プロ野球ペナントレースも終盤を迎え、優勝を目指して各チームが白熱の試合を展開しています。
今年も次世代の有望選手獲得を目指して各球団が指名する「プロ野球ドラフト会議」が10月20日に開催されます。その際、併(あわ)せて実施されるのが「育成ドラフト」です。
この制度について詳しく解説します。
プロ野球育成ドラフトとは
日本プロ野球(NPB)において、一部の人気球団に有望選手が集中する弊害(戦力の不均衡)の是正を主な目的として、1965年に第一回のプロ野球ドラフト会議が開催されました。
その後、ドラフト制度は様々に変更を重ね、現在は各球団が希望する選手を提示し、重複した場合は抽選で獲得する「重複選手抽選方式」と「順位順折り返し方式」の併用による運営が行われています。
また、支配下登録選手とは別枠で、将来の支配下登録を目指す「育成ドラフト」が2005年から導入され、即戦力ではないけれども、将来の活躍が期待される若手の有望選手発掘が進んでいます。
育成契約制度とは
NPBの育成選手制度は、上述のとおり若手の有望な選手の発掘と育成を目的として2005年に導入されました。当初は4球団・6名でスタートしましたが、2021年時点では全12球団に所属選手が拡大しています。
この制度は、若手の有望選手を発掘・育成するだけでなく、例えば足が速いとか、肩が強いとか、いわゆる「一芸に秀でている」けれど、他の能力がまだ未完成で支配下登録には至らない選手でも、プロ野球の世界に挑戦できる特徴があります。
また、怪我や病気などで手術受けてリハビリ期間が必要な場合でも、育成選手であれば支配下登録の人数制限に関係なく契約が可能なので、プロ野球の各球団としても育成制度活用のメリットがあります。
育成選手の人数は2021年末現在で一番少ないヤクルトと広島が6人、一番多い巨人が26人と、チームによって差がある状況です。
育成ドラフトとは
NPB各球団が育成選手を獲得する際に必要な手続きが育成ドラフトとなります。
このため、各球団が育成選手を新規獲得する場合には、毎年開催されるドラフト会議の後に実施される育成ドラフトでの指名が必要です。
2021年のドラフト会議では中日以外の11球団が参加し、育成選手を獲得しています。指名できる育成選手の人数には特に制限がなく、球団によってまちまちです。
各球団それぞれが育成戦略を立て、それに沿って指名することになりますが、ここ数年をみると指名が多いのは巨人、ソフトバンク、オリックスの3球団となっています。事実、2021年のドラフトではソフトバンクは史上最多の14人もの選手を指名・獲得しています。
今年(2022年)の育成ドラフトがどういう結果となるのか、非常に注目されます。
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育成契約・ドラフト選手と支配下登録選手の違いは
NPB所属の選手は、これまでみてきた育成選手と、1軍の公式戦に出場可能な「支配下登録選手」とに分類されます。育成選手と支配下登録選手の違いについて詳しく解説します。
支配下登録選手の条件
支配下登録選手の主な条件は次のとおりです。
・1軍公式戦に出場可能
・背番号は1桁(ケタ)または2桁
・契約金が支給される
・最低年俸は440万円(1軍登録選手は1,600万円)
・稼働期間は2月1日~11月30日
・支配下登録枠(上限)は70名
育成選手の条件
次に、育成選手の主な条件についてみていきます。
・1軍の公式戦には出られない
・2軍戦には原則5人まで出場可能
・背番号は3桁
・最低年俸は240万円
・契約時に支度金が支給される
・稼働期間は1月1日~12月31日
・契約期間は最長3年間
・人数制限なし
主な条件の違いをみると、1軍の公式試合に出場できるかどうかが大きなポイントとなります。本塁打王・打点王・首位打者、最多勝利・防御率1位、盗塁王など、NPBのあらゆる記録は1軍の公式試合が対象となるので、育成選手はどれだけ凄(すご)い活躍をしても記録の対象となりません。
面白いのは背番号の桁が違うことで、育成選手の背番号は全て3桁となっています。
最低保証年俸にも格差がありますが、育成選手の契約期間は最長3年間と定められているため、その間に支配下登録選手として認められない場合は契約解除(退団)となってしまう厳しさがあります。
育成ドラフト出身の主なスター選手は
最後に、育成選手の今後の活躍を期待するとともに、励みとして活動できるよう、育成ドラフト出身の主なスター選手を何人か挙げてみます。
甲斐拓也捕手(ソフトバンク)
「甲斐キャノン」の異名を誇る強肩で、常勝ソフトバンクの立役者として有名な甲斐選手は、まさに育成ドラフトの代表格です。
2010年にソフトバンクの育成ドラフト6位で入団し、WBCなどの国際試合では日本代表捕手として活躍、NPB公式戦でもベストナイン(2017年)、ゴールデングラブ賞(2017年~2019年)、日本シリーズMVP(2018年)など、輝かしい活躍が光ります。
千賀滉大(ソフトバンク)
ジャパンのエースと呼んでも過言ではない千賀選手も、甲斐選手と同様ソフトバンクの育成出身です。甲斐捕手と同年の2010年育成ドラフト4位で入団しています。
主な獲得タイトルは、最多奪三振(2019年)、最高勝率(2017年)、ベストナイン(2019年)、ゴールデングラブ賞(2019年)など、素晴らしい活躍ぶりです。
山口鉄也投手(巨人)
「元祖育成」ともいえる、育成出身のスター選手です。
育成ドラフトが創設された2005年に育成ドラフト1位で巨人に入団すると、2007年に支配下契約を勝ち取り、2008年には新人王に輝きました。
主に中継ぎとして大活躍し、新人王以外にも最優秀中継ぎ投手を3回(2009年、2012年、2013年)獲得しています。
現役引退後、現在は巨人の投手コーチを務めています。
まとめ
プロ野球育成ドラフトの仕組みと開設の経緯、育成選手の特徴や、支配下登録選手との違い、そして育成ドラフト出身のスター選手について解説しました。
今年も開催が迫ってきたドラフト会議・育成ドラフト会議を楽しみにしたいものです。
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