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【MLB】ロックアウトとは?ストライキとの違いもご紹介!

2022年のシーズン前に野球ファンをヤキモキさせたのが、メジャーリーグ(MLB)のロックアウトです。
いわゆる労使交渉のもつれから発生したものですが、ロックアウトとはどういう意味なのでしょうか?
そしてストライキとの違いは?
今回は、MLBのロックアウトについて解説します。

【MLB】ロックアウトの意味

そもそも「ロックアウト」とはどのような状態のことを言うのでしょうか。
ロックアウトを直訳すると「締め出し」や「閉鎖」。
パソコンやスマホでパスワードの入力を何回か間違えると、それ以上の入力を受け付けなくなることがありますが、あれもロックアウトで、つまり「締め出し」です。
ではMLBのロックアウトの場合はどういう意味というと、これは労働争議の用語。使用者が労働者の争議行為に対抗して、工場などを一時閉鎖し、労働者の就業を拒否することを言います。
MLBの場合なら、球団(オーナー側)が選手たちに対して球団施設への立ち入りを禁止し、サラリーの支払いをストップすることがロックアウトとなるのです。

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ストライキとの違い

仕事をストップさせて労使交渉を進展させるといえば、より一般的なのはストライキ。
ではロックアウトとストライキは何が違うのかと言うと、行うのがどちら側かということです。
ロックアウトはオーナー側が仕事をストップさせて労使交渉を進展させるために行う作戦。これに対してストライキは、労働者側が仕事をストップすることを言います。
MLBの場合で言えば、主に選手会側が試合を放棄すればストライキとなるのです。

過去のロックアウトとストライキ

では過去にMLBではどのようなロックアウトとストライキが実施されたのでしょうか。
一覧にしてみました。

タイプ期間試合中止
1972ストライキ1386
1973ロックアウト170
1976ロックアウト170
1980ストライキ80
1981ストライキ50713
1985ストライキ20
1990ロックアウト320
1994-95ストライキ232938
2021-22ロックアウト990

この一覧から分かるのは、ロックアウトでは試合中止は1度もないということです。
試合が中止になればオーナー側の収入が激減するため、選手たちはストライキによる試合中止を交渉の材料にします。

ロックアウトの影響

一方で試合が中止になるとオーナー側にはメリットがなくなるため、ロックアウトはオフシーズンに行います
オフシーズンなら選手たちにも影響はないと思われがち。しかしそうではなく、各方面に大きな影響があります。
まずロックアウト中は、選手と球団の契約交渉が全てストップします。
つまりフリーエージェント(FA)選手はロックアウト解除までどの球団とも契約できないのです。
このため12月からのロックアウト突入が確実と言われた2021年には、11月下旬に大物FA選手たちが駆け込みで契約先を決めました。
もちろんウィンター・ミーティングも中止になります。これは球団オーナーやGMが集まってトレードなどの移籍交渉を行う場。同時に球団から選手への接触も禁止され、ポスティングによるMLB移籍の交渉も凍結となります。
さらに球団の施設がまさに「締め出し」の状態で使えなくなるため、選手は球団施設での練習もできなくなるのです。

【MLB】2021〜22ロックアウト

過去のロックアウトは17日から32日と短く、選手への影響も小さいものでした。しかし2021年12月から始まったロックアウトは99日間にも及ぶ泥沼に発展
なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

背景

MLBではオーナーたちで組織されたメジャーリーグ機構とMLB選手会が労使交渉を行って包括的労使協定(CBA=コレクティブ・バーゲニング・アグリーメント)を結びます。
2016年に結んだCBAの有効期間は4年間で、これが2021年12月2日に失効。それまでに新しいCBAを結ぶ必要があったのです。
ところがこのときはオーナー側と選手会側の主張に大きな隔たりがあり、交渉は何度も決裂。ついに失効期限を過ぎて、オーナー側はロックアウトを行いました

主な争点

労使交渉の最大の争点は金銭問題
選手会は最低年俸の引き上げとともに、年俸調停権・FA権取得期間の短縮を主張しました。
現状ではメジャー昇格後3年間は年俸がほとんど上がらず、MLB在籍日数(サービスタイム)が6年になってようやくFA権を取得できる状態。時間がかかりすぎるために年齢を理由に買い叩かれる選手が多いと主張しました。
一方のオーナー側は29歳6か月で全選手がFAとなるユニバーサルFAを提案。ところがこの制度では若いうちにメジャー昇格した選手が今よりも不利になるため、選手会は反対したのです。
また近年のMLBで問題になっているのがタンキングと呼ばれる行為。
MLBのドラフトは日本のようなくじ引きではなく、勝率が低い球団からのウエーバー順となるため、シーズン前半で上位が狙えなくなった球団は戦力補強を行わずにわざと戦力を落として勝率を下げ、翌年のドラフトでの上位指名権を狙うのです。
選手会はタンキング防止のための対策も要求し、オーナー側はこれに対して年俸総額下限の設定を提案しました。
しかしオーナー側は同時にぜいたく税の下限ラインを大きく引き下げようとしたのです。
ぜいたく税の正式名称はcompetitive balance tax(CBT=競争的均衡税)。課徴金制度とも呼ばれます。
球団の年俸総額に基準を設け、一定以上の年俸を支払う球団には「税金」を課して、年俸総額の少ない球団に分配するという仕組みです。
年俸総額に上限を設けるサラリーキャップと違うのは、CBTを支払えば上限を超過してもいいということ。オーナー側はCBTの基準額を引き下げて年俸を抑えたいと希望したのですが、選手会側は「FA市場の活性化につながらない」と反発しました。

結果

オーナー側が何度も交渉のデッドラインを設けては決裂を繰り返した交渉は99日目にようやく合意。開幕の延期はあったものの試合の中止は回避できました
今回の労使交渉で選手側は妥協した面も多かったものの、オーナー側と大きく隔たっていた最低年俸などの金銭面の懸案事項で好条件を引き出すことに成功。さらにCBTの基準額を引き上げ、タンキング防止のためのドラフトでのロッタリー制(指名抽選制)導入も勝ち取りました。
オフの練習施設を奪われ、独自の自主練習場所を設けるなど選手側にも大きな影響はありましたが、結果は選手会側の判定勝ちと評価されています。

まとめ

2021年から始まった史上最長のロックアウトでは、締め出しとデッドラインを武器にするオーナー側に対してファンの批判が高まり、交渉に大きな影響を与えました。
労使交渉の内容がSNSなどですぐに拡散する現代では、高圧的なイメージのあるロックアウトは効果的ではないのかもしれません。
一方で労使交渉が合意に達した後の記者会見でオーナー側は「選手と良好な関係を保つという試みは成功したとは言えません」と発言。多くの火種が残っている以上、再びストライキやロックアウトが起こる可能性もあります。
ファンが見たい熱戦は、労使交渉ではなく野球そのもの。
ストライキやロックアウトが2度とないことを多くの人々が望んでいます。

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スポーツで人生楽しむ自然派ライター

筋トレとアウトドアをこよなく愛するライター。某FM局の作家時代、筋トレマスターに師事し、トレーニングブログを3年間で100本以上執筆しました。

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