ボクシングや柔道と同じように、レスリング(アマチュアレスリング)にも体重別の階級があります。
体重別階級があることで体格差による不公平をなくすことができるのですが、階級がよく改定されることもあり、見ていて混乱することも。
しかも一般的な大会とオリンピックでは階級が違うため、より複雑に感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
今回は、レスリングの階級について解説。
オリンピックなどで活躍した選手がどの階級だったかもご紹介します。
【レスリング】階級とは
レスリングには2つの種目があります。
それはグレコローマンスタイルとフリースタイル。
グレコローマンスタイルは上半身のみを攻撃と防御に使える種目で、男子だけが実施しています。
フリースタイルはその名の通り、全身どこでも使って攻撃や防御ができる種目。
男女両方で実施されています。
そしてこのグレコローマンスタイルとフリースタイル男女で、それぞれ体重の区分が違っているのです。
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階級の意味
ボクシングの階級はヘビー級などと表記され、それぞれの階級に収まる範囲が決められています。
一方のレスリングの階級は97kg級や65kg級などと表記。
これは「その重さ以下の人ならエントリーできる」という意味になります。
確実に不利になりますが上の階級にも参加可能で、極端にいえば97kg級に体重50kgの選手が参加してもよいのです。
注意が必要なのは、柔道などにはある「〜超級」がないこと。
つまり最重量クラスの体重制限を超えることはできないのです。
また近年ではほとんど聞くことはありませんが、ヘビー級やライト級など、階級名で呼ぶこともあり、かつては盛んに使われていました。
男子グレコローマンスタイルの階級
グレコローマンスタイルの小さな大会や部活動での階級は10階級に分けられています。
・55kg級
・60kg級
・63kg級
・67kg級
・72kg級
・77kg級
・82kg級
・87kg級
・97kg級
・130kg級
オリンピックでは階級が減り、以下の6階級になります。
・60kg級
・67kg級
・77kg級
・87kg級
・97kg級
・130kg級
男子フリースタイルの階級
男子フリースタイルも小さな大会や部活動では10階級。
グレコローマンスタイルとは体重が変わります。
特に最重量級の場合、体重の制限が5kg減るため注意が必要です。
・57kg級
・61kg級
・65kg級
・70kg級
・74kg級
・79kg級
・86kg級
・92kg級
・97kg級
・125kg級
フリースタイルもオリンピックでは階級が減り、以下の6階級になります。
・57kg級
・65kg級
・74kg級
・86kg級
・97kg級
・125kg級
女子フリースタイルの階級
フリースタイルしかない女子。
こちらも小さな大会や部活動では10階級ですが、男子と比較して最重量級の制限がかなり低いのが特徴。
それに合わせて各階級の体重がより細かく分けられています。
・50kg級
・53kg級
・55kg級
・57kg級
・59kg級
・62kg級
・65kg級
・68kg級
・72kg級
・76kg級
オリンピックでは以下の6階級になります。
・50kg級
・53kg級
・57kg級
・62kg級
・68kg級
・76kg級
オリンピックの階級
ここまでで分かるように、小さな大会などでは10階級であるのに対してオリンピックは6階級。
多くのクラスで2つの階級が合わせられることになります。
そのためオリンピックを見据えている選手は、他の大会でもオリンピックの体重制限に合わせた階級に調整してエントリーしているのです。
【レスリング】階級 有名選手の階級
それではレスリングで活躍した選手は、それぞれどの階級だったのでしょうか。
まずはおなじみの女子選手の階級からご紹介します。
吉田沙保里
「霊長類最強女子」の異名を持つ吉田沙保里選手は、オリンピック3連覇、世界大会16連覇、個人戦206連勝を記録し、国民栄誉賞も受賞した選手。
彼女は55kg級の選手でしたが、2016年のリオデジャネイロオリンピックから体重区分が改定されたため、その決定以降は53kg級に変更しました。
伊調馨
女子個人として世界初のオリンピック4連覇を達成し、国民栄誉賞を受賞している伊調馨選手。
彼女は階級が比較的大きく変わった選手です。
2013年の世界選手権までは63kg級で活躍。
その年の全日本選手権からは58kg級に移り、最後のオリンピックとなったリオ大会では58kg級で金メダルを獲得しています。
彼女のベスト体重は60kg。
選手は計量後に体重を増やし、63kg級の選手は試合では68kgほどで出場してくるため、むしろ増量に苦しんだそうです。
川井姉妹
オリンピック2020東京大会で揃って金メダルに輝いた川井梨紗子・友香子姉妹。
姉の川井梨紗子選手は57kg級で、妹の友香子選手は62kg級です。
梨紗子選手は2016年のリオ大会でも金メダルを獲得。
このとき梨紗子選手は同じ階級の伊調馨選手を避けるよう周囲に勧められたこともあって、2階級上の62kg級で代表選考試合に臨んでいます。
その結果、全日本選手権の決勝では、本来階級が違うはずの妹・友香子選手と対戦。
この試合に勝ってオリンピック代表の座を手にしました。
このように巨大なライバルの存在は選手の階級選択にも影響を与えることになるのです。
金メダリストの階級一覧
こちらが過去の金メダリストの階級一覧です。
日本人は比較的軽量な階級で活躍していることが分かります。
男子グレコローマンスタイル | ||
年度 | 氏名 | 階級 |
1964 | 市口政光 | バンタム級(57kg級) |
花原勉 | フライ級(52kg級) | |
1968 | 宗村宗二 | ライト級(70kg級) |
1984 | 宮原厚次 | 52kg級 |
男子フリースタイル | ||
年度 | 氏名 | 階級 |
1952 | 石井庄八 | バンタム級(57kg級) |
1956 | 笹原正三 | フェザー級(62kg級) |
池田三男 | ウェルター級(73kg級) | |
1964 | 吉田義勝 | フライ級(52kg級) |
上武洋次郎 | バンタム級(57kg級) | |
渡辺長武 | フェザー級(63kg級) | |
1968 | 中田茂男 | フライ級(52kg級) |
上武洋次郎 | バンタム級(57kg級) | |
金子正明 | フェザー級(63kg級) | |
1972 | 加藤喜代美 | 52kg級 |
柳田英明 | 57kg級 | |
1976 | 高田裕司 | 52kg級 |
伊達治一郎 | 74kg級 | |
1984 | 富山英明 | 57kg級 |
1988 | 小林孝至 | 48kg級 |
佐藤満 | 52kg級 | |
2012 | 米満達弘 | 66kg級 |
2021 | 乙黒拓斗 | 65kg級 |
女子フリースタイル | ||
年度 | 氏名 | 階級 |
2004 | 吉田沙保里 | 55kg級 |
伊調馨 | 63kg級 | |
2008 | 吉田沙保里 | 55kg級 |
伊調馨 | 63kg級 | |
2012 | 小原日登美 | 48kg級 |
吉田沙保里 | 55kg級 | |
伊調馨 | 63kg級 | |
2016 | 登坂絵莉 | 48kg級 |
伊調馨 | 58kg級 | |
川井梨紗子 | 63kg級 | |
土性沙羅 | 69kg級 | |
2021 | 須崎優衣 | 50kg級 |
向田真優 | 53kg級 | |
川井梨紗子 | 57kg級 | |
川井友香子 | 62kg級 |
まとめ
レスリングをよく知らない素人の間でよく言われた、吉田沙保里選手と伊調馨選手はどっちが強い?という問題。
実際に同じ階級で戦っていた頃には吉田選手の方が勝っていたそうですが、その後はもし対戦すれば体重が10kg近く重い伊調選手の方が圧倒的に有利だっただろうと言われています。
レスリングでは体重差の影響はとても大きなもの。
選手たちは制限ギリギリまで体重を増やすか、または下のクラスまで落とすか、ライバル選手の動向も見ながら難しい選択をすることになるのです。
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