楽しくスポーツをした後、特に怪我をしたわけではないが、身体に痛みが発生したことがある人も多いのではないでしょうか。
これを「筋肉痛」と言います。中には激しい筋肉痛を経験して、スポーツをすることが嫌になってしまった人もいると思います。
今回はそんなスポーツ後に誰でも経験したことがある「筋肉痛のメカニズムとその対策」について、アスレティックトレーナーの資格を持つ筆者の経験などから、ご紹介していきます。
筋肉痛の種類
一口に筋肉痛といっても、全て同じというわけではなく、筋肉痛は大きく2種類に分かれています。
「即発性筋肉痛」「遅発性筋肉痛」と呼ばれています。
それぞれの違いと特徴をご紹介します。
即発性筋肉痛
急性筋肉痛とも呼ばれるもので、運動した直後や運動している最中に発生する筋肉痛のことを言います。激しい運動をすることによって、筋肉が疲労し、過度に緊張状態が続きます。
そうすると、血流が悪くなるため、乳酸の生産に伴って筋肉の代謝物である「水素イオン」が溜まりやすくなって、イオンバランスが酸性に傾くことで痛みが発生します。
「即発性筋肉痛」は激しい運動だけでなく、長時間のデスクワークでも発生することがあると言われています。
遅発性筋肉痛
運動後数時間から1日くらい経過してから発生する筋肉痛を、「遅発性筋肉痛」と呼びます。
一般的に筋肉痛と呼ばれるものは、この「遅発性筋肉痛」のことを指します。遅発性筋肉痛は、不慣れな運動や、長い時間運動を実施した後に生じることが多いです。
遅発性筋肉痛は、自ら痛みが発生しているというものではなく、弱い痛み刺激に対して、正常よりも強い痛みを感じる「痛覚過敏」の状態です。
筋肉を圧迫、ストレッチ、収縮しても、通常痛みを感じることはありませんが、遅発性筋肉痛ではこれらの刺激によって強い痛みが発生します。
安静にしていると痛みはないですが、身体を動かすと痛いという状態はこういった特徴があるからです。
遅発性筋肉痛のメカニズム
遅発性筋肉痛を引き起こす原因として、普段使わない筋肉を使うことや、同じ動作を繰り返すと筋肉を構成している繊維が損傷します。損傷した箇所を修復する過程で炎症反応が生じて、血管から「ブラジキニン」という物質が放出されます。
このブラジキニンが放出されると、痛みを感じる神経の感受性が高まり、そこに刺激(圧迫・ストレッチ・収縮など)が加わると、脳に信号が伝わり、痛みを感じます。
これが遅発性筋肉痛のメカニズムです。
筋肉の収縮様式と筋肉痛の関係性
筋肉の収縮様式は、数種類に分かれており、負荷量が変わってきます。
「筋肉の収縮様式について」と「遅発性筋肉痛との関係性について」をご紹介します。
筋肉の収縮様式
運動における筋肉の収縮様式は、筋肉の発揮筋力と筋肉への負荷の関係から、「伸張性(エキセントリック)収縮(力<負荷)」「短縮性(コンセントリック)収縮(力>負荷)」「等尺性(アイソメトリック)収縮(力=負荷)」の3種類に分けられます。
「伸張性(エキセントリック)収縮」は筋肉が伸びながら力を発揮するものです。
「短縮性(コンセントリック)収縮」は筋肉が縮みながら力を発揮するものです。
「等尺性(アイソメトリック)収縮」は筋肉の長さが変わらない状態で力を発揮するものです。
もちろん負荷の大きさによって変わりますが、こちらは「伸張性(エキセントリック)収縮」「短縮性(コンセントリック)収縮」「等尺性(アイソメトリック)収縮」の順番で、怪我へのリスクが小さくなると言われています。
遅発性筋肉痛との関係性
遅発性筋肉痛を引き起こす運動には、必ず「伸張性(エキセントリック)収縮」、あるいは筋肉が引き伸ばされた状態での「等尺性(アイソメトリック)収縮」が含まれています。
「短縮性(コンセントリック)収縮」のみからなる運動で、遅発性筋肉痛はほとんど発生しないと言われています。
例えば、膝を伸ばす筋肉で考えると、長い階段を歩いて昇っていく時は、短縮性収縮を繰り返すのに対し、階段を下っていく時には、主に伸張性収縮が繰り返されます。
そうすると通常、遅発性筋肉痛は階段を下った翌日に生じますが、階段を昇った翌日には生じません。
遅発性筋肉痛の対処方法
遅発性筋肉痛が起こってしまったらどうしたらいいのでしょうか。遅発性筋肉痛は特に何の治療をしなくても5日ほどでなくなっていきます。
「遅発性筋肉痛が発生している間は、運動をしない方がいい」ということをよく耳にしますが、特に運動をしたからといって痛みが増すということはありません。
激しい運動やトレーニング後、適切な休息を取ることによって、元の水準以上に回復する「超回復」を狙って、運動を避ける場合もあります。
同じ部位をトレーニングし続けるのではなく、上半身をトレーニングしたら、次は下半身をトレーニングするなど、工夫をすることで遅発性筋肉痛の対処をすることが出来ます。
しかし、運動後に5日以上たっても痛みが軽減しなければ、遅発性筋肉痛ではなく、より重篤な状態の可能性があるため、専門医に診てもらいましょう。
まとめ
今回は、スポーツ後に誰でも経験したことがある『筋肉痛』のメカニズムとその対策をご紹介しました。
痛みが続くのは誰でも嫌なものです。しかし、遅発性筋肉痛は定期的に運動を行っていれば、発生しにくくなると言われています。突発的に運動やスポーツをするのではなく、普段から心がけて運動やスポーツをすることが大切です。
筋肉痛と上手く付き合いながらスポーツや運動を楽しんで下さい。