バントの中でも特別な名前を持つスリーバント。
「ワンバント」や「ツーバント」という言葉はないのに、なぜ「スリーバント」だけ存在するのでしょうか。
今回は、野球のスリーバントの意味やルール、その歴史をご紹介します。
【スリーバント】意味
そもそもバントとはどういう打撃でしょうか。
公認野球規則には、「本規則における用語の定義」という補足があり、そこにはバントについて以下のように書かれています。
13 BUNT「バント」 バットをスイングしないで、内野をゆるく転がるように意識的にミートした打球である。
これは多くの方がイメージする通りではないでしょうか。
ではスリーバントはどういう意味でしょうか。
【関連記事はこちら】⇩
・【野球】バントの種類を目的別にご紹介!メリットやコツも調査!
・【ヒットエンドランとは】使い方を覚えて失敗を防ごう!
スリーバントの意味
スリーバントは打者が2ストライクからバントをすること。
実は和製英語で、英語では、「bunt with two strikes」と言います。
ではルール上はどのように解説されているのかというと・・・何もなし。
公認野球規則には「犠牲バント」についての定義はあるのに、「スリーバント」という言葉は載っていないのです。
【スリーバント】失敗すると
なぜルールにはないスリーバントという言葉が存在するのでしょうか。
それはスリーバントがアウトに直結するプレーだからです。
2ストライクのカウントでバットをスイングしてファウルになった場合、特に何も起こらず、カウントは2ストライクのまま。
しかしスリーバントでのファウルは三振になるのです。
それはスイングでのファウルとバントでのファウルは記録上の考え方が違うから。
まとめると以下のようになります。
打つ前のカウント スイングのファウル バントのファウル
ノーストライク 記録:ファウル
(1ストライク増える) 記録:ストライク
(1ストライク増える)
1ストライク 記録:ファウル
(1ストライク増える) 記録:ストライク
(1ストライク増える)
2ストライク 記録:ファウル
(ストライクは増えない) 記録:ストライク
(三振)
スイングでのファウルはファウル扱いなので、2ストライク以降にストライクカウントは増えません。
一方、バントでのファウルはストライク扱いなので、スリーバントのファウルは三振になるのです。
これに関して公認野球規則には以下のように定義されています。
9.15 三 振
(a)次の場合には三振を記録する。
(4)2ストライク後、打者がバントを企ててファウルボールとなった場合。
このルールがあるため、スリーバントは特別な名前が付けられ、ファウルだと「スリーバント失敗」と言われるのです。
スリーバント失敗のルールが生まれた背景
本来、三振とはボールにバットが当たらないことのはず。
ファウルなのに三振というのは理屈に合わないルールですが、それもそのはず、スリーバントのファウルが三振というルールは特例として追加されたものなのです。
その理由となったのは、MLBのウィーリー・キーラー選手。
1894年から1901年まで8年連続200本安打を記録した彼の名前は、イチロー選手がその記録を更新したときにもメディアに登場しました。
そのキーラー選手ですが、実は自分の得意なボールが来るまでバントでファウルを打って粘るというプレースタイルだったのです。
当時、ファウルはストライクではなく、しかもバントで何度打ってもファウル扱いという時代でした。
そのためキーラー選手はいくらでも粘ることができたのですが、このような作戦はフェアではないと問題に。
そこでまず1901年に2ストライクまでのファウルはストライクになるというルールが決まり、翌1902年には2ストライク後のバントによるファウルはアウトとなったのです。
その結果、キーラー選手の安打数は激減。200本安打は8年連続でストップしました。
キーラー選手がいなければスリーバントのルールはなかったかもしれないのです。
【スリーバント】練習法
スリーバントはアウトになるリスクが高いプレーですが、作戦上どうしても行わなければならない場面もあります。
キーラー選手を恨んでも仕方がありませんから、スリーバントでも確実に成功させるよう、練習しましょう。
バントの確率を上げるコツ
失敗できない場面でバントを成功させるためのコツは、バットとボールの両方を視線の中に入れることです。
よくある失敗は、ボールだけをよく見て手で合わせにいくバント。
人間の体は末端部を意識して動かすと他の部分の動きが制限されます。
つまり体の動きがぎこちなくなるということ。
そのため手だけでボールを捉えにいくと精度が下がってしまうのです。
バットにできるだけ顔を近づけた姿勢で構え、手ではなく体全体を動かしてボールに当てに行くことが肝心。
顔をバットに近づければ最後までボールとバットの両方を視線内に捉え続け、より確実に当てることができるはずです。
バントのための練習
バントの確率を上げるためにやっておきたい練習が、片手キャッチです。
これはバントの形に構えたまま、右打者なら右手、左打者なら左手でボールをキャッチする練習。
5mほどの距離から軽く投げてもらって行います。
このときに顔と手を近づけ、手ではなく股関節や体幹といった体全体を柔らかく使って取りにいくことを意識。顔と手の位置関係を変えないことがポイントです。
これができるようになったら、次はその手にバットを持って片手バントの練習をします。
ボールをゆっくり投げてもらい、キャッチしていたときと同じフォームでバント。キャッチする感覚とバットでコントロールする感覚をミックスさせるように練習します。
まとめ
ファウルで三振のリスクがあるため、避けられることが多いスリーバント。
それだけに確実に決められるようになれば相手の隙をつくことができます。
特にスリーバントスクイズが成功すれば、試合の行方を大きく左右する可能性も。
大きなプレッシャーのかかる場面ですが、スリーバントを武器にできるよう、ぜひ練習を重ねてください。
【関連記事はこちら】⇩
・【野球】振り逃げとは?正しい意味・発生する条件や記録方法を解説!
・【野球】牽制する意味とは?注意すべきボーク対策もご紹介!