スノーボードの競技は大きく分けると、スピードを競う「アルペン種目」と、エアの高さや技の難易度を競う「フリースタイル種目」があります。
そしてフリースタイルでは「スリーシックスティ」や「ファイブフォ-ティ」、「メランコリー」などの名前を聞くことがあるはず。
これらはいったいどういう意味なのでしょうか?
今回は、スノーボードの呪文のような技の解読法を解説。
難易度の高い技や得点の仕組みについてもご紹介します。
【スノーボード】技の名前
スノーボードのフリースタイル種目には、ハーフパイプ、ビッグエア、スロープスタイルがあります。
スロープスタイルにはジブと呼ばれるレールやボックスなどの障害物があり、その上をスライドさせる技がありますが、それ以外の技はほとんどがジャンプする技。
ビッグエアはもちろん、ハーフパイプでも、高く飛んで回転する技を主に披露することになります。
そこでまずは、スノーボードのフリースタイルに共通する技の名前を解説。
基本を覚えれば、様々な種目で技の意味が分かるはずです。
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回転数
複雑化しているフリースタイル種目の技(トリック)。
でもその基本は回転数です。
フィギュアスケートでは「3回転サルコウ」などと言いますが、スノーボードでは回転を角度で表現。その数字を以下のように呼んでいます。
1回転:360(スリーシックスティ)
1回転半:540(ファイブフォーティ)
2回転:720(セブントゥエンティ)
2回転半:900(ナインハンドレッド)
3回転:1080(テンエイティ)
3回転半:1260(トゥエルブシックスティ)
4回転:1440(フォーティーンフォーティ)
4回転半:1620(シックスティーントゥエンティ)
5回転:1800(エイティーンハンドレッド)
5回転半:1980(ナインティーンエイティ)
回転方向
次に、回転数と合わせて言うのが回転方向です。
進行方向に対して腹側に回せば「フロントサイドスピン」、進行方向に対して背中側に回せば「バックサイドスピン」。
これを合わせて、例えば進行方向に対して背中側に3回転すると、「バックサイドテンエイティ」と表現します。
スタイルによる違い
そしてスノーボードは選手によって左足が前のレギュラー、右足が前のグーフィーという2つのスタンスがあり、それぞれに得意なスタイルがあります。
得意なスタイルはノーマルスタンス、反対のスタンスはスイッチスタンスという名前。
技のスタートや着地がスイッチスタンスだと難易度はアップします。
これも合わせて、例えば「スイッチスタンスのフロントサイドナインハンドレッド」と言うのです。
フリップとコーク
まだこれで終わりではありません。
ここまで解説したのは、横方向の回転。
縦方向の回転が含まれると「フリップ」が加わり、前方宙返りはフロントフリップ、後方宙返りはバックフリップ、側宙はアンダーフリップと呼ばれます。
一方、斜めの回転が加わるのが、「コーク」。
斜めの回転数によって、1回転なら「コーク」、2回転なら「ダブルコーク」、3回転なら「トリプルコーク」、4回転なら「クワッドコーク」となります。
スノーボードでは縦にも横にも回転するとこれらの名前も加わっていくのです。
有名な技
北京オリンピックでも話題になった平野歩夢選手のハーフパイプの大技は「フロントサイドトリプルコークフォーティーンフォーティ」。
舌を噛みそうな名前ですが、ここまでを読めば理解できるのではないでしょうか。
前向きに踏み切り、斜めに3回転しながら横方向に4回転するという技です。
同じ北京オリンピックのビッグエアで岩渕麗楽選手が挑戦して世界の選手から讃えられた技は、「フロントサイドトリプルアンダーフリップ」。
縦に3回転する大技が、現在の女子では最高難度とされました。
グラブ
技が出たときに実況アナウンサーが「ローストビーフ!」や「スイスチーズ!」などと言うことがあります。
これはグラブの種類。
グラブはジャンプ中にボードを掴む技のことで、これも得点を左右する要素になります。
基本のグラブは6種類です。
インディー(Indy):テールサイドの手でつま先側をつかむ
ミュート(Mute):ノーズサイドの手でつま先側をつかむ
メランコリー(Melancholy):ノーズサイドの手でかかと側をつかむ
ステールフィッシュ(Stalefish):テイルサイドの手でかかと側をつかむ
テールグラブ(Tail Grab):テールサイドの手で後ろの先端をつかむ
ノーズグラブ(Nose Grab):ノーズサイドの手で進行方向の先端をつかむ
そしてこれを応用した技が20以上あります。
例えば「ローストビーフ」はテールサイドの手で正面から股を潜ってかかと側をつかむ技。「スイスチーズ」はノーズサイドの手で正面から股を潜ってかかと側をつかむ技になります。
ちなみにグラブは回転方向などトリックの種類によって難易度が変わるのが特徴。どのグラブが絶対的に高難度というわけではありません。
スノーボードの得点
フィギュアスケートの場合、技に対する基礎点ははっきりと定められていて、どの程度の失敗なら何点減点になるかも厳密に決まっています。
しかしスノーボードのフリースタイルでは、得点は基本的に他の選手との比較ポイントになります。
これはどういうことでしょうか?
スノーボード競技の技は常に進化しているもの。
ジャッジたちはトップ選手のルーティーンを把握していて、現在最高のルーティーンが決まった場合の演技に少し余裕を持たせたレベルを100点満点に設定します。
そしてそれと比較して採点。
ハーフパイプの場合なら6人のジャッジがそれぞれ100点満点で評価し、最高と最低を除いた残りの4人の平均が得点となります。
判断の基準は、「エアの高さ」「技の豊富さ」「難解さ」「創造性」「着地、滑走の構成」など。
フィギュアスケートのように1つの技に対する得点を加算していくのではなく、ルーティーン全てを総合的に評価します。
つまり「フロントサイドトリプルコークフォーティーンフォーティ」だけをピックアップして何点ということはできないのです。
まとめ
毎シーズンのように最高難度の技が更新されるスノーボード。
しかしその名前はゼロから覚える必要はなく、回転の方向と回転数、グラブの名前などを組み合わせれば新技でもすぐに理解できます。
まだ歴史は浅く、さらにレベルアップすると言われるスノーボードのフリースタイル。
「難易度が上がりすぎて命の危険を感じる」という選手も多い中、これからどうやって安全を確保し、どのような技が登場するのか、その進化からは目が離せません。
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