オリンピックなどで短距離走や長距離走、ハードルなどの競技を見て盛り上がったという人はとても多いのではないでしょうか。
しかし、実はマラソン競技の中には、冬のオリンピックで行われる競技も存在しているのです。
それが、クロスカントリースキーです。
体力はもちろんのこと、スキーでもあることから上手に滑るための高い技術も求められる競技となっています。
実はこのクロスカントリースキーはオリンピックのみならず、パラリンピックの競技としても登録されていることを皆さんはご存知でしょうか?
今回は、パラリンピック競技としてのクロスカントリースキーについて、詳しく解説していきます。
パラリンピックのクロスカントリースキーってどんな競技?
クロスカントリースキーという競技について、あまり詳しく知らないという人もいることでしょう。
雪の上でスキー板を使ってマラソンをする競技、というぼんやりとした認識の人も少なくないかもしれません。
このスポーツは、ノルディックスキーに分類される競技の一つです。
専用のスキー板とスキーポールを使い、起伏のある雪上のコースを滑走してタイムを競うのです。
パラリンピックのクロスカントリースキーの場合、滑走距離ごとに3つのレースがあります。
スプリント、ミドルディスタンス、ロングディスタンスです。
さらに、走法別にクラシカルとフリーの2種類が存在しています。
これらの滑走距離と走法の組み合わせによって種目が決まってくるのです。
スプリント
スプリントというのは、1km前後の短距離を滑走し、ゴールまでのタイムを競う種目となっています。
他の距離でも同じですがクロスカントリースキーでは、一見先にゴールした選手であったとしても、障害の差によって生じる最終的なタイム差によって順位がひっくり返ることがあるので注意が必要です(詳しくは以降の項目で詳しく解説します)。
ちなみに、パラリンピックではスプリントの距離のみ予選があります。
ミドルディスタンス|ロングディスタンス
ミドル・ディスタンス(中距離)、ロング・ディスタンス(長距離)の2つは予選がないため、一度のレースで最終成績が決まることになります。
前の選手と30秒の間隔を空けて順番にスタートしていき、パーセンテージシステムで算出されたタイムによって順位が確定します。
スプリントとは違い、滑走距離がカテゴリーや男女によって大きく異なるのも特徴です。
例えばミドル・ディスタンスのスタンディングカテゴリーの場合、男子は10kmであるのに対して女子は7.5kmと大幅に距離が短くなっているのです。
同じミドル・ディスタンスでも、シッティングカテゴリーの場合は男子が7.5kmであるのに対して女子は6kmと定められています。
また、距離別の種目とは別にリレーもあります。
混合リレーとオープンリレーの2つがあり、男女や障害の区別はなく、2~4名で構成されたチームで競い合うという団体戦となっています。
オリンピックとパラリンピック、2つのクロスカントリースキーの違いとは?
最大の違いは、カテゴリーによって分けられていることと、障害の度合いによって細かなクラス分けがされていることでしょう。
カテゴリーは、スタンディングとシッティング、そしてビジュアリー・インペアードの3つの種類に分けられています。
スタンディングというのは立った状態で滑ることができる選手のカテゴリーであり、下肢または上肢、もしくは上下肢に障害がある選手が該当します。
その中で、さらに細かく障害の程度によってクラス分けされ、このクラスが順位にも大きく影響してくることになるのです。
例えば、スタンディングカテゴリーの選手のうち、下肢障害の選手のクラスは3段階に分けられています。
重い順にLW2、LW3、LW4の3つのクラスに分類されます。
同時に、上肢障害の選手のクラスもまた3段階で、重い順にLW5/7、LW6、LW8となっており、上下肢障害の選手のみまとめてLW9に該当するといった具合です。
シッティングのカテゴリーは、スタンディングと比べるとここまで細かくわけられているわけではありません。
下肢に障害があるために、立った状態で滑ることが難しい選手が該当します。
重度の順にLW10、LW10.5、LW11、LW11.5、LW12と分けられています。
つまり、どのクラスであっても数字が大きいほど障害の程度が軽いということなのです。
ビジュアリー・インペアード、視覚障害が該当するこのカテゴリーに至っては、クラスが3つしかありません。
B1、B2、B3であり、これも数字が小さなB1ほど重度ということになります。
B1は基本的に全盲の人が該当します。
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クロスカントリースキーの歴史とは?
そもそもクロスカントリースキーこそ、すべてのスキーの起源であるという説があります。
何故ならスキーとは、元々はスポーツではなく生活のための道具として用いられたものであったからです。
なんと、遡ること紀元前2500年。
スカンジナビア半島からベーリング海峡までのユーラシア大陸の積雪の多い地域で、狩りの際によりスムーズに移動する手段として、かんじきを長くして雪に沈まないようにしたクロスカントリースキーが用いられるようになったのが始まりだと言われています。
モンゴル・アルタイ山脈の洞窟には、人々がスキーをしている姿を描いた壁画も残されているのだとか。
生活の中で磨かれたスキーの技術は、人々が生きる為に欠かせないものとなり、そして時に戦うための武器ともなりました。
雪国では、軍事目的にスキーの技術を磨き、ノルウェーにはなんとスキー部隊も存在していたと言います。
そんなクロスカントリースキーが日本にやってきたのは、日清戦争の頃だったと言われています。
明治35年、世界規模でみても大きな遭難事故である「八甲田山雪中行軍遭難事件」が発生しました。
これに対して、ノルウェーの王様からお見舞いとして贈られたものが、スキー板2台であったと言います。
これは、オーストリアのレルヒ少佐が上越高田にてアルペンスキーを伝える2年前のことでした。
パラ競技としてのクロスカントリースキーの正確な始まりはわかっていませんが、少なくとも1976年の冬季パラリンピックで初めて実施されたことだけは間違いないようです。
ちなみに、長野パラリンピックでは初めて知的障害者のクラスでクロスカントリーが種目として採用されました。
しかし、現在クロスカントリースキーに知的障害者のカテゴリー、およびクラスは残っていません。
これは、この次に行われたシドニーの夏季大会において、スペインの知的障害者バスケットボールチームが健常者を紛れ込ませた上で優勝したという不正が発覚したことが原因です。
これにより、パラリンピックから知的障害者の種目は全て排除されることとなってしまいました。
クロスカントリースキーも例外ではなかったのです。
パラリンピック・クロスカントリースキーの特別なルールについて
パラリンピックのクロスカントリースキー特有のルールとして、パーセンテージシステムというものがあります。
これは、障害の種類や程度が違う選手達が、平等に同じレースで競い合うことができるようにと工夫された仕組みなのです。
各カテゴリーの中で、障害のレベルに応じて分けられたクラスごとに係数(最大100%)が設定されています。
最終的には、スタートからゴールまでの実走タイムに対し、その係数を乗じた計算タイムで順位が決定されることになるのです。
即ち、軽度の障害のA選手が1位でゴールしたとしても、2位の選手が重度の障害の選手であった場合、計算タイム上では順位が逆転しB選手の優勝となる可能性があるということなのです。
パラリンピックにおける、クロスカントリースキーの日本人選手の活躍!
パラリンピックのクロスカントリースキーにおいて、日本人選手は世界に誇れる素晴らしい成績を収めています。
例えば、2022年の北京冬季パラリンピックにおいて、日本代表選手団の旗手を務めている21歳の川除大輝選手は、クロスカントリースキー男子20㎞クラシカルにて金メダルを獲得しました。
日本人選手は過去にも輝かしい戦果を挙げています。
バンクーバー大会と平昌大会では、新田佳浩選手が同じく金メダルを獲得しています。
新田佳浩選手は、1998年長野大会から北京大会まで7大会連続出場という偉業も成し遂げました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
夏の太陽の下で走る陸上競技とは一風変わった、雪の上のマラソン。
それがクロスカントリースキーです。
今や障害を乗り越え、あるいは自分の力に変えて世界で活躍している選手は日本人に限らずたくさんいます。
興味を持った方はぜひ、さらに詳しくチェックしてみてください!
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