世界一高い山といえば、エベレスト。別名チョモランマです。
世界の登山家にとっていつかは踏破したい憧れの山。
しかし計測方法によれば、実はエベレストは世界一ではないともいえるのです。
いったいどういうことか分かりますか?
今回は、世界一高い山について解説します。
山の標高の測り方
山の高さを測るとき、一般的には海面からの高さで表現します。
このため「海抜〇〇m」という表現が用いられるのですが、海面の高さは潮の満ち引きによっても変わるし、地域によっても異なります。
では何が基準になっているのかというと、潮の満ち引きの平均を取り、さらに世界全体で平均を取った地球の平均海水面。これを使うことで世界的に同じ基準で高さを測れるのですが、実際には平均海水面とほぼ同じと考えられる位置で測定します。ちなみに日本の場合は、東京湾の平均海水面が基準です。
世界一高い山①:エベレスト
まずは一般的な意味で世界一高い山から。
海面からの標高(海抜)で比較します。
その世界トップ3はこちら。
順位 | 山の名前 | 高さ |
1位 | エベレスト(ヒマラヤ) | 8848m |
2位 | ゴドウィンオースチン(カラコルム) | 8611m |
3位 | カンチェンジュンガ(ヒマラヤ) | 8586m |
ゴドウィンオースチンは通称「K2」。
これはKarakoram No.2 (カラコルム山脈測量番号2号)という意味です。
そしてトップ10の残りは全てヒマラヤ山脈の山頂になります。
エベレストの高さの変遷
エベレストは、ネパールと中国チベットの境にある山。
標高は8848mですが、この数値はこれまでに何度か改定されています。
エベレストが世界最高峰の山であることが分かったのは1850年頃。インドの測量技師のラーダナート・シクダール氏が当時「ピーク15」と呼ばれていたエベレストの標高を三角測量し、8840mという結果を出しました。
続いて1954年にインドの調査グループがセオドライトという二点の間の角度を精密に測る装置で再び三角測量を実施。その結果、現在よく知られている8848mという数値が出たのです。
さらに人工衛星が登場すると、GNSS(全地球衛星航法システム)を使って1999年にはアメリカが、2005年には中国がエベレストの標高を測定。しかしいずれも誤差の問題が指摘されていました。
エベレストの正確なデータ
2019年、中国とネパールが三角測量とGNSSの組み合わせでエベレストの標高を精密に測定。エベレスト山頂のGPS装置とレーダーで岩の上の雪の深さを測り、地上からはセオドライトを使った三角測量を行いました。さらに2020年には中国がGNSS「北斗衛星網」で計測を行い、最終的に両国がデータを照合。ついに8848.86mという正確な数値が発表されたのです。
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世界一高い山②:マウナ・ケア
世界一高い山について語るとき、ハワイ島のマウナ・ケアこそが最も高いという説もあります。
マウナ・ケアの標高は4205m。エベレストの半分以下の高さしかありません。
では世界一高いとはどういうことでしょうか。
麓からの高さが最高
答えは、麓(ふもと)からの高さが最高ということです。
マウナ・ケアは海から隆起した火山。麓は海の底にあります。麓である海底から測定すると、その高さは1万203m。
一方、エベレストの麓はチベット高原。そこからの高さは3700mしかありません。そう考えると富士山と変わらないことに。
麓から山頂までが山だとすると、マウナ・ケアはエベレストを抜いて世界一高い山ということになるのです。
ちなみにこのマウナ・ケアの隣のマウナ・ロアは体積が世界一の山。
マウナ・ケアと合わせてあまりにも大きいため、ハワイ島は噴火を続けているにもかかわらず自重で少しずつ沈んで年々低くなっています。
陸上の麓からなら?
麓からの高さが最高というとき、マウナ・ケアではなくアラスカのデナリ(マッキンリー)が最高という見方もあります。
これは陸上の麓から最も高い山ということ。
北米大陸最高峰であるデナリの標高は6190m。世界の高い山トップ100にも入っていません。しかし世界の高い山がほとんどヒマラヤ山脈やカラコルム山脈などにあって麓が高地であるのに対して、デナリの麓は平地。
そのため麓からの高さは約5500mになります。
このことから、麓から見上げたときに世界一高く見える山はデナリとなり、実際に麓から登る登山ならデナリが世界一高いことになるのです。
世界一高い山③:チンボラソ
もうひとつ、世界一高い山はエクアドルにある火山「チンボラソ」だという説もあります。
チンボラソの標高は6268m。エベレストより2580m低くなります。
ではどういう理由で1位なのでしょうか。
地球の中心からの距離
答えは地球の中心からの距離です。
地球の中心を基準に測ると、エベレスト山頂までの距離は6382.3km。
チンボラソは6384.4kmで、2100mも高くなるのです。
これはなぜかというと、地球は高速で自転しているため、遠心力で赤道方向に少し膨らんでいるから。
エベレストの緯度は北緯28度であるのに対して、チンボラソは南緯1度で、ほぼ赤道上です。このため遠心力で膨らんでいる影響を大きく受け、世界一の高さになるのです。
ちなみにこのチンボラソはエクアドル最高峰で、19世紀までは世界最高峰だと信じられていた山。ところが今では車で4000m台後半まで上がることができ、「世界で最も短い日程で登れる6000m峰」と言われています。
登山技術的にも比較的容易なのに地球の中心から見た世界最高峰に登れるのは魅力的かもしれません。
地球の中心からの距離でエベレストは?
地球の中心からの距離で比較した場合、2位はペルーのワスカラン、3位もペルーのイェルバハと南米が上位を独占します。
そして5位にはタンザニアのキリマンジャロがランクイン。
エベレストは世界32位ということになってしまいます。
番外編:太陽系で最も高い山
今回は世界で最も高い山には3つの基準があるという話をお送りしましたが、では太陽系で最も高い山は何でしょうか。
それは火星のオリンポスです。
その標高は2万1230m。エベレストの2.4倍です。
このオリンポスは実は火山。裾野を含めた山の直径は550km以上で、宇宙からでもはっきりと丸い山の形やカルデラを見ることができます。
しかも死火山ではなく、今後も噴火する可能性があるそう。
カルデラは直径が60~80kmで、深さ3000m以上。逆にした富士山がほぼすっぽりと収まるサイズです。
これほどまでに火山が大きくなったのは、火星ではプレートの移動が起こらないため。溶岩が噴き上がるホットスポットの上に火山が長く留まるため、巨大に成長したのです。
まとめ
高さを比べるだけでもさまざまな見方がある山。
いつかは世界最高峰に登りたいと思っている方は、少し視点をずらして、まずはチンボラソやマウナ・ケアから挑戦してみるのも良いかもしれませんね。
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