2023年3月現在、ボクシングの世界で最も注目されていると言っても過言ではないのが、スーパーバンタム級です。
なぜならバンタム級世界4団体王座統一を成し遂げた井上尚弥が、スーパーバンタム級へ転向したから。
バンタム級の王者を返上した井上選手は、その成績を考慮して2月にはWBC(世界ボクシング評議会)世界1位にランクインしました。これで世界王者への挑戦も可能に。再び4階級制覇を目指す彼の前に立ちはだかるのは、どのようなチャンピオンなのでしょうか。
今回は、井上尚弥が挑むスーパーバンタム級と、そのチャンピオンたちをご紹介します。
【スーパーバンタム級】とは
まずは井上尚弥が新たな戦場として選んだスーパーバンタム級について。
これまでにライトフライ級(48.97kg以下)、スーパーフライ級(52.16kg以下)、バンタム級(53.52kg以下)の3階級を制覇してきた井上選手にとって、さらに1階級上げることにはどのような意味があるのでしょうか。
【関連記事はこちら】⇩
・【ボクシング】歴代最強ボクサーPFPトップ5!各選手の詳細も紹介
・【ボクシング】プロテストの内容や試験の難易度について調査!
ランクを上げる意味
プロボクシングの階級はミニマム級(47.62kg以下)からヘビー級(90.72kg以上)まで、17階級に分かれています。
細分化されているため、1つの階級の体重差は1.3kgから3kg程度と、一般的な感覚で言えばごくわずかなもの。
ところがこの差がパンチ力などに大きく影響し、戦い方もかなり変わってきます。そのためチャンピオンが1つ階級を上げただけで全く勝てなくなることも。
一方で無理をして下の階級にこだわると、無理な減量でやはり能力を発揮できない可能性もあります。
つまりボクサーにとって適正な階級で戦うことは非常に重要なのです。
スーパーバンタム級の現状
井上選手はバンタム級の4団体統一戦後、「バンタム級のウエイトが楽ではない中でベストを尽くした」と語っています。つまりバンタム級はすでに最適ではなくなっているということ。井上選手の体格から見ても、実はスーパーバンタム級がベストだと言われています。
しかし階級によって選手層に大きな違いがあるのも事実。
井上選手も「スーパーバンタム級には強豪がひしめいている」と言っています。
実際に現在のスーパーバンタム級は軽量級屈指の激戦区。
後述するチャンピオンたち以外にも、「井上をオレが仕留めてやる」と宣言した “悪童”ルイス・ネリや、元WBOバンタム級王者マーロン・タパレス、元WBOバンタム級王者ジョンリール・カシメロなどの猛者がひしめいています。
【スーパーバンタム級】2人のチャンピオン
井上選手が目指すのはスーパーバンタム級の4団体統一王者。
4団体とは、ボクシング界で最も権威があるとされるWBA・WBC・IBF・WBOの4つの団体のことです。
最も歴史ある団体は前身が1921年に設立されたWBA(世界ボクシング協会)。WBC(世界ボクシング評議会)は1963年、IBF(国際ボクシング連盟)は1983年、WBO(世界ボクシング機構)は1988年にそれぞれ設立されています。
この4つの団体に、現在(2023年3月)、チャンピオンは2人。それぞれ2つの団体の統一王者として君臨しています。
スティーブン・フルトン
WBCの世界1位になった井上選手にとって最初の大きな壁となるのが、スティーブン・フルトンです。
アメリカのフルトン選手は、WBCとWBOの統一王者。
アマチュアで90戦した後、2014年にプロデビューした選手で、2021年1月にWBO世界王者のアンジェロ・レオに判定勝ちすると、同じ年の11月にはWBC王者ブランドン・フィゲロアに判定勝ちして2団体統一王者となりました。
戦績は21戦全勝ですが、KOは8回。KO率は38%で一発の怖さはないと言えますが、相手に打たせないうまさとスタミナが持ち味です。
身長は169cm。これは165cmの井上選手より4cm高いだけですが、大きな特徴はリーチが179cmもあることです。井上選手は171cmなので、その差はなんと8cm。
フットワークと長いリーチを活かしたジャブでポイントを稼ぐ巧みな戦い方をどう崩すかがポイントとなります。
ムロジョン・アフマダリエフ
井上選手がフルトン選手に勝ち、WBCとWBOの統一王者になった場合、対戦を期待されているのが、WBAとIBFの統一王者であるムロジョン・アフマダリエフです。
アフマダリエフ選手はウズベキスタン出身。
2016年にリオ五輪で銅メダルを獲得後、2018年にプロデビュー。
2020年1月にWBAとIBFの統一王者だったダニエル・ローマンに判定勝ちし、プロ8戦目で2団体の王座となりました。
これまでのプロでの成績は11戦全勝で、そのうちKOは8回。KO率は72%を誇ります。
身長は166cmでリーチは173cmと体格的には井上選手に近いものの、アマチュア時代に培った高い技術とスピード、高速連打と高度なディフエンス力が特徴。さらに一発KOも可能なフックをいきなり繰り出すなど、変幻自在な攻撃にも注意が必要だと言われています。
まとめ
井上尚弥が目指すのは、ライトフライ、スーパーフライ、バンタムに続く4階級制覇。しかも2階級での4団体王座統一となれば、世界初の快挙です。
その前に立ちはだかるのは、長いリーチでポイントを稼ぐ技巧派スティーブン・フルトンと、技術に破壊力を兼ね備えたムロジョン・アフマダリエフという2人のチャンピオン。
井上選手は対照的なスタイルを持つ王者たちを倒すことができるのか。期待が高まります。
【関連記事はこちら】⇩
・【ボクシング】4団体一覧|各組織の詳細や違いを解説!
・【ボクシング】ファイトマネー一覧|世界・日本を比較してご紹介!