野球にはさまざまなデータがあります。
その中で誤解している人がとても多いのが、長打率。
打率は安打が出る確率ですから、長打率は長打を打つ確率と思われがちですが、実は違います。
では長打率とはどのようなものでしょうか。
今回は長打率の意味と計算法をご紹介します。
長打率の意味と計算方法
そもそも長打とは、2塁打、3塁打、ホームランのこと。
シングルヒットの単打に対する言葉です。
この言葉があるため長打率は長打を打つ確率と思われがち。
しかし実際には長打はどれも同じ価値ではなく、2塁打よりも3塁打の方が価値は高く、ホームランはさらに価値が上になります。
そこで、1打数あたりに稼いだ塁の平均値を示すのが長打率。
塁を進むほどにその数字は上がっていきます。
長打率の計算方法
長打率の計算式は以下のようになります。
長打率 = 塁打数÷打数
塁打数は、単打=1、2塁打=2、3塁打=3、ホームラン=4として計算。
打数は全ての打席数から犠牲バント、犠牲フライ、フォアボールとデッドボール、打撃妨害と走塁妨害を引いた数になります。
例えば打席に入ったのが5回で、そのうち1回が2塁打、1回は送りバントで、残りの3打席が凡退だった場合、送りバント分は打席数から引かれて打数は4。
塁打数は2なので、長打率は2÷4で0.5となります。
長打率は率という言葉を使いますが、1.00を超えることも。
例えば2打数1安打でホームラン1本だった場合、長打率は4÷2で2.00。
全打席ホームランだった場合は4.00で、これが最大値となります。
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長打率の記録
ではプロ野球で長打率が1.00を超えている選手は存在するのでしょうか。
プロ野球の通算記録とシーズン記録のランキングを見てみましょう。
通算記録
生涯通算の長打率ランキングがこちら。
順位 | 選手名 | 長打率 | 期間 |
1 | 王貞治 | .634 | 1959~1980 |
2 | カブレラ | .592 | 2001~2012 |
3 | 松井秀喜 | .582 | 1993~2002 |
4 | 落合博満 | .564 | 1979~1998 |
5 | ローズ | .559 | 1996~2009 |
6 | ブーマー | .555 | 1983~1992 |
7 | 中西太 | .553 | 1952~1969 |
8 | リー | .5419 | 1977~1987 |
9 | 山本浩二 | .5416 | 1969~1986 |
10 | 小笠原道大 | .5399 | 1997~2015 |
0.6を超えているのは世界のホームラン王、王貞治氏のみです。
シーズン記録
一方、1シーズンの長打率ランキングはこちら。
順位 | 選手名 | 長打率 | 年度 |
1 | バレンティン(ヤクルト) | .779 | 2013 |
2 | バース(阪神) | .777 | 1986 |
3 | 落合博満(ロッテ) | .763 | 1985 |
4 | 王貞治(巨人) | .761 | 1974 |
5 | カブレラ(西武) | .756 | 2002 |
6 | 王貞治(巨人) | .755 | 1973 |
7 | 落合博満(ロッテ) | .746 | 1986 |
8 | 小鶴誠(松竹) | .729 | 1950 |
9 | 王貞治(巨人) | .725 | 1976 |
10 | 王貞治(巨人) | .723 | 1967 |
シーズン単位で見ても0.8を超えた人はいません。
計算では1.00を超えることもあるとはいえ、現実には1打数につき1つの塁を奪うのも難しいということが分かります。
長打率の目安
では長打率はどのくらいの数字になれば良い選手だと評価されるのでしょうか。
評価する団体や会社によっても微妙に違ってきますが、以下のような評価となるのが一般的です。
長打率 | 評価 |
.500〜 | 非常に優秀な主砲 |
.440 | 優秀な長距離打者 |
.380 | 平均的な打者 |
.320 | 打者として問題あり |
.260 | 打者としてかなり問題あり |
プロ野球全体の実際の平均値も.384(2020年)で、この評価の通りとなっています。
長打率の問題点
長打率はより多くの塁打を稼ぐほど数字が上がるのは事実。
しかし一方で、単打も1として計算に入れるため、純粋に長打力を測れないという意見もあります。
例えば100打数で40本の単打を打った人の長打率は.400。
100打数で10本のホームランを打った人の長打率も.400です。
これでは足の速さを武器に内野安打を稼ぐタイプのバッターとホームランバッターが同じ長打率になってしまいます。
IsoP
そこで登場するのが、長打力を評価するもう一つの指標、IsoPです。
IsoPはIsolated Powerの略。
バッターの純粋な長打力を、以下の計算式で算出します。
IsoP = 長打率ー打率
例えば前述の100打数で40本の単打を打ったバッターは、長打率が.400で、打率も.400。
.400ー.400で、IsoP=.000です。
一方、100打数で10本のホームランを打ったバッターは、長打率が.400で、打率は.100。
.400ー.100で、IsoP=.300です。
またIsopは、長打率の計算より塁1つ分減らし、単打=0、2塁打=1、3塁打=2、ホームラン=3として計算すれば
IsoP = 塁打数÷打数
の計算式で求めることもできます。
より純粋に長打力を知りたいときは、IsoPを参考にした方が良いかもしれません。
まとめ
ホームランや3塁打など、長打の多いバッターはチームへの貢献度も高く、観ていても魅力的なもの。
長打力を測る指標である長打率やIsoPを見れば、そのバッターにどれくらい長打を期待できるかが分かります。
野球観戦の際にはこれらの指標もぜひ参考にしてみてください。
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