平和の象徴であり、二年に一度私達を熱狂させてくれる夢の祭典、オリンピック。
2020東京オリンピックでは、日本はアメリカと中国に次いで多数のメダルを獲得するに至りました。
その次の冬、2022の北京オリンピックでも日本人選手達は素晴らしい活躍を見せ、カーリングやスピードスケートなど様々な競技でメダルを獲得し、見ている人々に多くの感動を齎(もたら)してくれたことでしょう。
そんなオリンピックですが、毎回競技や種目は大きく異なっています。同じ夏のオリンピックであっても、その年によって行われる競技と行われない競技があります。
特に、「今年はこのスポーツが行われたけれど、次のオリンピックではなくなってしまっている、今年で最後になってしまって残念だ」と選手や関係者が語っているシーンを見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
世界には数多くのスポーツがありますが、人気のスポーツだから必ずしもオリンピックに採用されているとは限りません。では、オリンピックで行われる競技というものは、一体どういった形で決まっているのでしょう?新しく増える種目は、どういう基準で決められているのでしょうか?
今回は、新競技、新種目が登録される基準や、近年増えた新しい競技についてご紹介していきます。
オリンピックに登録されるのはどんな競技?
そもそも、オリンピックに採用されるのはどのような競技なのでしょうか。実は夏のオリンピックと冬のオリンピックでは異なる基準で競技が選定されています。というのも、オリンピック憲章では慣習を含め以下のように定めているからです。
即ち夏のオリンピックの場合は男子では4大陸75カ国以上、女子では3大陸40カ国以上で広く行われている競技のみ。冬のオリンピックの場合は3大陸25カ国以上で広く行われている競技のみとのこと。
冬のオリンピックの方が、若干基準が緩くなっているのです。ただし、これらの基準を満たしているにも関わらず、諸事情により採用されていない競技もあります。
例えばラグビーは過去検討されたものの、国際ラグビー評議会(IRB)が所属協会主義を取ることの相違が大きい上、体力的消耗が激しくオリンピック開催期間の16日以内では何試合も実施できないという考えから採用が見送られました。
また、“本質的に動作が機械的な推進力に依存する競技は受け入れない”と定められているため、基本的にモータースポーツは採用されることがありません。
ただし、頭脳スポーツ(マインドスポーツ)についてはこれに抵触しないとされています。その証拠に、IOCの承認競技にはチェスやコントラクトブリッジが含まれています。
オリンピックに登録される新種目とは
上記ではオリンピックの“競技”の採用基準について説明しましたが、オリンピックの“種目”にはさらに細かな基準があります。ちなみに競技というのは大きな括りでのスポーツのことを指しています。対して種目はその中の細かな種類であり、それぞれが順位付けできるものを言います。
水泳ならば、競泳、水球、飛び込みなどが種目ということになります。
種目の選定基準は以下の通りとなります。
①最低2回は、世界大会、大陸選手権で実施されていること
②種目の実施許可が4年前までに出されていること(延長はできない)
③男性は最低50か国3大陸、女性は最低35か国3大陸で実施されていること
④しっかりと国際的に認知された種目であること
の4つを満たしている必要があります。
その他、施設の問題なども選定条件になるため、例えば競技を行うための施設の確保が難しかったり、高額であったりする場合は採用されません。
人気スポーツである野球がオリンピックでの実施困難と言われる理由はそこにあるとされています。もちろん、その環境は開催国によって異なります。
オリンピックの新競技、新種目が採用されるためには、それらの厳しい基準と審査をクリアする必要があるのです。
最近増えたオリンピックの新競技、新種目
2020東京オリンピックでは、非常に多くの競技、種目が採用されました。そのうちの一つが、日本の伝統的競技である空手です。空手は“組手”と“形”の2種目で行われました。組手は一対一で戦う種目です。
縦横8mのフィールド内で行われ、打ちや蹴り、突きといった攻撃技をくりだして相手選手にヒットさせることで、ポイントを獲得できます。形は一人ずつ行う種目となります。空想上の敵を相手に攻撃と防御を行う演武であり、それを審判員が採点するのです。
ただし、一度見せた技は同じ試合で試合不可となるため、いくつもの技を練習しておく必要があります。
他にもスケートボードが新競技として登録され、日本は空前のメダルラッシュを記録しました。複雑なコースで技を繰り出す“パーク”では四十住さくら選手が金メダルを獲得し、壁や坂道、階段や手すりといった町並みを再現したコースで行われる“ストリート”では堀米雄斗選手らが王者に輝いています。
他にも“ボルダリング”、“リード”、“スピード”の三種目が登録されたスポーツクライミング。ダイナミックさやスピード、独自性が採点基準となるサーフィンが新しい競技として採用されることとなりました。
過去には存在していたのに消えた、不思議なオリンピック競技たち
そんなオリンピックには、過去に存在していたのになくなった不思議な競技がいくつもあります。
例えば、鳩射撃。これは1900年のパリオリンピックでのみ開催された競技でした。動物愛護の観点で見ても現在ではありえないとされる競技の一つです。
このオリンピックでベルギーのレオン・デ・ルンデンが21羽の鳩を撃ち落として優勝しましたが、それ以降のオリンピックでは標的が鳩からクレーに変更となり、ルンデンは鳩射撃でオリンピックを連覇することはできませんでした。
運動会の競技としておなじみ、綱引きがオリンピック競技として採用されたこともありました。1900年のパリオリンピックから1920年のアントワープオリンピックまで、合計5回行われています。
この綱引きは8人のチームで行います。5分間のうちに、相手チームを中央の線から6フィート(約1.8メートル)引っ張れば勝ちというルールでした。もし制限時間が過ぎて勝負がつかない場合は、引っ張ってリードしている方が勝ちとなったようです。
クロッケーという競技が採用された年もあります。これもまた1900年のパリオリンピックで一度だけ行われたスポーツで、日本でいうところのゲートボールに近い競技だったとされています。
このオリンピックでは、開催国のフランスがクロッケーの4つの部門で金メダルを獲得しましたが、以降のオリンピック種目からは外されてしまいました。理由は、観客が1人しかいなかったことだそうです。
実はこんな競技も?オリンピックに働きかけられている意外な競技
こうしている間にも生まれている、数多くのスポーツたち。その競技の中には、いずれオリンピックの採用種目にしたいと考えている人も少なくありません。
頭脳のスポーツであるeスポーツも、いずれオリンピックの正式種目にという動きがあります。いずれは私達がよく知る人気ゲームの数々が、オリンピック種目として全世界で戦われる日が来るかもしれません。
また、意外な競技をオリンピック種目にしようと働きかけた人もいます。それが、世界で最も売れたトレーディングカードゲームだというギネス記録を持っている“遊☆戯☆王トレーディングカードゲーム(遊戯王TCG)”です。
このカードゲームは、かつて日本の週刊少年ジャンプで連載された高橋和樹氏原作の漫画“遊戯王”を元にしたゲームですが、その美しいカードのビジュアルと幅広い戦略性は日本のみならず世界中に絶大な人気を誇っています。
このカードゲームをオリンピックの正式種目にしようと嘆願書を出したのも日本人ではなく、カナダ人YouTuberのXiran Jay Zhao氏でした。
同氏によると、「カードをプレイするための運動神経、カードをドローする際の手先の器用さ、そして長時間のデュエルに耐えうる持久力が必要であり、以上のことから正真正銘のスポーツとしてオリンピックの公式種目に採用するべき」とのこと。
実現するかはわかりませんが、未来のどこかではカードゲームのような、今まで予想もしていなかった競技がオリンピック種目になる日がやってくるのかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。誕生し続けるニュースポーツとともに、オリンピックに採用される競技、種目の数も増え続けています。
今はまだマイナースポーツとされている競技や、そもそもスポーツだと認識されていなかった遊びなどが、どこかの未来ではオリンピック種目として大観衆の元行われるようになっているかもしれません。
そんな未来に想いを馳せてみるのもまた、きっとオリンピックの楽しみ方の一つなのでしょう。
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