柔術と聞いてどのようなイメージをお持ちでしょうか。
柔術は柔道などと似ている競技であり、違いがわかりにくく感じている方もいるでしょう。
そこで、本記事では柔術の歴史やルールなどをわかりやすくご説明します。
これから柔術に挑戦したい方や他の競技との違いが知りたい方はぜひ参考にしてください。
柔術の起源・歴史について
柔術の発祥は日本であり、もともとは自己防衛の手段として誕生しました。大きな力や武器に頼らずに相手の体を操るのが柔術です。
現在、柔術と聞くとブラジリアン柔術をイメージする方もいるでしょう。ブラジリアン柔術は、1915年に柔術マスターである前田光世がブラジルに到着したことから歴史が始まります。
翌年に前田光世がガスタオン・グレイシーと出会い、柔術を伝授します。さらに、ガスタオン・グレイシーの長男であるカーロス・グレイシーはひ弱な少年であり、自分自身を守る術として柔術を身につけていきました。
その後、カーロス・グレイシーはリオデジャネイロに移住し、周囲の人々に柔術を指導することや、試合をこなしていきます。
そして、アカデミック・グレイシー柔術という道場を開きました。道場を開いた後は柔術が他の格闘技よりも優れていることを示すため、名だたる格闘技大会に出場してグレイシー一族の名声を高めていきます。
そのようなこともあり、グレイシー柔術への興味から多くの日本人がリオデジャネイロを訪れました。しかし、リオデジャネイロに訪れた日本人はグレイシー一族のように道場を運営し続けることはできませんでした。
これはグレイシー柔術と日本人の柔術はスタイルが異なっていたからです。そこで、カーロス・グレイシーは兄弟らと技術の改良に着手し、柔術の基本を完全に変化させました。
カーロス・グレイシーらの技術は独特であったため、国としてもアイデンティティを持つこととなりブラジリアン柔術と呼ばれるようになったのです。
ブラジリアン柔術は日本を含む世界中で実践される格闘技となり、統括組織も置かれています。
日本における柔術の歴史について
前述のとおり、柔術は日本発祥の武道です。日本で柔術の源流が生まれたのは、戦国時代ともいわれています。
戦国時代の戦闘は、集団戦であり長槍を使うケースがほとんどです。しかし、戦いが進むにつれて長槍の穂先が折れることや槍自体を失ったりすることがありました。
武器が無くなったとしても相手は刀などを持って襲いかかってきますから、対処が必要です。そこで生まれたのが組討ちであり、刀を持った相手に刀を使わずとも応戦する方法です。
戦国の組討ちがルーツとなり、以降、型として成立していきます。型には「当身技」と呼ばれる相手の急所を突く、蹴る、殴るといった技も含まれます。
それ以降、江戸時代までは武士の嗜みとして柔術が取り組まれ、いくつもの流派が誕生していきました。明治維新以降は西洋文化の普及とともに柔術が廃れていくものの、地方では娯楽として楽しまれていたとのことです。
現在、日本には一般社団法人全日本柔術連盟(JJFJ)や一般社団法人日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)、スポーツ柔術日本連盟(SJJJF)などの団体があり、柔術の普及や技術向上に努めています。
柔術と関連のあるスポーツ・派生したスポーツ
柔術と関係のあるスポーツとして柔道があります。柔道は柔術が廃れてきた明治時代に加納治五郎が生み出しました。
加納治五郎は柔術のさまざまな流派について研究し、良い部分を取り入れ、自分の創意工夫を加えた形で柔道を誕生させます。
また、加納治五郎は従来の柔術のように戦闘に活用する技術ではなく、心身の鍛錬を目的として柔道を興しています。これを講道館柔道と呼んでいます。
その後、警察や教育の現場でも取り入れられ、オリンピック種目にもなっています。
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柔術の競技人口について
柔術の競技人口は増加傾向といえます。ブラジリアン柔術の競技人口は3万人ほどであり、国内の柔術組織には多数の団体が加盟しています。
たとえば、一般社団法人日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)には300弱の団体が加盟しています。今後も柔術の競技人口が増えていく可能性は大いにあるでしょう。
柔術のルールについて
ブラジリアン柔術は、最低8m×8mの試合場にて試合が行われます。試合場の中央の18枚のマット上を対戦エリアとして、その周囲に色の異なる14枚のマットを敷き、セーフティエリアとします。
試合では1名または3名の審判が立ち会い、勝敗を決めます。関節技や絞め技であるサブミッションかポイントシステムにより勝敗が決まり、引き分けはありません。
代表的なサブミッションには、腕ひしぎ十字固め、アームロック、フットロックなどがあります。
ポイントシステムは、有効となる動作(技)をした場合に2〜4ポイントが与えられ、ペナルティーもカウントされます。ポイントの獲得まで至らなくとも、技の効果があった場合はアドバンテージが与えられます。
なお、ポイントで勝敗を決める際は、以下の優先順位で決めます。
1.ポイントの合計が多い
2.アドバンテージが多い
3.ペナルティーが少ない
以上について全て同数だった場合は、審判員がより積極的に戦った選手を勝利と判定します。また、試合時間は段位により異なり、5〜10分間です。
階級は最も軽いルースター級からオープンクラスまでの全10階級となっています。試合では道着やユニフォームを着用します。
柔術の国際的な大会について
国際ブラジリアン柔術連盟(IBJJF)は、定期的に国際大会を開催しています。
また、アスリートランキングを定めており、選手は今シーズンと過去2シーズンの各種国際大会においての成績からポイントが与えられ、ランキングが決まります。
さらに獲得したポイントによって、世界選手権や欧州選手権への出場権を得ることになります。
世界から見た日本女子柔術&日本男子柔術の強さのレベル
特に日本女子柔術のレベルは世界的にみても高いといえるでしょう。国際ブラジリアン柔術の最高レベルである黒帯において、2014年から2018年まで連続して世界王者を輩出しています。
2014年は女子ルースター級で八木沼志保選手が優勝、2015年から2018年まで湯浅麗歌子選手が女子ライトフェザー級や女子ルースター級で世界王者に輝きました。
茶帯になると日本男子柔術からも世界王者が誕生しています。2005年のフェザー級、佐々幸範選手から2015年のルースター級、橋本知之選手など10名の世界王者が生まれました。
このように世界から見た日本柔術家のレベルは安定的に高いと考えられます。
まとめ
柔術はブラジリアン柔術が有名であり、日本で誕生した競技ではないように思えます。しかし、柔術の発祥は日本であり、現在も世界レベルの選手を輩出しています。
柔術は柔道の起源となる武道であり、競技人口も増加傾向です。国際大会が開かれるなど、スポーツとしても確立されています。
本記事によって柔術の理解が深まれば幸いです。
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