どこよりも熱くお届けするスポーツコンテンツ

NEW POST

スポスルマガジンの最新記事

「子供とスポーツ」を考える

子ども達への効果的な伝え方いろいろ・2【くぼっちコラム】

前回、「子ども達に対してどういう伝え方をしていくべきか」というテーマで書きましたが、今回はその続きとして、「具体と抽象」という内容に絞って書いていきます。

具体と抽象

物事を伝えるときに、具体的に事細かく説明しながら伝える方法と、ニュアンスを交えながら、ふんわりと伝える方法があると思います。

1から100まで全て事細かく伝える「具体」と、こんな感じ~くらいなテイストでふんわりと伝える「抽象」と。

もちろんどちらかだけということではなく、このふたつの間をうまく取りながら伝えていくのが、きっとベストなのでしょう。

ただ今回は、「日本人の子どもに伝えるのならば、しかもサッカーならば、できれば抽象的に伝えたいよね」という内容で書いていきます。

あくまでも「こういう考えもありだよね」くらいの感覚で読んで頂ければと思います。

具体的に伝えてしまうことの弊害

まず前提として持っておかなければいけないのは、あくまでも日本の子ども達に伝えるならばということと、サッカーというスポーツが持つ特性、このふたつです。

日本人は、とかく「言われたことを全てやろう」としがちな習性を持っていないでしょうか。

もちろん全て一括りにするわけではないですが、学校では先生の話を椅子に座ってちゃんと聞くことが良しとされ、親、先生、コーチなどの大人の言うことはちゃんと聞きなさい、と言われて育つ。

例えば、学校の授業の初めに先生が「今日はこんな授業をやります」と言ったときに「それ、どういう狙いがあってやるんですか」と聞く日本人の小学生はまずいないでしょう。

サッカーの現場でもそう。コーチが「今日はこんな練習をやる」と言ったとき、「それ、何の意味があるの」と聞けるような小学生、まずいないですよね。

しかし、ヨーロッパの子どもはそこで疑問に思ったらちゃんと質問ができる。実際に僕もそういう場面に出くわしたこともあります。

このように主体性があり、大人に言われたことだとしてもそれに疑問を持ったのならば素直に質問ができ、それを大人が許せるような土壌が日本に当たり前のようにあるのならば、伝えたいことを1から100まで事細かに伝えたとしても構わないでしょう。

しかし、日本はまだそういう土壌ではありません。それは多くの人が認めるところでしょう。

なのに、事細かに全て「これはこうで、ここはこうやって」と全て具体的に教えたり指示を出してしまったら。

それに対し納得いかなくても選手はそのままやろうとし、自分で考えたり取捨選択したりせずに、言われたことだけをやろうとしてしまいがちになってしまう。

はたしてそこに、個性が入る余地はあるでしょうか。

なので日本人の子ども達に「具体的に伝える」ことは、なるべくならば避けたほうがいいのではないでしょうか。

抽象的に伝えることのメリット

そしてもう一つ。サッカーはとても自由なスポーツであるという特性を忘れてはいけません。

そこを踏まえるのならばなおさら、具体的に伝えるのではなく抽象的に伝えたほうがきっといいです。

しかしサッカーはチームスポーツですから、自由といえど、一人一人が全て好き勝手にそれぞれのやりたいことをやればいい、というものでもありません。

あくまでもチームとしての方向性は共有しないといけませんし、どう勝つか、どう相手を攻略するかなどのチームスタイルはあるべきですよね。

あくまでもその中で自由にやるということ。そしてここからが、抽象的に伝えることの出番です。

例えばコーチが「ここはこうやれ」ではなく「ここでは、だいたいこんなふうに」というふうに、あえてぼかして伝えるとします。

何も伝えていないわけではなく、一応「こんなふうに」とは伝えてる。

そうすると、その「だいたいこんなふうに」の解釈の仕方や度合いは、きっと選手それぞれで変わってきますよね。

「だいたいこんなふうに」というチームの共有事項はあるにせよ、その表現の仕方が、選手それぞれで違う。その違いこそがまさに自由ということだし、選手それぞれの個性でもあると思うのです。

例えば「ゆったりとプレーしよう」と言えば、ある選手は自分の走る速度そのものをゆっくりゆったりとさせるかもしれないし、ある選手はパスをさばくリズムに緩急をつけ、チーム全体に「ゆったり」をもたらそうとしてくれるかもしれません。

でも、ゆったりは共有してる。その表現の仕方に違いがあったとしても、たいしてバグは起こらない。

むしろ選手それぞれの個性が発揮されて、それをうまく組み合わせることに、監督やコーチは力を注げばいいのではないかと思うのです。

サッカーは自由なもの。でも、チームでやるもの。

相反するように思えるここを繋ぐツールとして、抽象的に伝えることはとても有効な手段なのではないでしょうか。

最後に

いかがでしたでしょうか。

冒頭にも書いたように、具体が絶対ダメで抽象が絶対に素晴らしいということではなく、一番いいのはその間を取って、指導者がうまくサジ加減をしていくことなのでしょう。

しかし以前も書いたように、物事には前提や背景、そこに至るまでのストーリーがあり、それを無視しては考えられません。

目の前の選手達が抱えるそれらをしっかりと理解して、どう伝えていくのがベストなのかを、指導者は丁寧に考えていく必要があるのだと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【関連記事はこちら】⇩
子ども達への効果的な伝え方いろいろ・1



  • この記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
くぼっち

くぼっち

見方と考え方が変われば違う景色が見える。違う自分になれる。現実の殻を破るのだ

20年以上サッカーのプロコーチをしてきましたが、サッカーよりも好きなものがたくさんありすぎて、その影響か、サッカーを別の角度から見たり、疑ったり、これまでの見方を変えてみるという悪癖があります。でもそうすると、これまでとは全く違う景色が見えたり、新たな興味も湧いてくるんですよね。理想が現実を塗り替えていく、そんな世の中にしたいです。

  1. サッカーにおける「攻撃」とは・1【くぼっちコラム】

  2. 指導者と選手の素敵な関係性【くぼっちコラム】

  3. 育成年代においての試合の「やり方」【くぼっちコラム】

PAGE TOP