長い歴史を誇る日本のプロ野球ですが、投手部門や打撃部門の記録が注目されがちです。
もちろん、投手の勝利数や防御率、また打者の本塁打数や打率など、素晴らしい記録は数々ありますが、盗塁の記録もまた、プロ野球ファンにとっては魅力的なものです。
今回は、歴代のプロ野球「韋駄天」、盗塁の記録とスピードスターについてみていきましょう。
ファンを魅了してきた歴代の盗塁王
優れた野球選手(野手)を形容する言葉として、「走・攻・守」のバランスという評価があります。
「攻」とは、本塁打や打率、打点などで表される「打撃力」を意味し、「守」はゴールデングラブに代表される「守備力」を意味します。
この2つに並んで評価されるのが「走」、すなわち走力ですが、短打を走力で長打にする魅力と、盗塁として評価される記録などが優れた走者の評価指標として示されます。
また、盗塁によって一気に局面を進め、ファンを魅了する醍醐味があります。
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プロ野球歴代:盗塁の記録は?
プロ野球における盗塁の記録を、生涯通算と、1シーズンのそれぞれについてみていきます。
投手の勝利数や打者の本塁打数、安打数と同様、「長く活躍した結果」としての生涯記録と、「一瞬の煌(きらめ)き」を物語るシーズン記録があり、それぞれの記録が燦(さん)然と輝いています。
生涯通算での盗塁記録
プロ野球を代表する盗塁王として、誰もが思い浮かべる選手といえば、阪急ブレーブス(現:オリックス)の福本豊選手で異存はないでしょう。
生涯通算の盗塁記録はなんと1000個を超え、他の選手を圧倒しています。
以下に、生涯通算での盗塁記録ベスト10を挙げてみます。
順位 | 氏名(所属球団) | 盗塁数 | 実働期間(年) | 試合数 |
1 | 福本豊(阪急) | 1065 | 1969-1988 | 2401 |
2 | 広瀬叔功(南海) | 596 | 1956-1977 | 2190 |
3 | 柴田勲(巨人) | 579 | 1962-1981 | 2208 |
4 | 木塚忠助(南海) | 479 | 1948-1959 | 1288 |
5 | 高橋慶彦(広島) | 477 | 1976-1992 | 1722 |
6 | 金山次郎(名古屋・松竹・広島など) | 456 | 1943-1957 | 1366 |
7 | 大石大二郎(近鉄) | 415 | 1981-1997 | 1892 |
8 | 飯田徳治(南海) | 390 | 1947-1963 | 1965 |
9 | 呉昌征(巨人・阪神など) | 381 | 1937-1957 | 1700 |
9 | 赤星憲広(阪神) | 381 | 2001-2009 | 1127 |
木塚選手、金山選手や飯田(徳治)選手、また呉選手など、戦後まもなく活躍した選手が多く顔を出しているのが特徴的で、福本選手に続く2位の記録を誇る広瀬選手や3位の柴田選手も「昭和中盤の世代」です。
時代の背景などもあるかも知れませんが、新しいところでは、5位の高橋選手、7位の大石選手、そして9位の赤星選手がランクインしています。
なお、現役選手では、西川遥輝選手(日ハム~楽天)の321個(21位)、糸井嘉男選手(オリックス~阪神)の300個(31位)(いずれも2021年現在)が頑張っており、今後の記録更新に期待したいものです。
1シーズンでの盗塁記録
次に、1シーズンで最も輝いた盗塁数を示す「シーズン記録」についてみていきます。
ここでも、生涯記録とともに福本選手が圧倒的で、他者の追随を許しません。もはや「脱帽」ですね。
1シーズンの盗塁記録ベスト10をみていきましょう。
順位 | 氏名(所属球団) | 盗塁数 | 年度 | 試合数 |
1 | 福本豊(阪急) | 106 | 1972 | 122 |
2 | 福本豊(阪急) | 95 | 1973 | 123 |
3 | 福本豊(阪急) | 94 | 1974 | 129 |
4 | 河野旭輝(阪急) | 85 | 1956 | 144 |
5 | 木塚忠助(南海) | 78 | 1950 | 116 |
6 | 松本匡史(巨人) | 76 | 1983 | 125 |
7 | 福本豊(阪急) | 75 | 1970 | 127 |
8 | 金山次郎(松竹) | 74 | 1950 | 137 |
9 | 高橋慶彦(広島) | 73 | 1985 | 130 |
9 | 広瀬叔功(南海) | 72 | 1964 | 141 |
「世界の盗塁レジェンド」福本選手が、シーズン記録でもなんとトップ3を独占しています。シーズンの盗塁数上位ベスト10はいずれも70個以上で、かなりのハイレベルといえる記録ですが、福本選手の場合は1シーズンでなんと100個を超える記録のほか、90個以上が2回もあり、現在では考えられない数字です。
ちなみに、日本政府が福本選手の偉業を称(たた)えて国民栄誉賞を打診したところ、辞退したことは(その理由を含め)ファンの間でよく知られています。
それに続く選手も、河野選手・木塚選手などの「古い時代の」選手が多いですが、巨人で「青い稲妻(いなずま)」として活躍した松本選手が6位にランキングしているのが目を引きます。
残念ながら、現役でトップ10に入る記録を持つ選手は見当たりません。
盗塁王獲得回数の記録
そして、シーズンの盗塁ナンバーワン「盗塁王」を獲得した回数のベスト10記録をみてみましょう。
ここでも、レジェンド・福本選手の独壇場です。
順位 | 氏名(所属球団) | 盗塁王獲得回数(連続回数) |
1 | 福本豊(阪急) | 13(13) |
2 | 柴田勲 (巨人) | 6(2) |
3 | 広瀬叔功(南海) | 5(5) |
3 | 赤星憲広(阪神) | 5(5) |
5 | 木塚忠助(南海) | 4(4) |
5 | 大石大二郎(近鉄) | 4(2) |
5 | 石井琢朗(横浜) | 4(3) |
5 | 片岡易之(西武) | 4(4) |
5 | 西川遥輝(楽天) | 4(2) |
福本選手の盗塁王獲得回数は生涯でなんと13回、しかも連続での記録です。2位の柴田選手が通算6回なので、ここでも比較にならないほど圧倒しています。
別格の福本選手を除いた他の選手が獲得した盗塁王の回数は拮抗していますが、現役の西川選手が今後、どの程度記録を伸ばすか楽しみです。
盗塁記録からみた最高のスピードスターは?
生涯通算記録、シーズン記録、そして盗塁王タイトル獲得記録のそれぞれ上位ランキングをみてきましたが、全ての項目についてトップに君臨するのが、阪急ブレーブスで大活躍した福本豊選手です。
こうした記録からも、歴代最高のスピードスターの称号は福本選手で議論の余地はありません。
ちなみに、福本選手の生涯盗塁記録は、日本一はもちろんのこと、米国メジャーリーグをみても、これを超えるのは通算1406盗塁のR・ヘンダーソン選手ただ一人で、通算1000盗塁を超えるのはこの2人のみ、それに次ぐのは938盗塁のルー・ブロックと、その記録の偉大さがわかります。
野球の醍醐味として「走・攻・守」のバランスが語られますが、スピードを活かして累上を颯爽(さっそう)と駆け回る「韋駄天」スピードスターの新たな出現と活躍を、今後も期待したいものです。
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