タイ人の格闘技選手はムエタイがバックボ-ンであることが多いのですが、最近では日本人でも増えています。「立ち技世界最強」と冠されるように、いまだにその名前の与える影響力が大きいのがムエタイです。
ただ、ムエタイとは何か、キックボクシングとの違いは何かなど、色々分からない点もあるのではないでしょうか。また、ムエタイのトップ選手は複数存在しています。なぜでしょうか。
それらの疑問からゆっくり解説させて頂きます。
ムエタイとは?
ムエタイとは「タイ式ボクシング」と呼ばれ、両手、両肘、両脚、両膝の8ヶ所を用いて相手と戦う格闘技です。歴史は古く13世紀タイ族初めての王朝スコータイ朝でも披露されたといわれています。
タイの国技であり、恩師への尊敬、両親への感謝と神への勝利を願うワイクルーや民族音楽の演奏が続く中で試合をするなど、競技外でも様々な点で特徴的です。
現在ではオリンピックの正式種目を目指していると言われていますが、1990年代までは女性がリングに上がることすら禁止されていました。
その後アマチュアの女子ムエタイが解禁され、ムエタイは次第に国際化していき、近年ではタイへ修行する外国人選手も増えています。タイ人以外もムエタイ王座を獲得するなど、交流はますます活発になっています。
ムエタイは体重別階級制の競技
ムエタイは体重別に分けられた階級制を採用した競技です。同じ立ち技競技であるボクシングと同じく、体重制限により公平さが保たれています。
ボクシングでも階級別にチャンピオンがいるように、ムエタイでも階級別のチャンピオンがいるのです。プロムエタイでは19階級(47.727 kgから94.801kg以上)、アマチュアムエタイでは21階級(38kgから91kg以上)あります。
ただしプロムエタイ団体のラムジャダムナン・スタジアムとルンビニー・スタジアムは最重量級がミドル級(72.575kg)で13階級です。それはタイには小柄な人が多く、重量級の選手が集まらなかったという経緯があります。
主要なプロムエタイ団体は6つ
チャンピオンになるためには世界タイトル戦に勝たなければなりません。世界タイトル戦とは「世界王者」を賭けた戦いで、その戦いは団体や連盟などの認定された試合です。
その認定自体は団体の権威や歴史、大きさなどに依存する部分があり、プロムエタイ団体として主要な団体は以下となります。
・ラムジャダムナン・スタジアム
・ルンビニー・スタジアム
・世界ムエタイ評議会(WMC)
・世界プロムエタイ連盟(WPMF)
・世界ボクシング評議会ムエタイ(WBC)
・国際ボクシング連盟ムエタイ(IBF)
同じ国技でも日本の国技相撲の場合はひとつの協会で年6場所などを仕切り、力士に番付し、場所内で強さを競います。ムエタイは相撲でいうところの協会がない状態です。
「場所」ごとにそれぞれ番付があり、それを仕切る団体がある、そのような構造に近いかもしれません。最大の特徴は団体ごとの色を出しやすくなることです。また、複数団体があることによって同階級の統一戦や統一王者が出しやすくもなります。
この6団体のいずれかで世界タイトルに絡むような戦いができれば、ムエタイのトップ選手の仲間入りが可能です。
ムエタイとキックボクシングとの違い
ムエタイは「キックボクシングのひとつ」と混同されがちですが、実は間違いで、成り立ちが異なります。
キックボクシングはムエタイ・空手・ボクシングを源流として持っている日本発祥の競技で、約60年と歴史が浅い競技です。休憩時間やポイントシステムなどの違いはあるものの、ムエタイを源流としているため、似ている点が多くあります。
キックボクシングにも様々な国で団体ごとのルールがあるものの、特に日本のキックボクシングはムエタイルールと似ているといわれており、そうした背景がタイのプロムエタイ団体からの日本キックボクシングへ参戦、日本からのプロムエタイ参戦を後押ししているのかもしれません。
キックボクシングからでもムエタイトップ選手になれる
前述したようにキックボクシングはムエタイ・空手・ボクシングを源流に持つ競技です。近くのムエタイ専門のジムを探すのもいいですが、キックボクシングジムを探すのも方法のひとつです。
キックボクシングとムエタイ、キックボクシングと空手の境界線は曖昧ですが、ムエタイと空手は明確に異なります。そのためキックボクシングジムでも空手寄りのジムなのか、ムエタイ寄りのジムなのか、検討は必要でしょう。
またジムで力をつけ、タイへ武者修行することも一つの策です。ジムにタイとのコネクションがあるところの方がより良いかもしれません。
現地で滞在できるなら、ジムや現地のタイ人の仲間と交流を深めるためにも予めタイ語を学ぶこともトップ選手になる近道です。
まとめ
「キックボクシングが日本発祥の競技でない」という誤解があるとムエタイとキックボクシングの接点は遠かったかもしれません。しかし源流に同じものがあれば、キックボクシングからでもムエタイが近いものだと分かります。
近年は活躍場をタイへ見出す選手も増え、その可能性は高まるばかりです。これから日本でムエタイのトップ選手を目指すにしても、参考になる日本人選手や情報もますます揃ってくるのではないでしょうか。
引き続き、注目していきたいところです。
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