子供の頃、皆さんはどのような科目が一番得意だったでしょうか。
どの教科も得意だったという人もいるでしょうし、逆にどれもこれも苦手だったという人もいるでしょう。
同じ科目の中であっても、漢字は苦手だったけれど音読は得意だったという人、理科の実験は好きだったけれど星座などを覚えるのは苦手だった、などという人もいるのではないでしょうか。
そんな子供達の習う科目の中で、得意な人と苦手な人が最も両極端になりやすいのが体育です。
運動神経が良い子は、座って行う授業よりも楽しみで仕方がないなんてこともあるでしょうし、逆に運動が苦手な子は憂鬱でたまらないということもあるでしょう。
そんな体育と切っても切り離せないものが、運動会や体育祭といった行事です。
大活躍できる晴れ舞台だった人もいれば、どうやって休もうかと悩んでばかりだった人もいるのではないでしょうか。
小学校の定番の“運動会の種目”というものは様々にありますが、特に組体操が記憶に残っているという人は少なくないのではないでしょうか。
運動会のラストを飾る、まさに花形の種目でもある組体操。
今回はその組体操の技や歴史、現状についてご紹介していきます。
組体操とは?
そもそも、組体操の定義とはなんでしょうか。普通に体を動かす体操とは何が違うの?と首を傾げる人も多いかもしれません。
最初に思い至ることは、“体操は1人でできるけれど組体操は1人ではできないものなのでは?”ということなのではないでしょうか。
その認識は間違っていません。
何故なら、一般的な体操を基礎にした上で、基本的に道具を使わず身体を用いて行う“集団演舞”であると定義されているからです。
ちなみに正式な名称を“組み立て体操”と言うのですが、一般的には“組体操”という呼び名で広まっていますし、その名前で覚えている人も多いことでしょう。
実は組体操と呼ばれるものは元々別に存在しており、しばしば混同や誤解を招く結果になっているようです。
本来組体操と呼ばれるものは、パートナー・エクササイズという名前で呼ばれる2人以上で行なう動的な体操を指しているからです。
現在組体操という名前で知られる“組立体操”は、人間が2段、3段と体を積み上げていき造形美を表現する「静的」な運動であるとされています。
対して元々の“組体操”は、2人以上で組んで互いの力を利用し、動くことによって体操を行う「動的」な運動であり、まったく目的が異なっているからです。
実際、運動会で披露される“組体操”はしばしば“絵になる”と表現されることがあります。
何人もの生徒達が組み上がったり、それぞれのポジションについて全体での演出を行ったりする“マスゲーム”は、多人数の連携があって初めて成り立つ造形美と言えるでしょう。
組体操の歴史
そんな組体操は、いつ頃始まったものなのでしょうか。
最初の組み立て体操=組体操は、なんと紀元前2000年の古代エジプト文明の壁画でそれらしいものが見つかっていると言います。
中国でも、漢の時代の土偶にそういったものの表現が見られるようです。
さらに欧州では中世以後のイタリアでお祝いの日などに披露されることがあり、19世紀にもなるとドイツにおいて、現在に近い形態の組体操が盛んに行われたと言います。
さらに19世紀半ば頃にもなると、ドイツで国民の健康と軍事教練を兼ねてみんなで行なう体操運動が盛んに行われるようにもなりました。そして、第一次世界大戦を前に欧米諸国にも広まっていったことから、日本にも明治初期の頃に伝播してきたのだそうです。
組体操の代表的な技とは?少人数版!
そんな組体操には、どんな技があるのでしょうか。
組体操というとクラスみんなで大きなピラミッドやタワーを作るイメージが強い人が多いかもしれませんが、それ以外にも様々な技が存在しています。
一人で行う組体操の技というものがあったのを、覚えている人もいるかもしれません。
例えば、ブリッジ。マット運動の体操でもやった覚えがいるという人は多いことでしょう。
地面に寝て、両手両足をつき、海老のように背中を逸らせて腰を浮かせます。
腰を痛めないように注意する必要がありますが、多人数で同時にブリッジを行えばなかなか見た目も華やかなものとなるでしょう。
同じく、一人トンボという技もあります。片手と足を地面につき、もう片方の手をぴんと空高く伸ばして静止します。
ヨガのポーズでもおなじみであり、多人数で同時に行うことで統一された美しい姿を表現することができるでしょう。
また、二人で組んで行う技もあります。サボテンと呼ばれるものもその一つ。
中腰に屈んだ一人の両膝に、もう一人が両足をかけて立ち、下の一人が落ちないように支えます。
上に乗った一人が両手をぴん、と左右に伸ばしてポーズを決めます。二人の息の合った連係が試される技と言えるでしょう。
他にも、電柱と呼ばれる二人技を覚えている人も多いかもしれません。
肩車と言えば、イメージがしやすいことでしょう。一人がもう一人の足の間に頭を入れて立ち上がらないと成功しない技です。
上の人の体重が軽く、かつ持ち上げる側の人がある程度力持ちでないと行うことができず、子供の頃持ち上げられなくて苦労したという証言も数多く聞かれます。
立つ時は膝の皿をがっちり抑えないと危険なので、注意が必要です。
組体操の代表的な技とは?多人数版!
では、組体操の花形と呼ばれる大技にはどのようなものがあるのでしょうか。
組体操そのものが運動会のラストに予定されることが多く、その中でも多人数の大技は最後のフィナーレに持ってくる傾向にあります。
代表的なもののひとつが、ピラミッド。どれくらいの高さを積むのかによって人数が変わってきますが、四段の場合は10人の生徒が必要となります。
さらに段を積む場合は、より多くの生徒が必要になってくることでしょう。
四つんばいになった生徒達がどんどん上に積み上がっていくという技です。
どうしても屋外で行うため、一番下の生徒は両手両足に砂利が食い込んで痛い上、上の生徒達の体重がのしかかってくるため相当しんどい思いをすることになります。
同時に、上に乗る生徒も生徒で、高い場所に少しでも早く、安全に上る技術が求められることとなります。
もう一つ知られている技の一つが、タワーと呼ばれるもの。
10人で行う三段タワーが最も知られているかもしれません。
一番下の生徒達が円陣を組むように肩を組んでしゃがみ、その上に中段役の生徒達が登って同じく肩を組みます。
最終的には一番上の生徒が立ってポーズを決めます。
こちらも、下の生徒ほど重さの不可がかかってきつい上、上の生徒は不安定な足場でバランスを取らなければいけないため、ピラミッド以上に危険が伴うとされています。
技術も必要であり、安全には充分な配慮が求められるものの、だからこそ完成させた時の達成感は圧巻の一言に尽きるでしょう。
クラス一丸となって作り上げるものであるため、生徒達の間に大きな連帯感が生まれるという狙いもあるのではないでしょうか。
組体操の現状は?
そんな組体操が体育に組み込まれるようになったのは、1951年度版の中学・高校用指導要領からとされていいます。
当初は3段ピラミッドなどの図解が掲載されていたものの、以降の記載は無くなっており、運動会や体育大会のパフォーマンスとして取り入れることが基本となっていきました。
さらに、動画投稿サイトyoutubeにて、大阪府八尾市立中学校の体育祭で行われた10段ピラミッドが崩れる映像が流れたことなどをきっかけに、組体操の危険性が問題視されるようになっていきます。
運動会や体育祭で、生徒の意思を問わず強制的に参加させられるということへのマイナスのイメージもあったこともあり、現在は組体操そのものを行わない学校も増えています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。パフォーマンスの素晴らしさ、華やかさなどから長年運動会や体育祭の花形とされてきた組体操。
しかし、いくら連帯感が養える競技といっても、安全性が充分に考慮されるべきであるのは間違いありません。
時世にあわせ、生徒達の個性や多様性に合わせた様々な対策も必要となってきます。
エアーマットを使っての安全対策など、今後は従来の形態に囚われず、安全性により配慮した新しい組体操の形を模索していくべきなのかもしれません。
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