東京2020オリンピックで初めて実施された柔道の男女混合団体戦では、大本命とされた日本がフランスに敗れて銀メダルとなり、関係者の間では少なからず衝撃が走りました。
この団体戦では男子・女子ともそれぞれ3人ずつ、合計6人で争われましたが、柔道や剣道などのいわゆる「武道」と呼ばれるスポーツの団体戦では、メンバー構成や順番、また呼称と役割が設定されています。
今回はこれらの詳細について解説していきます。
武道における団体戦とは
柔道や剣道など、主に「武道」における団体戦では、基本的に対戦チームがそれぞれ5人の選手を登場させ、勝敗を賭けて対決します。
上述したように、2020東京オリンピックの6人制や、その他の人数によるものもありますが、あくまで5人での戦いとなります。
対戦方法は、大きく分けて「点取り戦」と「勝ち抜き戦」があり、前者は5人それぞれの順番ごとに1人ずつ戦い、合計のポイントによって勝敗を決するもので、後者は文字通り、対戦して勝った選手が負けるまで次々と相手選手と戦い、勝ち残った側が勝利となります。
団体戦での順番と名称
基本的に5人で戦う柔道や剣道の団体戦では、5人それぞれに与えられた順番と呼称、そして大切な役割があります。
各チームは、チームの戦力や特徴などを総合的に分析し、勝利を目指して最適な布陣を整え、試合に臨んでいきます。
5人それぞれの順番と名称は、最初に登場する選手から数えて先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の5つです。各自に与えられた大切な役割について、「点取り戦」の場合をベースに解説します。
先鋒
文字通り、先陣を切って登場するのが先鋒です。先鋒が勝てば、相手にいきなりのプレッシャーを与え、自軍には大きな勇気をもたらします。
そのため、まずは真一文字に相手に向かって突進し、気合とスピードで相手を圧倒する、瞬発力と勇気を持った選手に向いています。
体格的には小柄であっても、高い身体能力と攻撃性に優れた資質が求められ、個人戦でも上位に食い込む実力者が配置されます。
次鋒
先鋒に続いて登場するのが次鋒です。先鋒が勝った場合は、ここで負けても1勝1敗のタイとなり、まだチームに大きなダメージはありません。一方、先鋒が負けていれば、ここで連敗するといきなりチームは崖っぷちとなります。
先鋒が勝利するのを前提とした場合、5人の中では一番技量に劣っていても、戦略的に務まるポジションといえます。
チームとしては、極論すれば「技量」よりも団体戦における「精神的安定感」に優れた選手を指名する場合があります。
中堅
大将に負けず、最も重要な役割といえるのがこの中堅です。先鋒と次鋒が続けて敗退した場合、ここで負けたら一気に勝敗が決してしまいます。
そのため、最悪の事態に備え、チームの中で最強の選手をここに充てる戦略も多く取られます。
個人戦では優勝を含めて常に上位を争う、チーム1.2の実力者でこの役割を担い、精神的にもタフな資質を持つ選手が主に配置されます。
副将
前の3人が戦い、両チームとも緊張感はほぐれ、最終勝利へ向けて冷静に状況を分析しながら戦いを進めている状況です。まだ勝負が決していない場合、1勝2負か2勝1負で回ってくるポジションです。
ここでも、チームは2勝1負での状況を想定し、「負けてもタイ」という中で、次鋒と並んでチームでの技量が下位でも、チームの状況に応じて試合に臨める選手を充てる場合が多い役割です。
大将
いよいよ、団体戦の最終勝敗を決する「最後の砦」です。前の4人が2勝2負で来た場合は、まさに頂上決戦の立役者となります。このため、個人戦優勝相当の技量を備え、チーム最強の選手が担う役割です。
その一方、前の4人中3人が負けてしまっていれば、大将戦は「消化試合」です。このような無駄な戦いを避けるためには、やはり先鋒と中堅の重要性が改めて浮き彫りとなります。
なお、団体戦が「点取り戦」ではなく「勝ち抜き戦」の場合、大将の役割は絶大なものとなります。
その他人数の場合
上述のとおり、2020東京オリンピックの男女混合団体戦では男性3人、女性3人の合計6人で争われましたが、その他にも7人制であったり、更に大人数で争われる場合もあります。こうした際には、上記5人に加えた呼称と役割が与えられます。
例えば7人制の場合は次のとおりです。学生選手権などで適用される場合があります。
先鋒・次鋒・「五将」・中堅・「三将」・副将・大将
各自の役割は、5人制に準じて与えられるものと理解されます。ここでも「先陣と真ん中、そして最後の砦」が戦力配置の基本となります。
まとめ
武道における団体戦に登場する選手それぞれの順番・呼称と役割について詳しく解説しました。
団体戦のルールによって、それぞれの出場選手が担うべき役割は異なりますが、各チームとも限られた自軍の戦力を最大限に発揮するため、最適な選手配置によって勝利を目指して戦います。
この記事がチーム編成上の参考となれば幸いです。
【関連記事はこちら】⇩
・剣道の歴史・競技人口・ルール・大会【スポーツ辞典】
・柔道の歴史・競技人口・ルール・大会【スポーツ辞典】