宮本武蔵でお馴染みの二刀流。実は剣道の試合でも二刀流は認められています。
竹刀が2本になったら圧倒的に有利だと思う方も多いはず。でもその割に試合で二刀流をほとんど見ないのはなぜでしょうか?
ここでは二刀流のルールやメリット、デメリットについてご紹介します。
剣道|二刀流の現状
現代に伝わる二刀流の原型を作ったと言われるのが宮本武蔵。彼が残した指南書「五輪書」が二刀流だけでなく後の剣術全般に大きな影響を与えたことから、現代の剣道でも二刀流は正式に認められています。
ただし昭和初期に成年以降のみに許されるとなったことで、学生の公式試合での使用は禁止に。平成4年に大学剣道での二刀流が認可されましたが、高校以下は禁止のままです。日本では幼い頃に剣道を始めることが多いため、二刀流の使い手はかなり少ないのが現状となっています。
一方の海外では、日本文化に興味を持つうちに剣豪宮本武蔵を知り、剣道を始めるという人が多くなっています。そのため世界大会では二刀流の選手も多く見られるのです。
剣道|二刀流のルール
前述のように日本では二刀流は大学生以上の試合でしか使うことはできません。ただし二刀流の稽古は何歳でも可能。
大学以降に向けて修行しておくことはできます。
では試合での二刀流のルールはどうなっているのでしょうか。
二刀流の竹刀
二刀流では、大刀と小刀を使います。竹刀が1本の剣道の場合、一般男性の竹刀は長さ120cm以内、重さ510g以上、先端部の直径26mm以上とされているのに対して、二刀流の大刀は長さ114cm以内、重さ440g以上、先端部の直径25mm以上と規定されています。つまり一般的な剣道より短く軽い竹刀です。
これは中学生が使用する竹刀と同じ長さと重さ。
しかし二刀流は片手で竹刀を扱うため、中学生用そのままではなく、バランスを重視して一般用竹刀を切り詰めて使う人が多くなっています。
一方の小刀は長さ62cmと、とても短いものです。
二刀流の有効打突
二刀流では、大刀で鍔迫り合い(つばぜりあい)をしている間に小刀で小手を打つことができそうですが、このような場合は有効打突とは認められません。小刀での打突が有効と認められるためには以下の項目を満たしている必要があります。
・大刀で相手の大刀を制している
・打った方の肘がよく伸びている
・充分な打ちで条件を満たしている
剣道経験者の中には「小刀での打突は有効打突にならない」と認識している方も多いのですが、実際には有効打突になり得るがかなり難しいということ。現実的には小刀で防御しつつ大刀で一本を取ることになります。
鍔迫り合いのルール
二刀流のルールでもう一つ重要なのが鍔迫り合いの規則。鍔迫り合いでは「小刀を下に、大刀を上とし、二刀を交差する形」にしなければならないと定められています。
つまり一本の竹刀で鍔迫り合いしている間にもう一本で打つという技自体ができなくなっています。
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剣道|二刀流の構え
二刀流の構え方に関しては、特に決まったルールはありません。実際の構え方には「正二刀」と「逆二刀」の2種類の構え方があります。
2つの違いは大刀と小刀を持つ手が右か左かということ。その上で試合の中で二刀の位置を臨機応変に変えていきます。基本の構えは以下の通り。
「中段の構え」は、大刀、小刀共に中段に構えるもの。両剣の先を相手の中心に向けます。ここから他の構えに移行していく基本の構えです。
「上下太刀の構え」は、中断の構えから大刀だけを上段に振りかぶった構え。現代剣道の二刀流では最も多用される構えとなります。
「下段の構え」は大刀、小刀共に下段に構える構え。現代の剣道では下から切り上げることができないためあまり使用することはありません。
「十字の構え」は中段の構えで大刀と小刀を交差させるもの。日本刀を用いた実戦では最も多用されたそうです。
「両上段の構え」は大刀、小刀共に上段に構えるもの。宮本武蔵の二天一流ではここから両刀を同時に振り下ろして下段の構えに変わるのが基本の太刀筋でした。
剣道|二刀流のメリット
二刀流のメリットは、2本の竹刀から繰り出す攻撃力と思われがちですが、実は大きなメリットは高い守備力です。最も多い「上下太刀の構え」を取られると、一刀の相手は「打てるところがない」と感じるほど。
また熟達すれば片方の竹刀で相手の竹刀を制しながらもう一方で攻撃を繰り出すことも可能。特に二刀流に慣れていない相手に対しては大きな武器となります。
二刀流のデメリット
弱点がないように見える二刀流ですが、実は弱みも持っています。最大の弱点は片手で竹刀を操ることによる「遅さ」。両手で竹刀を操る場合と比べてかなり振りが遅くなってしまうのです。また出ばな技や引き技、連続技といったスピードを求められる攻撃も苦手となります。
また竹刀の長さが短いため、間合いが短くなってしまうこともデメリット。一刀の相手に有利な間合いを作らせない工夫が必要となります。
剣道|二刀流の稽古のポイント
二刀流の稽古では一刀以上の筋力をつけることが求められます。
上記の「遅い」というデメリットを克服するには、かなりの筋力が必要。また相手は「竹刀落とし」を仕掛けてくることも。片手でそれに耐えるための筋力も必須となります。
また二刀流の打突では間合いを長くするために柄の端を握りますが、鍔迫り合いでは素早く引き技を打つために柄を短く持つことになります。そのため一刀にはない柄の持ち替えの訓練も行わなければなりません。
まとめ
最強に見えて弱点も持つ二刀流は、稽古できる環境も少ないのが現状です。
しかし充分な筋力をつけ、素早く動けるようになれば、かなりの強さを発揮できる可能性も。
海外では人気で伝統もある二刀流には、とても挑戦のしがいがあるかもしれません。
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