野球の華といえば、何と言ってもホームランです。特に米国大リーグ(MLB)では、選手の強力なパワーを示す指標として高く評価されています。
ただでさえファンを魅了するホームランですが、ランナー満塁の状況で打つと、満塁ホームラン、すなわち「グランドスラム」として、球場が大フィーバーに包まれます。
この記事では、グランドスラムの意味と、それにまつわる日米歴代プレーヤーについて詳しく解説します。
グランドスラムとは?
上述のとおり、野球におけるグランドスラムは全ての累上にランナーがたまっている状態で打つ満塁ホームランを意味し、英語の表記は”Grand Slam”となります。
なお、グランドスラムは、実は野球だけでなく、あらゆるスポーツやゲームで使用される共通の言葉でもあります。
例えばテニスの場合、世界4大大会であるウィンブルドン大会(英国)、全米オープン選手権、全仏オープン選手権、全豪オープン選手権のすべてのシングルス(個人戦)で優勝することをグランドスラムと呼びます。
また、ゴルフの場合は、全米オープン、全英オープン、全米プロゴルフ選手権、マスターズ(米国)の4大会すべてに優勝することを意味します。
こうしたメジャースポーツの多くで使用されているグランドスラムは、「主要な大会や賞をすべて獲得・制覇する」ことを示していますが、この記事では、特に日米の野球におけるグランドスラムにスポットを当てて解説していきます。
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「グランドスラムの語源と由来は?」
グランドスラムの語源と由来ですが、元々は、トランプカードにおける“コントラクトブリッジ”とよばれるゲームから来ているものです。
コントラクトブリッジでは、4人のプレイヤーが2チームに分かれ、1人が1枚ずつカードを出して、一番強いカードを出した人が勝ちとなります。
この1回の勝ち負けをトリックと呼び、合計13回カードを出せば終了となります。そして、12回あるいは13回トリックを獲得する(=勝つ)ことを「スラム」と呼び、12回獲得すればスモールスラム、そして13回全てで勝利すれば「グランドスラム」といいます。
このように、トランプゲームのコントラクトブリッジで「全ての勝利を獲得し、制覇する」という意味が、やがてスポーツの世界に転じて、野球やテニス、ゴルフなどで「全ての勝利を獲得」という賞賛の意味を込めて、グランドスラムと使われるようになったものです。
野球のグランドスラムは一見、全ての勝利を獲得するのとはややニュアンスが異なるように感じますが、グランドスラム一発でほぼ試合が決まってしまうことが多いので、完全勝利と結びつけた表記ともいえるでしょう。
日米を代表するグランドスラムの歴代記録とプレーヤーは誰?
野球の華・グランドスラムですが、野球の最高峰である日本(NPB)と米国(MLB)それぞれにおける歴代の記録や、印象に残るプレーヤーについてみていきましょう。
(*)記録はいずれも2022年9月末現在
日本(NPB)での記録と歴代プレーヤー
まずはNPBでの歴代グランドスラム記録とプレーヤーから解説します。
通算グランドスラムの歴代上位5人は次のとおりです。
順位 | 選手名 | 所属チーム | 本数 |
1 | 中村剛也 | 西武 | 22 |
2 | 王貞治 | 巨人 | 15 |
3 | 藤井康雄 | オリックス | 14 |
3 | 中村紀洋 | 近鉄、オリックスなど | 14 |
5 | 駒田徳広 | 巨人、横浜 | 13 |
5 | 江藤智 | 広島、巨人など | 13 |
5 | 小久保裕紀 | ソフトバンク、巨人など | 13 |
グランドスラムの最多本数を誇るのは、今なお現役で活躍している西武ライオンズの中村剛也選手で、通算22本を放っています。
中村選手は通算ホームランを454本打っており、ホームラン数の総数でも歴代13位にランクされますが、2位の「世界の王」こと、巨人の王貞治選手が通算868本塁打に対してグランドスラムが15本であるのと比較すれば、その比率の高さが際立っています。
同様に、元オリックスの藤井康雄選手も通算282本に対してグランドスラムが14本と、大チャンスでの強さがうかがえる結果となっています。
また、現役時代に「満塁男」の異名を誇った元巨人・横浜の駒田選手は、グランドスラムの歴代5位に名前を連ねているのはさすがです。
駒田選手と同じ13本のグランドスラムを放っているのが、元広島などの江藤智選手と元ソフトバンクなどの小久保裕紀です。いずれも、最盛期をやや過ぎてから巨人にトレードされた共通点を持っていますが、長距離砲として活躍しました。
元近鉄などの中村紀洋選手も、通算404本塁打を放ち、近鉄のスラッガーとして光彩を放った強打者です。
長距離砲の代表格として活躍した、元広島の山本浩二選手、元南海などの門田博光選手、元西武の清原和博選手は、揃(そろ)って通算11本のグランドスラムを放っています。
アメリカ(MLB)での記録と歴代プレーヤー
次に、野球の本場・アメリカ大リーグ(MLB)のグランドスラム記録と歴代プレーヤーについてみていきます。
上位5人の記録は次のとおりです。
順位 | 選手名 | 所属チーム | 本数 |
1 | アレックス・ロドリゲス | マリナーズ、レンジャーズなど | 25 |
2 | ルー・ゲーリッグ | ヤンキース | 23 |
3 | マニー・ラミレス | インディアンス、レッドソックスなど | 21 |
4 | エディ・マレー | オリオールズ、ドジャースなど | 19 |
5 | ウィリー・マッコビー | ジャイアンツ、パドレスなど | 18 |
5 | ロビン・ベンチュラ | ホワイトソックス・メッツなど | 18 |
あの伝説のスーパースターで、ここ数年はエンゼルスの大谷翔平選手と何かにつけて比較され、通算714号の通算本塁打を記録した「球聖」ベーブ・ルースがベスト5に顔を出していないのは意外です。
通算トップは、マリナーズやヤンキースなどでも活躍した”A・ロッド”こと、アレックス・ロドリゲス選手の25本で、それまでの記録保持者であった元ヤンキースの伝説の「打撃王」ルー・ゲーリッグの23本を抜いています。ただ、薬物疑惑なども囁(ささや)かれ、長期間の出場停止があったのは残念です。
通算記録以外で面白いところでは、ドジャースで活躍したドン・マッティングリー選手は、1987年に1シーズンで6本の記録を残しています。また、セントルイス・カージナルスのフェルナンド・タティス選手は、1999年4月23日に1イニングに2本の満塁本塁打を放った唯一の選手として記録されています。
まとめ
「全てに勝利する」ことを意味するグランドスラムは、野球の華・満塁ホームランとして「勝負を決定する」衝撃の一打に対して与えられる称号です。
日米ともに歴代の素晴らしい記録とプレーヤーの数々を挙げてきましたが、特に日本の中村選手はまだまだ現役を続ける意向なので、更に記録の更新が期待されます。
また、最近ではヤクルトの村「神」様こと、村上選手が2022年シーズンで三冠王と、王選手を超える日本人歴代トップのシーズン56号本塁打を記録し、今後の大活躍に胸が躍ります。
野球のグランドスラム記録にますます期待したいものです。
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