1990年代ごろのサッカーを知っている方にとっては馴染み深いリベロ。
サッカーの役割の1つですが、最近あまり聞くことがなくなってしまいました。
リベロがほとんど消えてしまった理由は何でしょうか。
今回はリベロの役割と歴史、代表的な名選手をご紹介します。
【サッカー】リベロの意味と歴史
リベロとはイタリア語で「自由な人」という意味。
ピッチ全体を自由に動いてプレーするポジションになります。
リベロが誕生した背景
このようなポジションが生まれた背景には、現在とは違う昔のサッカーのスタイルがありました。
サッカーが誕生した1860年代以降、ディフェンスは2人のフルバックの選手が担っていました。
それは3人制オフサイドというルールがあったから。
ディフェンス+ゴールキーパーの3人で守れば、前方にパスを出されにくかったのです。
その後1925年に現在と同じ2人制オフサイドにルール改定されると、2人で守る意味がなくなったと、3バックが一般的になります。
また当時の守備の戦術は、特定の相手にピッタリ張り付き、1対1で守備を行う「マンマーク」が主流でした。
その中でマンマークディフェンスの後方で広くカバーリングを担当するリベロが登場します。
つまりこの当時のリベロはゴール前で動き回って守備をするスイーパーに近い役割だったと言えます。
リベロの申し子
完全に守備の専門だったリベロに大きな転換点が訪れたのは1970年代。
ドイツの「皇帝」、フランツ・ベッケンバウアーが全てを変えたのです。
ベッケンバウアーは守備をしただけでなく、後方からのパス、さらに自ら前線への飛び出しも行い、フィールドを縦横無尽に駆け巡りました。
この攻撃的なリベロは、画期的なことでした。
なぜなら普段は後方にいるリベロには、相手のマンマークがついていないから。
そのリベロがいきなり前線に上がると、ほぼフリーの状態になれるのです。
これ以降、守備的な位置にいるリベロにあえてドリブルの上手い攻撃的な選手を配するという作戦が一般的になっていったのです。
【サッカー】リベロの役割
ベッケンバウアーが確立したリベロは、攻撃も行う守備的ポジションの選手。
具体的には以下のような働きをします。
守備時のリベロの役割
守備をするときにはリベロは主に中央後方のセンターバックとしてディフェンスラインのカバーリングを行います。
味方が相手フォワードをマークしているところをカバーリングしながらディフェンスラインを統率。
スイーパーとしてゴールを守ります。
攻撃時のリベロの役割
攻撃時には、ディフェンスラインからパスするだけでなく、自ら中盤の攻めに加わることも。
ボランチのような働きをし、さらに最前線でゴールを狙うこともあります。
つまりリベロは最後尾から最前線まで動き回り、ゲームをコントロールする役割を担うのです。
【サッカー】リベロの代表的選手
リベロ全盛期には、多くのスター選手が登場しました。
代表的な選手をご紹介します。
フランコ・バレージ
1990年代に「カテナチオ(かんぬき)」と称されたイタリア伝統の堅守を指揮した象徴的存在。
責任感が強く、キャプテンとして優れていたことから伝説のリベロと呼ばれ、ACミランで彼が付けていた背番号6は永久欠番となっています。
ルート・フリット
ドレッドヘアと抜群のテクニックで有名だったオランダのスーパースター。
守備から攻撃まで、ゴールキーパー以外ならどのポジションもこなせると言われた彼は、まさにリベロといえる選手でした。
ローター・マテウス
90年代にリベロとして活躍した彼はチームに貢献するという強い信念からゲルマン魂の象徴と言われた選手。
ロングパスやドリブルも得意でしたが、優れた守備能力が最大の特徴で「エースキラー」とも称されました。
【サッカー】リベロが見られなくなった理由
多くの名選手を生んだリベロという役割。
では近年リベロがほとんど見られなくなったのはなぜでしょうか。
その理由は、2000年代に登場したフォワード3人というフォーメーションにあります。
この形のキモは、相手のセンターバック3人と同じ人数を並べることでリベロを余らせず、攻撃に参加させないこと。
またこの頃、フォワードが意図的に下がることでマークしているディフェンスをゴール前から引き剥がす作戦が登場。
マンマークの作戦に綻びが見えてきました。
その結果、4人のディフェンスが自分の守備範囲に入った相手を担当するゾーンディフェンスが主流に。
リベロという役割はマンマークの作戦の中でこそ生きるポジションだったため、守備の面でも攻撃の面でもリベロは意味の薄いものになってしまったのです。
また近年のサッカーはプレースピードが上がっているため、最後尾から最前列まで1人で攻守を行うリベロでは対応しきれなくなったのも、大きな理由です。
まとめ
現在ではほとんど見られなくなったリベロというポジション。
しかし元はボランチでありながら3バックの中央でプレーする長谷部誠選手は攻撃の起点になるなど実質的にはリベロであると言われています。
ベッケンバウアーがリベロの役割を変えたように、「自由な人」であるリベロは役割を変えながらまた復活するかもしれません。
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