スポーツの習い事で最も人気の高い「水泳」。
代表的な泳法にはクロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライがありますが、この4つの泳法はどうやって生まれたのでしょうか?
ここでは水泳の歴史を紹介します。
水泳の歴史|①競技以前
スポーツとしての水泳が生まれる以前から、人は海産物を獲るために泳いでいました。この頃の泳ぎは、動物の泳ぎを模倣したもの。そうして最初に誕生したのが平泳ぎでした。
また人命救助の際には、片腕で人を抱えたままもう片方の腕を横にかき、カエル足で泳ぐ背泳ぎを行っていました。
その一方で長い間、水泳はスポーツと考えられていなかったため、古代オリンピックに水泳競技は存在しませんでした。
水泳の歴史|②水泳競技の誕生
水泳がスポーツとして発展したのは、19世紀のイギリス。最初の競泳大会は1837年に行われました。
この頃、平泳ぎから派生して新しい泳法が誕生します。それは横泳ぎ。横泳ぎは体を横に伸ばし、顔より下にある腕を前に伸ばしながら上の腕で水をかくという泳法。脚は前後に開いてあおる「あおり脚」になります。
日本古式泳法にもある横泳ぎは体力を使わず長く泳げる泳法。しかし競泳の世界では定着せず、短命に終わりました。
水泳の歴史|③自由形の変遷
水泳競技は1896年の第1回近代オリンピック(アテネ大会)でも採用されています。その当時の種目は100mと500m、1500mの「自由形」、さらに水兵が参加する100mの自由形のみ。
今でこそ自由形=クロールとなっていますが、その名の通り自由形は自由に泳げる種目。当時の自由形は実際には平泳ぎで泳ぐものでした。
ところがその後、より早い泳法が次々に登場します。
背泳ぎの誕生
アテネオリンピックの後、息継ぎをしなくても良く、平泳ぎより速い泳法が編み出されます。それは「背泳ぎ」。本来は救助法として誕生した背泳ぎがより速くなって競泳の世界を席巻します。
当時の背泳ぎは今のものとは少し違い、手はバタフライのように同時に動かし、脚は平泳ぎのような動き。それでも平泳ぎよりは速く泳げることから多くの選手がこの背泳ぎを自由形に採用しました。
ところがバシャバシャと水しぶきを立てるこの泳法を、紳士的ではないと思ったのが大会主催者。平泳ぎを守るため、1900年の第2回オリンピック(パリ大会)から背泳ぎを独立した種目としました。
ちなみに背泳ぎが現在の泳ぎ方になったきっかけは、1912年の第5回オリンピック(ストックホルム大会)。アメリカのハリー・ヘブナーという選手が背泳ぎの練習中にクロールを裏返した動きをしてみたところとても速かったため、大会で泳ぎ、金メダルを獲得したことから広まりました。
クロールの誕生
一方の自由形では、パリオリンピックの後に、再び平泳ぎを超える泳法が生まれました。それは「クロール」です。
クロールの元になったのは、左右交互に腕を回して水面の上にあげる、トラジオン・ストロークと呼ばれる腕の使い方。これにバタ足のキックが組み合わされ、泳ぎながらの息継ぎ法も磨かれてクロールが、完成していきました。
平泳ぎよりも速いクロールはすぐに自由形の主流に。伝統ある平泳ぎの消滅を危惧する主催者は、1904年の第3回オリンピック(セントルイス大会)から今度は平泳ぎを独立させました。それ以降、自由形はクロールとなったのです。
バタフライの誕生
独立した種目となった平泳ぎですが、その定義は、「うつ伏せで泳ぐこと」と「左右の手足の動きが対象であること」でした。
実はこの定義は「バタフライ」にも当てはまるもの。1928年の第9回オリンピック(アムステルダム大会)でドイツのエーリッヒ・ラーデマッヒェル選手が現在のバタフライに近い動きを取り入れました。
この泳法はバタフライ式平泳ぎという名前に。1952年の第15回オリンピック(ヘルシンキ大会)の頃には平泳ぎのほとんどの選手がバタフライ式平泳ぎとなっています。
またこの頃、日本の長沢次郎選手が痛めた膝をかばうためにドルフィンキックを考案。これが世界中に広まりました。
その結果、平泳ぎはまたもや消滅の危機に。伝統ある平泳ぎを残すため、1956年の第16回オリンピック(メルボルン大会)から、バタフライが独立した種目となったのです。
クロールを超える泳法は?
100年を超える間、自由形といえばクロールという状態が続いています。
では今後もクロールを超える泳法は誕生しないのでしょうか?
実はクロールより速い泳法が、すでにオリンピックで記録を出しているのです。
それは「ドルフィンクロール」。クロールとバタフライを合体させた泳ぎ方で、手はクロールのトラジオン・ストローク、足はバタフライのドルフィンキックとなります。これを実践したのはオーストラリアのマイケル・クリム選手。2000年の第27回オリンピック(シドニー大会)の男子4×100mリレーに出場した彼は、最後の数mでドルフィンクロールを披露。世界記録を更新しました。
しかしこのドルフィンクロールは自由形の主流とはなっていません。理由はクロールと比べて体力の消耗が激しいため。今のところ最初から最後までこれで泳ぎ切るのは難しく、トータルではクロールの方が優位となっています。
まとめ
水泳の歴史は、平泳ぎを超える泳法が繰り返し編み出される歴史でもありました。
今はクロールが最速とされていますが、自由形という種目がある限り、今後も新しい泳法が生まれ、水泳の歴史は書き換えられていくかもしれません。
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