスと言えそう。
でも「野球の発祥の国」は、やはりアメリカなのです。
野球の誕生
ラウンダーズは19世紀にイギリスからの移民によってアメリカに伝わり、大人気に。
アメリカ各地で開かれた「タウン・ミーティング」という集会のレクリエーションスポーツとして親しまれました。
そのため「タウン・ボール」とも呼ばれましたが、当時は参加人数や塁の位置など、ルールは街ごとにバラバラでした。
そこで1845年にニューヨークの実業家アレキサンダー・カートライトがルールを統一。
塁間の距離やチームの人数、ファウルライン、アウト3つで攻守交代、アウトにするために塁にボールを送る(それまではボールを走者に当てていた)など、ルールの基礎が作られ、これが野球の原型となったのです。
ただしこの頃の野球は9イニング制ではなく、21点先取するまで続くというルールでした。
一方で試合後には一緒に食事をするという暗黙のルールがあったため、いつ試合が終わるのか分からず調理に困ると料理人から不満が噴出。
終了時刻が読みやすくなるよう、およそ10年後に9イニング制に変更になったと伝えられています。
野球の発展
ルールが定められた野球は全米で大人気に。
アマチュアクラブが盛んに作られ、1858年には初のアマチュア組織NABBP(ナショナル・アソシエーション・オブ・ベース・ボール・プレイヤーズ)が発足します。
さらに人気が加熱すると報酬を得てプレイする選手も現れ、1869年には全員がプロ選手の「シンシナティ・レッドスキンズ」が誕生。
1871年に誕生した初のプロ組織「ナショナル・アソシエーション」は5年で破綻しましたが、1876年に「ナショナル・リーグ」が結成されました。
一方の「アメリカン・リーグ」は1901年にメジャー・リーグであることを宣言。
こうして現在まで続く2大リーグ制が確立しました。
メジャー・リーグのチーム数は1960年まではナショナル、アメリカンそれぞれ8球団の計16球団でしたが、徐々に拡大。
1998年には各リーグ15球団、計30球団という規模になっています。
日本への伝承
日本に野球が伝えられたのは1872(明治5)年。
それ以前にもアメリカから少しずつ伝わっていたという説もありますが、定説では東京大学の前身である開成学校のアメリカ人教師ホレス・ウィルソンが学生たちに教えたのが最初と言われています。
当時はまだ野球という呼び名はなく、単に「玉遊び」や「打球鬼ごっこ」と呼ばれていたそう。
また「ベース・ボール」を直訳した「底球」とも呼ばれていました。
日本の野球を大きく発展させたのは大学です。
日本では1880年代から大学野球が盛んに行われましたが、その中で早稲田大学野球部が1905年に日本初のアメリカ遠征を行います。
ここで得た最新知識が日本でも広がり、大学生が指導したことで中高生の間でも野球が広まっていきました。
日本初のプロリーグである「日本職業野球連盟」が誕生するのは1936年。
それまで50年以上、野球は学生のスポーツだったのです。
まとめ
野球の発祥の国はアメリカ。
ただしそのルーツはイギリスのラウンダーズで、元をたどれば農場の女性たちの球技に、さらに遡ればフランスに行き着きます。
まさにスポーツの歴史は奥深いといえるのではないでしょうか。
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