力学的技術を使い、相手の重心を制御することで、大きな力を使わずに相手を制する合気道。
その技の数は、一説には2884本もあると言われています。
なぜそのように膨大な数になるのでしょうか?
そして合気道の達人は2884もの技を全て覚えているのでしょうか?
今回は、合気道の技をご紹介します。
合気道の技が膨大になる理由
そもそもなぜ合気道の技は2884本などというとんでもない数になるのでしょうか。
それは合気道の技が、スタンス×攻撃方法×技という3つの掛け算で増えていくからです。
スタンス
スタンスというのは、自分と相手との位置関係のこと。
例えば以下のようなスタンスがあります。
・立技:相手も自分も立っている
・座技:相手も自分も座っている
・半身半立ち:相手は立ち、自分は座っている
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攻撃方法
合気道でいう「攻撃方法」は自分の攻撃方法ではなく、相手からどのように攻撃されているかということ。
合気道では自分から仕掛けることはなく、相手の攻撃に合わせて技をかけるのが基本です。
攻撃方法には例えば以下のようなものがあります。
・片手持ち:片手で手首付近をつかまれる
・両手持ち:両手でそれぞれの手をつかまれる
・諸手(もろて)持ち:片手を両手でつかまれる
・後ろ両手持ち:後ろから両手をつかまれる
・正面打ち:顔の眉間付近に向かって手刀で切り込んでくる
・横面打ち:顔のこめかみに向かって手刀で切り込んでくる
・突き:拳でお腹や顔にまっすぐパンチしてくる
他にも肩をつかまれた場合、後ろから抱きつかれた場合など、多くの攻撃が想定されていて、それぞれに対する技があるのです。
【合気道】技① 投げ技
合気道の投げ技は相手の腕を掴み、前に押し投げるようにして投げる技。
柔道のように担いだり足をかけたりして真下に倒すことはありません。
そのため柔道のように一撃で相手にダメージを与える技にはなりにくいのが特徴。
護身術など実践的な場面では投げた後に後述の押さえ技で相手を動けなくするのが一般的です。
数多くの種類がある中から代表的なものをご紹介します。
小手返し
小手とは薬指の第3関節のことで、その小手をひねる技です。
人間は小手をひねられると腕ごとひっくり返ってしまい、簡単にバランスを崩します。
人間の骨格の仕組みを利用した、合気道の基本がよく分かる技です。
四方投げ
相手の手を額のあたりまで持ち上げながら踏み込んで相手の背後に回り込み、そのまま下に向かって重心を下げる技。
これによって後ろ向きに相手を倒すことができます。
回転によって相手をさばくもので、体さばき、足さばき、手さばきといった合気道に不可欠な要素がいずれも入っている技です。
入り身投げ
入り身投げも合気道の代表的な技。
相手が攻撃してきた時に体をさばきながら相手の横に回り込み、肩口をつかんで回転しながら自分の懐に引き付けます。
すると相手の重心が後ろに傾くので、片手をかざして相手の顎を上げると簡単に背中の方へ倒れるのです。
隅落とし
隅落としは護身術としても有効な技。
相手の内側に入り込み、相手の腕に手を乗せて、自分の重心を下に落とします。
その重みで相手のバランスを崩し、そのまま倒すのです。
3強投げ
相手の腕をひねって逆L字形に固めた状態で相手の懐に入り込み回転する技です。
この体勢を作ると相手がバランスを崩すので、そのまま投げます。
またひねりを強くすれば相手はかなりの痛みを感じるため、護身術としても有効です。
呼吸投げ
合気道の技で初心者が最も混乱するのが呼吸投げです。
正面打ち呼吸投げ、片手持ち呼吸投げなど多くの種類があるのですが、実は定義が曖昧。
関節を極めることなく体さばきと崩しで投げるもののうち、名前のついていない投げ技の総称が呼吸投げになるとも言われています。
また合気道の投げ技は全て呼吸法で投げるため、全ての投げ技が呼吸投げだという意見も。
かなりかっこいい技ですが、関節を極めず投げるため、高い習熟度が必要です。
【合気道】技② 押さえ技
相手を固めて動けなくする技が押さえ技です。
そのまま行うこともあれば、投げ技と組み合わせて行うこともあります。
1教
別名「腕抑え」。
相手の腕を返してわき腹を伸ばし、腹這いにさせて抑え込む技です。
以下のような種類があり、それぞれに裏と裏があります。
・正面打ち1教
・相半身片手取り1教
・逆片手取り1教
・座り技正面打ち1教
2教
別名「小手回し」。
1教と同じように相手の肘を返す際に小手を回すことで1教よりも関節をしっかりと固める技。
関節を固めることでより相手の自由を奪います。
こちらも以下のような種類があり、それぞれに裏と裏があります。
・正面打ち2教
・肩取り2教
・肩取り正面打ち2教
・諸手取り2教
3教
別名「小手ひねり」。
小手の上の肘を逆L字にひねって相手を崩し、制する技です。
これにも以下のような種類があり、それぞれに裏と表があります。
・正面打ち3教
・後ろ両手取り3教
・後ろ両肩取り3教
◯教という名前になっている理由
投げ技と違い、押さえ技は1教、2教・・・という名前になっています。
これは順に修練していくもの。
1教から習得していくことで人間の骨格や崩すべき部位が分かり、合気道の基本的な理屈が理解できるようになっているのです。
まとめ
スタンス×攻撃方法×技の掛け算となるため、膨大な数になる合気道の技。
しかし1つ1つを覚えなくても、相手を崩すポイントやタイミングを理解できれば、他の技はその応用でできるようになると言われています。
そしてどのような技でもかっこよく決めるためのポイントのひとつが、「流れ」です。
相手の攻撃を取り込んで自分の流れの中に巻き込み、相手の重心を制御して技をかける。
そのつながりを切らずに一連の流れで崩すと、相手は自由自在に振り回されて転がされることになります。
この流れが優雅に決まると、合気道の技はかなりかっこよく見えるはずです。