秋になるとプロ野球の世界で聞かれるようになる「戦力外通告」。
悲しい響きのこの言葉には、正確にはどのような意味があるのでしょうか。
そして戦力外通告を受けた選手には、その後どのような選択肢が残っているのでしょうか。
今回は、プロ野球の戦力外通告について調査しました。
【プロ野球】戦力外通告とは
戦力外通告は、プロ野球の球団が「チームの戦力構想から外れている」と所属選手に通告すること。
通告された選手にとっては即解雇ということではなく、「解雇の予告」となります。
なぜ戦力構想が必要なのかというと、プロ野球の支配下登録選手は1球団原則70人と枠が決まっているから。
何人でも雇い続けられるなら二軍で調整するという選択肢もありますが、そうはいかないため、来季のドラフト入団を見越して戦力外通告をする必要があるのです。
戦力外通告が行われる時期
戦力外通告は、第1次通告期間と第2次通告期間の2回に分けて行われます。
第1次通告期間は原則として10月1日から、セ・パ両リーグのレギュラーシーズン終了の翌日まで。
第2次通告期間はクライマックスシリーズ全日程終了の翌日から、日本シリーズ終了の翌日まで。
ただし日本シリーズに出場したチームは日本シリーズ終了の5日後までとなります。
この時期に戦力外通告が行われる理由は、球団と選手の契約期間が2月1日から11月30日までと定まっているから。
10月下旬にドラフト会議が行われ、新しい選手が入団するため、契約切れまでに選手に戦力外であることを予告する必要があるのです。
いきなり解雇するわけではないこの制度は、選手のためになるものだとも言えます。
【プロ野球】戦力外通告を受けた選手の選択肢① 自由契約
戦力外通告は球団が行う予告。
それに対して選手は自分の意思を示すことができます。
選手が現役を続けたい場合の選択肢が自由契約です。
自由契約後にもさまざまな道が待っています。
自由契約とは
自由契約は選手が宣言すれば即できるものではありません。
選手の意思を確認した球団がNPB(日本野球機構)に事務手続きを行ないます。
その上で球団は11月30日に「次年度契約保留選手名簿」を作成。
これは契約を保留する(契約しない)選手という意味ではなく、球団が今年度の支配下選手のうち次年度も選手契約締結の権利を保留する選手の一覧という意味で、来シーズンも引き続き選手契約を結ぶ予定の選手名簿です。
「次年度契約保留選手名簿」に名前がなく、現役続行を希望する選手は、12月最初の平日に名簿が公表された段階で自由契約選手として公示されます。
自由契約になった選手はこの時点で自由に移籍球団を探すことが可能に。
実績や実力がある選手は他球団からのオファーを受けて移籍することもあります。
育成選手
比較的若い選手は、育成選手として球団と再契約することがあります。
育成選手は支配下登録選手の70人からは外れた枠の選手。
出場できるのは2軍の試合のみで、年棒の下限は支配下登録選手の440万円から240万円に下がってしまいます。
ただしここで活躍すれば、7月末までに再び支配下登録されることもあります。
合同トライアウト
自由契約となった選手の多くは球団の秋季キャンプに参加しながら、12月に行われる合同トライアウトを目指します。
合同トライアウトは12球団の首脳陣やスカウトが視察に来る入団テスト。
ここで目に留まればオファーを受ける可能性があり、事実上プロ野球に残る最後の手段となります。
中にはオリックスを戦力外になりトライアウトで横浜DeNAに入団した中村紀洋選手など、再度大活躍した選手もいますが、現実にはとても狭き門です。
独立リーグ
自由契約選手になると独立リーグからのオファーを受けることもあります。
独立リーグはNPBに比べれば年俸はかなり低くなってしまうのが実情。
しかしNPBへの復帰を目指して独立リーグに入る選手もいます。
社会人野球
独立リーグと同じように社会人野球(実業団)のチームからオファーを受けることも。
この社会人野球は、実は選手やその家族にとっての意味合いは独立リーグとは大きく異なります。
なぜならば実業団に入るということは、その企業の社員になることだから。
社会人野球を引退しても会社に勤め続けることができ、給料も他の社員と同等になるため、将来の不安が減るのです。
【プロ野球】戦力外通告を受けた選手の選択肢② 引退
現役を続ける意思がない選手は、戦力外通告を受けて契約が切れた時点で引退となります。
そこで問題となるのが引退後の人生。
引退した選手の約半数は球団職員として球団に残ることを選んでいます。
その仕事は、バッティングピッチャー、ブルペンキャッチャー、スカウト、トレーナー、スコアラーなど野球の現場に近い仕事から、用具担当や広報の仕事までさまざま。
しかし球団職員の枠には限りがあり、翌年に引退した選手が職員になれば、枠を開ける必要もあるのが実情です。
そこでプロ野球選手の労働組合のような組織である「日本プロ野球選手会」では、選手のセカンドキャリアについてのサポートも行っています。
まとめ
自由契約を選ぶか引退を選ぶか、いずれにしても野球一筋に打ち込んでプロになった選手にとって「戦力外通告」はとても厳しい言葉です。
しかしこれはプロのスポーツ選手にとっていつかは訪れる道。
そのとき選手がどのような選択をするにせよ、スポーツファンである私たちは熱い声援を贈りたいものです。
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