愛知だけでなく、日本の高校野球を代表する名門校である中京大中京。
2023年の春季大会では1回戦でまさかの大敗を喫してしまったが、夏までに名門の復活はあるのか。
監督とキャプテンに話を伺った。
インタビュー:スポスル編集局
【中京大中京】
ちょうど100年前の1923年に創部し、多くのプロ野球選手を輩出している名門。
夏の全国高校野球選手権大会の出場は28回。勝ち数78回と優勝回数7回は歴代1位となっている。
また近年も2009年夏の全国高校野球選手権大会優勝、2019年の明治神宮野球大会優勝、2021年春の選抜高等学校野球大会ではベスト4と常に全国優勝を狙える強さを誇る。
現在の部員数は99名、マネージャー7名の106名。
高橋源一郎監督
高校時代は中京大中京の2番遊撃手。キャプテンを務めた1997年春の選抜大会では準優勝を果たしている。
2009年に中京大中京高校のコーチに就任し、夏の全国高校野球選手権大会優勝。
翌年夏の甲子園大会敗退の後に前任監督の後を継ぎ、監督に就任した。
江崎直人捕手
3年生。2年生から正捕手に抜擢された、高橋監督からの信頼も厚い頼れるキャプテン。
失敗しても前向きなチャレンジを
ーーーまずは監督、今年のチームを一言で表すといかがですか?
高橋監督
なかなか一言で表すのが難しいチームですね。
秋の県大会の準決勝で敗退しまして、そこから一冬越えて、春の県大会は初戦負けと。思い通りにプレーできずリズムが乱れて、それが試合の流れになっていくという…。
野球の流れ、一発勝負の怖さを選手たちが肌で感じたゲーム内容でした。
そこからチームが危機感を持つようになってきて、力のある新入生が入って刺激を受けたり、怪我人が戻ってきたりということで、5月以降のチーム変化が大きいんです。
まだまだこれから、大会に入ってからも変化の大きいチームじゃないかなと思います。まだ形が決まっていないというか、非常に可能性を秘めたチームですね。
ーーーチームの雰囲気はいかがでしょうか?
高橋監督
前向きにチャレンジできるようなムードが出てきました。
私が言うのは、常に失敗しても前向きにチャレンジしろよということですから。夏の大会に向けて変わっていけるムードはできていると思いますね。
ーーーその夏の大会に向けて、チームの戦力面はいかがですか?
高橋監督
投手陣含めた守りの方が未知数だったんですけど、下級生の中に何人か力をつけた選手が出てきました。打撃も含めて総合的に力は上がってきたので、春とはガラッと違ったチームになったと思います。
怪我人も戻ってきて、ようやく戦える戦力が整いつつあるかなと。
西谷(光世外野手)、神谷(倖士朗内野手)、山田(頼旺外野手)、大西(遼多内野手)というのが打の中心です。
投手は、中井(遥次郎投手)という2年生が安定感が増してきていて、そこに祝(昂輝投手)、佐竹(泰河投手)、1年生で将来性豊かな宮内(渉吾投手)、他にも多種多様なピッチャーがいますから、今年は継投で守りをしていくという形になりますね。
「当たり前」を継続し、日本一へ
ーーーチームの目標を教えてください。
高橋監督
甲子園で優勝すること。日本一になることです。
そのために、当たり前のことを当たり前にやる。その当たり前のレベルを上げていくという。
それを継続してトライして、反省して、それを課題としてまた次に向けてチャレンジして…。その作業をずっと繰り返しています。
練習はオーソドックスなんですけどね。それをいかに試合に繋げていけるかに重点を置いています。
うちは部員の人数に恵まれていますから。例えばシートノックでもランナーをつけるなどして、少しでも試合に近づけるように工夫しています。
リーダー制を採用。「自ら」というエネルギーを大事に
ーーー人数の多いチームですが、チーム作りで意識していることはありますか?
高橋監督
うちは全員が練習をやって、その中で競争して、競争の中で選手を使っていくという形を作ります。試合に出るだけが選手の役割ではありませんから。
色々なところで選手たちが自分を活かす、チームに必要とされるポジションであるということです。
一人ひとりが役割を担えるようにしています。
例えば今年の3年生ですと、選手の中に「学生コーチ」という役割を担ってくれる子がでてきました。監督やコーチから言われるよりも、仲間から言われる方が響くところもあるみたいですね。
そんな役割の子が出てくれたことが、今年のチームの強みですね。
ーーー選手に主体的に動くことを求めるということですか?
高橋監督
中京大中京としての歴史や伝統を伝えていくということもありますから、全部を個人に任せるのも難しい部分ではあるんですけど…。
私たちは基本を伝えるだけにして、自分で感じること、「自ら」というエネルギーを大事にしたいですね。
そのあたりのコミュニケーションを、学生コーチや他のスタッフの力も借りながら、常に話し合いを持って行うよう心がけています。
監督・コーチから伝えたいことと、生徒の主体性、そのバランスを取りながら、トップダウンの一方通行にならないように。生徒の話を聞く時間も必要だと思っています。
ーーーそのためにも重要になるのがキャプテンの存在ですね。
高橋監督
江崎キャプテンは自ら進んで行動できること、言うべきことを言えるのが強みです。その他にもうちはリーダー制をとっています。
江崎は全体のキャプテンなんですが、バッテリーチーフということで、キャッチャーに浅井(祥英選手)という選手を置いています。
またピッチャーには学生コーチの水向(快斗選手)、内野は稲垣(克海選手)、外野は西谷(光世選手)という形で4人のリーダーがいて、それがとても頼もしいんです。
何かあれば私の考えをリーダーに伝えると、リーダーを中心になってやり方を自分たちで考えるという形で進めています。
高校野球はチーム一丸って言いますが、試合に出られない子もいれば、思うようにいかない子も、怪我をしている子もいます。
その皆の思いが一つになるって言うほど簡単ではないけど、やはり日頃からの関係性が表れると思います。
100年間大事にしてきた、日本一を取るという姿勢
ーーー中京大中京が、ここは他校には負けないという部分はどこでしょうか?
高橋監督
本気で日本一を狙いにいくという姿勢ですね。
うちは今年で100年になるんですけど、その100年間ずっと大事にしてきたのが日本一を取るという姿勢なので、そこにはプライド、誇りを持ち続けています。
ーーー最後になりますが、地元愛知の方に伝えていきたいことは?
高橋監督
野球王国愛知のたくさんある強豪の中で、しのぎを削っていくわけですから、それに相応しいチーム、愛知県の方に応援していただけるチームに作り上げていきたいと思っています。ぜひ応援をお願いします。
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「一心一体(いっしんいったい)」で一つになる
続いて、選手の要となる江崎直人キャプテンにも話を伺った。
ーーー江崎キャプテンから見て、今年のチームの状態は?
江﨑選手
春は初戦で大敗したんですけど、そこからまたチームの立て直しを図って、沖縄の招待試合や花巻の招待試合でもいい試合ができているので、チーム状態は少しずつ上がってきているかなと思います。
雰囲気はいいですね。夏に向けて、全員でやっていこうという意識、気持ちが全体的に見えてきたと思います。明るい中でも、しっかり緊張感もあるのがいいと思います。
ーーーキャプテンとしてチームを作っていく中で、支えになっているものは?
江﨑選手
支えになっているのは、チームメイトが全てです。
自分一人では何もできないですし…。チームメイトの存在自体が自分の支えです。
ーーーチームにスローガンのような言葉はありますか?
江﨑選手
今年は「一心一体(いっしんいったい)」です。
うちは1年から3年までで99名、マネージャー7名で、106名という大所帯なんですが、それが一つにならないと勝ち上がれない。だから皆で一つになろうという意味を込めて、「一心一体」というスローガンを掲げています。
守備でも攻める
ーーー客観的に見て江崎キャプテン自身の人柄は?また常に意識していることはどのようなことがありますでしょうか。
江﨑選手
人柄は……常に元気があって、野球に対しても熱く取り組めているかな、とは思います。
キャプテンとしては、まず自分が動くというところは意識していますね。
キャッチャーとしては、ピッチャーがいいプレーをするにはどうすればいいか、チームのためにどんなプレーをすればいいかを意識しています。
ーーーでは、チームとして大切にしていることはありますでしょうか?
江﨑選手
攻めること。とにかく攻める。守備でも、打撃でも、走塁でも、攻めることをチームとして大切にしています。
守備では、打球が来たときに待ってしまって、というようなことがないように。まず前に出る、まず攻める、というところを意識しています。
「中京大中京のキャプテン」ではなく「このチームのキャプテン」と考える
ーーー中京大中京が全国の高校にここは負けないというポイントを教えてください。
江﨑選手
やはり伝統、歴史はどこに比べても負けない、すごく大きなものがあると思います。どこに行っても、「中京大中京、今年はどうだ?」と聞かれたり「中京大中京の野球部なんだ!」と声をかけていただくので。
やはり、歴史も伝統も大きな高校なんだと感じます。
ーーーそれだけの歴史、伝統ですからプレッシャーもあるのでは?
江﨑選手
キャプテンになりたてのときはあったんですけど、やっているうちにプレッシャーにも慣れて、今はもうないです。
「中京大中京のキャプテン」と考えるとプレッシャーもあるんですけど、「このチームのキャプテン」と思うようにすると、大きなプレッシャーも感じなくなります。
ーーー昨年と比べると、今年のチームはいかがでしょうか。
江﨑選手
とにかく元気はあります。チーム全体もそうですし、学年を越えた仲の良さっていうのは去年のチームよりあるかなと思います。
今年のチームは「学年に関係なくやっていこう」という雰囲気が自然に流れていて、そこはすごくいいところですね。
明るくプレーすることで競技力は向上しますし、練習の質も上がっていると思います。
やはり、暗くやっても思い切ったプレーはできないですし、明るく思い切ったプレーをしていくことが大事ですね。
なんとしても甲子園に出て、日本一へ
ーーー甲子園に出場するために必要なことは何があると考えますか?
江﨑選手
バッティングも走塁も守備も投手力も、全てにおいてレベルアップすることです。何か一つレベルアップしても、ダメなところが試合には出ると思うので。
全てにおいてレベルアップすることが大切です。
そのためには、野手からピッチャーに声をかけること、ピッチャーから野手に声をかけること、しっかり言い合って伝えていくことも必要だと思っています。
ーーー今年の夏は、どんな夏にしたいですか?
江﨑選手
中京大中京は甲子園に出て試合をすることに意味があるというか、甲子園に出なければ意味がないので。まずは甲子園に出て、そこで戦えるようなチームにしていきたいです。
この夏はなんとしても甲子園に出て、そこで勝ち上がって、日本一を目指したいと思います。
ーーー最後になりますが、地元・愛知の方々に野球を通して伝えたいことなありますでしょうか?
江﨑選手
愛知県は人口が多くて、高校野球のチーム数も多いですから、そこで競い合えるというのは他の県にはないところだと思います。
その多くの人との関わりというのを、野球でも大切にしたいと思っていますし、そういったところが伝われば嬉しいです。
取材後記
春の県大会初戦でまさかの大敗を味わった中京大中京は、100人以上の部員が「一心一体」をスローガンに大きく成長しています。
今年創立100年。常に「目標は日本一だ」と言い切る中京大中京の活躍に期待が膨らみます。
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