正月明け恒例の一大イベントとして広く国民に親しまれている「箱根駅伝」ですが、長い歴史と伝統の中で、数々の名場面や名選手、そして素晴らしい記録が駅伝ファンの心を捉えてきました。
この記事では、特に過去の「ごぼう抜き」、すなわち先行するライバル校のランナーを次々に抜き去る超人的な走りを繰り広げた選手に注目して、詳しく解説します。
箱根駅伝とは
毎年正月明けの2日と3日に開催され、全区間をTV放送されるなど、もはや正月の風物詩として全国津々浦々まで広く親しまれているのが箱根駅伝(正式名称:東京箱根間往復大学駅伝競走)です。
この箱根駅伝と全日本大学駅伝対校選手権大会、出雲全日本大学選抜駅伝競走を加えた3大会を総称して「学生3大駅伝」と呼ばれます。
箱根駅伝は1920年の第1回開催から数えて、2023年1月の開催で99回目となる、圧倒的な歴史と伝統を誇る学生最大の人気レースですが、出場できるのは関東学生陸上競技連盟に所属する関東の大学のみとなっています。
過去の「ごぼう抜き」ランキングは
過去の大会で、11人以上のごぼう抜きを果たしたランナーは通算22人います。
その一覧は下記のとおりです。
No. | 人数 | 走者 | 大学名 | 区間 | 大会 |
1 | 20 | ギタウ・ダニエル | 日本大学 | 2区 | 85 |
2 | 17 | 村澤 明伸 | 東海大学 | 2区 | 87 |
3 | 15 | ギタウ・ダニエル | 日本大学 | 2区 | 84 |
15 | 中川 拓郎 | 順天堂大学 | 2区 | 79 | |
4 | 14 | イェゴン・ヴィンセント | 東京国際大学 | 2区 | 97 |
5 | 13 | パトリック・マセンゲ・ワンブィ | 日本大学 | 2区 | 95 |
13 | ドミニク・ニャイロ | 山梨学院大学 | 2区 | 94 | |
13 | 佐藤 悠基 | 東海大学 | 3区 | 85 | |
13 | 伊達 秀晃 | 東海大学 | 2区 | 84 | |
6 | 12 | ガンドゥ・ベンジャミン | 日本大学 | 2区 | 89 |
12 | エノック・オムワンバ | 山梨学院大学 | 2区 | 89 | |
12 | メクボ・ジョブ・モグス | 山梨学院大学 | 2区 | 82 | |
12 | オンベチェ・モカンバ | 山梨学院大学 | 2区 | 81 | |
12 | 尾田 賢典 | 関東学院大学 | 2区 | 79 | |
7 | 11 | 今井 正人 | 順天堂大学 | 5区 | 81 |
11 | 保科 光作 | 日本体育大学 | 2区 | 82 | |
11 | 宇賀地 強 | 駒澤大学 | 2区 | 85 | |
11 | ギタウ・ダニエル | 日本大学 | 2区 | 86 | |
11 | 鎧坂 哲哉 | 明治大学 | 2区 | 87 | |
11 | 出岐 雄大 | 青山学院大学 | 2区 | 87 | |
11 | オンディバ・コスマス | 山梨学院大学 | 3区 | 87 |
特徴的なのは、その大部分が「花の2区」と呼ばれる、各校のエースランナーが終結する最強区間で達成されていることです。
実力者揃いの区間でこれだけの「ごぼう抜き」が行われるのは、如何にその選手が突出した実力を有しているかの証明ともいえます。
そして、上記21人中、外国人選手が延べ11人と過半数を占めており、突出した実力の裏づけとなっています。
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最高記録は脅威の20人抜き!
箱根駅伝での「ごぼう抜き」最高記録は、2009年に開催された第85回大会の2区で脅威の20人抜きを達成した、当時日大3年だったケニア人留学生、ギタウ・ダニエル選手です。
ダニエル選手は、全出場校(23)で何と「ブービー」の22位で襷(たすき)を受けると、大きなストライドを活かした走りでチームを2位まで押し上げました。
同選手はその前年にも同じ2区で15人抜きを演じており、2年連続でのごぼう抜きを行うとともに、それまでの最多タイ記録(15人)を大幅に塗り替えました。
その他の印象的なごぼう抜きは
ダニエル選手の驚異的な記録の他にも、駅伝ファンの記憶に鮮烈に残るドラマを演じたランナーは多数存在します。
印象に残るごぼう抜きで注目された選手についてみていきます。
第85大会:村澤明伸選手(東海大学)
ダニエル選手の記録から2年後、やはり「花の2区」で日本人最多の17人抜きを達成したのが、当時東海大の2年生エース・村澤明伸選手です。
長野の名門・佐久長聖高校時代に全国高校駅伝で優勝し、注目を集めて東海大に進学すると、いきなり1年生で2区の10人抜きを演じました。
この勢いは続き、2年生となった翌年には、2区で最下位の20位でタスキを受けると、最後は17人をごぼう抜きし、東海大の往路3位に大きく貢献しました。
第81回大会:今井正人選手(順天堂大学)
上述のとおり、箱根駅伝でのごぼう抜きは圧倒的に2区が多いのですが、それ以外の区間で驚異的な記録を打ち立てたのが、第81回の2005年大会で「(初代)山の神」と称された、当時順天堂大2年の今井正人選手です。
今井選手は、箱根の難関である山上りの5区で驚異的な走りを見せました。
全体の15番目でたすきを受けると、颯爽(さっそう)と箱根の山を駆け上がり、11人をごぼう抜きして従来の記録を2分以上縮める区間新を達成し、チームを4位に押し上げました。
第85回大会:柏原竜二選手(東洋大学)
今井選手に続いて箱根の山登りで圧倒的な存在感を示したのが、東洋大のスーパールーキー、柏原竜二選手でした。
「新・山の神」の称号を得た柏原選手は、トップの大学と約5分の大差の9位でタスキを受けると、前を走る8人をごぼう抜きし、(当時)1時間17分18秒という驚異的な区間新を樹立し、出場67回目を迎えたチームを初の往路優勝に導きました。
ごぼう抜きの「個人通算記録」は
印象的なごぼう抜きのシーンをみてきましたが、個人での「通算」ごぼう抜き記録を挙げてみます。
それぞれ、大学在学中の3年間あるいは4年間にわたって素晴らしい走りを続け、歴史に残るごぼう抜きを達成しています。
No. | 走者 | 大学名 | 人数 | 内訳(各大会と人数) |
1 | ギタウ・ダニエル | 日本大学 | 50 | 83回4、84回15、85回20、86回11 |
2 | 村澤 明伸 | 東海大学 | 31 | 86回10、87回17、88回4 |
3 | メクボ・ジョブ・モグス | 山梨学院大学 | 26 | 82回12、83回5、84回6、85回3 |
今井 正人 | 順天堂大学 | 26 | 80回6、81回11、82回5、83回4 | |
5 | イェゴン・ヴィンセント | 東京国際大学 | 24 | 96回7、97回14、98回3 |
佐藤 悠基 | 東海大学 | 24 | 82回8、84回3、 85回13 |
まとめ
箱根駅伝における歴代のごぼう抜きランキングについて詳しくみてきました。
素晴らしい記録を残した名選手の数々が登場し、駅伝ファンは当時を振り返って様々な感慨を持たれていることでしょう。
年明け早々に行われる今回の大会でもまた凄いごぼう抜きのシーンが見られるのか、期待したいものです。
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