水中で行う球技といえば水球が有名。その他にもマイナーなところでは水中バスケットボールや水中バレーボールがあります。
とはいえ、これらの球技では体は水中にあっても、ボールが扱われるのはほとんど水面より上です。
ところが、完全に水中で行う球技も実は存在するのです。いったいどんなスポーツでしょうか。
ここでは過酷で楽しい水中の球技をご紹介します。
水中ホッケー
水中ホッケーは、その名の通り水中で行うホッケー。
鉛をプラスチックやゴムでコーティングしたパックを、木のスティックで奪い合います。重いパックはプールの底に沈むため、競技中はずっと素潜り状態です。潜水して息を止めている間しかプレーできないため、長時間息を止める能力が求められます。
この水中ホッケーは1954年にイギリスで生まれたスポーツ。急速に愛好者を増やしていて、2年に一度世界選手権も開かれています。
基本的なルールと特徴
水中マスク、シュノーケル、フィンを付けた6人が1チーム。長さ35㎝以内の木製のスティックを使って水底にあるパックを奪い合い、やはり水底にある相手ゴールにパックを入れ合います。
このゴールは世界の規定は幅3mですが、持ち運びや保管が難しいため、現在日本では普及を優先して幅1mのものを使用しています。
プールの広さは25m6コース程度。深さは2〜3.65mです。
この広さのプールでプレーするのはかなり過酷。特に正式な深さで競技をするにはかなり熟達しておく必要があるため、まずは半分程度の広さ、そして足がつく深さのプールで練習した方が良いと言われています。
またこのスポーツは仲間との連携が重要ですが、水中なので声かけができず、しかもマスクで視界が狭いため、敵味方の判別も難しいのが特徴。さらにプールの底なので、敵が頭上から攻撃してくることもあります。体力的にはかなりきついスポーツですが、エキサイティングで面白いと評判です。
水中ラグビー
水中ラグビーはラグビーとバスケットを合わせたような球技を水中で行うスポーツ。ルール的には水球にも似ていますが、ゴールのバスケットは水底にあり、ボールは浮き上がらず、水中でパスもできるように中に食塩水が入っています。
水中ラグビーが生まれたのは1961年のドイツ。ダイビングクラブのトレーニングメニューとして考案されましたが、スポーツとして発展。こちらも2年に一度、世界選手権が開かれています。
基本的なルールと特徴
水中ホッケーと同じように水中マスク、シュノーケル、フィンを付けた6人が1チーム。ポジションについて決まりはありませんが、一般的にオフェンス2名、ディフェンス2名、ゴールキーパー2名というフォーメーションでプレーします。
水中でボールを奪い合い、パスで繋いで相手ゴールに入れれば得点です。ボールを扱えるのは水中のみ。水の上でパスなどをしてはいけません。
プールの大きさは長さが12〜18mで、幅は8〜12m。かなり特殊な大きさのプールで、しかも深さは3.5〜5mと、非常に深くなっています。
水中でかなり激しくボールを奪い合う水中ラグビーは、かなりハードでエキサイティングなスポーツ。観客は水中の様子を全く見ることができないため、水中カメラの映像を大型モニターで観戦して盛り上がります。
ウォーターロックラグビー
名前は水中ラグビーに似ていますが、その名の通りロック(岩)を使うのが、ウォーターロックラグビー。水中で重い岩を抱え、ゴールに向かって走るスポーツです。
元になったのは、ハワイのウォーターパトロール(ライフガード)が行っていたロックトレーニング。これは単純に岩を抱えて水中を走るトレーニングですが、日本のライフガードがこれを導入したところ、生徒が岩を奪い合う遊びを始めました。
これはおもしろいというのでスポーツにしたのがウォーターロックラグビーなのです。
基本的なルールと特徴
ラグビーのように2チームに分かれ、相手陣地のゴールにトライを決めれば得点というのは、ほぼラグビーと同じ。ただし舞台となるのは海底で、ボールの代わりに使うのは、約30㎏の岩です。ゴール代わりに使われるのは側溝の蓋。この上に岩を置けば得点が入ります。
コートの距離は30m。試合は水深2〜3mのところで行います。
この競技は海で行うため、水の透明度が高いことが必須条件です。ところがディフェンスの選手が岩を取りにくるとかなり激しい奪い合いになるため、海底の砂が巻き上げられて視界が全く効かないことに。敵も味方もすぐに分からなくなってしまいます。
30㎏もの岩を持ち上げるのは地上ではほとんど不可能ですが、水中ではコツを覚えれば女性でも可能。岩の重みを利用して体勢を低くすれば、海底を駆け抜けることができます。
こちらもかなりエキサイトできるスポーツですが、ウォーターロックトレーニングにはもともと水中での自分の呼吸の限界を把握するという目的もありました。無理をしすぎずに余裕を持って息継ぎをする冷静さも必要です。
まとめ
水中で行う球技は日本ではまだまだマイナーですが、世界的にはかなり人気を集めているものもあります。
水中球技にはまだまだ可能性がありそう。体力的にはかなりハードですが、今後も新しい水中球技が誕生するかも知れません。
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