野球用語のスラッガーは、バッターのタイプを表す言葉。
バッターを表す言葉には「アベレージヒッター」や「クラッチヒッター」などがありますが、その中でも憧れる人が多いのが「スラッガー」ではないでしょうか。
語呂もかっこいいこのスラッガーという言葉、いったいどういう意味で、どういう語源なのでしょうか。
今回は、野球のスラッガーを調査。
スラッガーの意味や重要な指標、スラッガーという呼称に当てはまる名選手もご紹介します。
【野球】スラッガーとは
野球のスラッガーは英語では「Slugger」と書き、「長打力のある強打者」という意味です。
語源
スラッガーの語源は、英語の「slug」。「強く叩く、強打」という意味です。
これに「動詞+er」で「~する人」という意味が加わりますから「slugger」は、まさに「強く叩く人」「強打する人」という意味。
このことから、ボールを強く叩いて遠くへ飛ばせる強打者ということになるのです。
言葉のポイント
バッターは誰でもボールを打ち返してヒットにしようとするものですが、その中でもスラッガーにとって重要なのは打球を遠くへ飛ばす力があることです。
つまり長距離打者やホームランバッターのことをスラッガーと言います。
スラッガーの打順
100%そうだと言えるわけではありませんが、スラッガーは打順でいえば3番、4番、5番を任せられる選手。
一般的に打線の主軸と言われるバッターになります。
別名で「大砲」や「長距離砲」と呼ばれる選手はまさにスラッガーだと言えます。
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スラッガーの必要性
近年の野球では、スラッガーの必要性がアップしていると言われています。
例えばメジャーリーグ(MLB)では、これまで足の速いアベレージヒッターを配していた1番バッターにもスラッガータイプを起用することが増加しているのです。
その理由は投手力の上昇。
これまでは技巧を駆使してヒットを打ち、足で進塁するというのが定石でしたが、球速のアップや変化球の多様化で出塁自体が難しくなっています。そういった状況を解析した結果、近年はアベレージヒッターが塁に出る作戦よりも、一発狙いの長打力重視の方が得点できる可能性は高いという傾向に。
1番バッターからスラッガーを並べる戦術がトレンドになっています。
【野球】スラッガーに重要なOPSとIsoP
スラッガーはそのバッターの体格など、印象でつけられることが多い呼び名。
特にこの数値が良ければスラッガーだという厳密な定義はありません。
しかしホームランや打点、長打率の記録が優秀な選手はスラッガーと呼ばれやすい傾向があります。
その基準としてよく使われるのが、IsoPとOPSです。
OPS
OPSは野球をデータで解析するセイバーメトリクスの指標の一つで、On base Plus Slugging percentageの略。
OPSが高い打者はスラッガーと呼ばれることが多くなります。
OPSは出塁率+長打率で求められる指標。つまり長打力にプラスしてアベレージも必要です。
OPSが.900を超えればリーグを代表する強打者とされます。
IsoP
IsoPの高い打者もスラッガーに該当します。
IsoP(アイエスオーピー)とはIsolated powerの略で、長打率と打率の差のこと。式で表すと・・・
IsoP=長打率-打率
またこのように表すこともできます。
IsoP=(二塁打+三塁打×2+本塁打×3)÷打数
IsoPの最大値は3.00。シングルヒットが多いほど低くなり、数値が高いほどアベレージヒッターではなくスラッガー寄りということになっていくのです。
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【野球】スラッガーに当てはまる選手
では具体的にスラッガーと呼ばれる打者には、どのような選手がいるのでしょうか。
日本プロ野球の歴代スラッガーをご紹介します。
王貞治
王貞治選手は、通算868本塁打の記録を持つ世界のホームラン王。日本球界を代表するスラッガーです。
22年間の現役通算OPSは、脅威の1.080にもなります。4000打席以上打ってOPSが10割を超えているのは日本プロ野球の歴史で王選手だけ。
また打率.332、49本塁打、107打点で2年連続三冠王に輝いた1974年には、出塁率.532、長打率.761で日本プロ野球史上最高のOPS1.293を記録しています。さらにその前年のOPS1.2582は歴代2位です。
王選手は日本プロ野球の長い歴史の中でIsoPも突出した1位。打率.301、長打率.634で、IsoPは.333となります。4000打数以上の選手で通算.300を超えているのも王選手のみです。
もちろん本塁打王が歴代最多の15回というだけでも、最強のスラッガーであることが分かります。
松井秀喜
高校通算60本塁打の松井秀喜選手は当時からスラッガーのイメージがあった打者。開幕4番でスタートしたプロ4年目の1996年には、打率.303、38本塁打、OPS1.023を記録し、セ・リーグMVPを獲得しました。
その後50本塁打した02年の1.153など、5度もOPS 10割以上を記録。 日本での10年間の通算は332本塁打、OPSは.995で歴代2位になっています。
また打率.304、長打率.582で、通算IsoPは.278。
これは王選手、カブレラ選手に次ぐ歴代3位の記録です。
落合博満
史上最多3度の三冠王に輝いている落合博満選手は、本塁打王も5回獲得、2年連続50本塁打を記録しているスラッガー。
20年間で通算510本塁打、三冠王を獲得した1985年と1986年にはOPSでも1.2超えとなっています。
OPS10割超えは8回で、通算OPS.986は歴代4位。それでも落合選手は、「自分は真のホームランバッターじゃない」と言っています。
通算IsoPは.253で歴代8位。ちなみにIsoPがより上位の打者には、中村剛也選手や田淵幸一選手、大豊泰昭選手などがいます。
村上宗隆
現役選手でスラッガーと言えるは、日本代表の4番バッターでもあるヤクルトの村上宗隆選手。
歴代最年少で三冠王に輝いた2022年には、出塁率.458、長打率.710でOPSは1.168を記録しています。またIsoPの.392も2022年では断トツの数値。
5打席連続ホームランなども記録している村上選手が、今後どれほどのスラッガーになっていくのかにも注目が集まります。
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まとめ
投手の能力が上がるほどに必要性が増しているスラッガー。
落合博満氏は、ホームランは力ではないと語っています。
現役時代には、王選手も落合選手も、腕立て伏せや懸垂はほとんどできなかったそう。それでもホームランを量産できたのは、当たる瞬間にだけ力を入れるコツをつかんだからだというのです。
スラッガーを目指す人は練習を重ねて、ボールを強く飛ばすコツをぜひ見つけてください。
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