運動会の花形競技の一つが徒競走。
近年は競走ではなく手を繋いで一緒にゴールする学校も増えていますが、逆に「真剣勝負の場が必要」という声も多く挙がっています。
その徒競走。そもそもなぜこのような名前なのでしょうか?
短距離走やかけっことの違いは?
今回は運動会の徒競走について解説。
ルールや走り方のコツもご紹介します。
徒競走とは
まずは、意味がよく分からない「徒競走」という言葉から。
競走は分かりますが「徒」とは?
もしかして学生が走るから、生徒の徒なのでしょうか。
徒競走の意味
徒競走とは、短距離の競走で、主に運動会の競技を指す言葉です。
徒競走の「徒」は乗り物を使わずに足を使って歩くという意味。そのため歩くことを徒歩と言い、足を使って進む競走なので徒競走と言うのです。
ちなみに生徒の「徒」は弟子という意味になりますが、これも語源をたどると、歩く→歩兵→従う→弟子という意味の移り変わりがあったとされています。
かけっこ・短距離走との違い
では徒競走と、かけっこや短距離走に意味の違いはあるのでしょうか。
まずかけっこは徒競走と同じ意味です。
かけっこは駆け比べをより幼く表現した言葉。駆け比べはまさに徒競走のことで、かけっこは特に低学年の徒競走に使います。
一方、短距離走は大きく違うもの。
徒競走はその名の通り競走であるのに対して、短距離走はタイムを重視します。つまり徒競走は他人との戦い、短距離走は自分自身との戦いなのです。
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徒競走の昔の呼び名
徒競走という言葉が普及する前には、この競技はどのように呼ばれていたのでしょうか?
明治7年に海軍兵学寮で日本初の運動会が開かれるまで、短距離の競走のようなものは公式には行われたことがありませんでした。
イギリスの海軍を真似て行われた運動会ではさまざまな距離の競走が行われたのですが、その呼び名はとても変わったもの。
12歳以下の生徒が参加する150ヤード(約140m)の競走は「すずめのすだち」、300ヤード(約270m)の競走は「つばめのとびならひ」と呼ばれました。
当時の日本の教官は新しい競技の名付けにかなり苦労したようです。
位置について・用意の由来
徒競走という言葉もそうですが、「位置について・用意」という言葉も考えてみれば奇妙。なぜこのような言葉になったのでしょうか。
「位置について・用意」が正式なスタートの合図になったのは1929年から。
英語の「On your marks,Set」にピッタリな日本語を全日本陸上競技連盟(今の日本陸上競技連盟)が募集し、「位置について、用意」が選ばれました。
ではその前はどうだったかというと、最初は「がってんしょん」だったそうです。
これは英語のアテンション(注目)が覚えられず、「合点承知」のもじりで「がってんしょん」と言ったから。
その後、「いいか! ひい、ふう、みい」や「腰を上げて待て!」、「ケツあげろ!」などの掛け声を経て、「位置について・用意」になりました。
徒競走のルール
徒競走のルールはとてもシンプル。
注意が必要なのは、「位置について・用意・ドン」の部分となります。
スタートのルール
陸上競技の正式なルールでは、400mまでは「位置について・用意」の後に号砲が鳴らされます。
ちなみに400mを超える競技では「位置について」の後に号砲となりますが、いずれにしてもスタートできるのは号砲を聞いてから。
運動会では「用意」の後、なんとなくタイミングを測って号砲と同時にスタートする人もいますが、同時はフライングです。
いまだにスタートの合図を機械ではなく人間が行っているのも、タイミングを合わせる行為を防ぐため。
スタートは号砲を合図にすると決まっている上、人間の反応速度から考えて号砲から0.1秒以内にスタートすることは不可能です。
運動会でもちゃんと号砲を聞いてからスタートしないとフライングになるかもしれません。
組分け
徒競走はタイムではなく競走がメイン。そのため運動会では組分けが大きな意味を持ってきます。
この組分けは背の順や誕生日順などがありますが、近年は事前に測ったタイム順が一般的。
タイムの近い生徒が一緒に走ることで、誰でも勝てる可能性がある仕組みになっています。
徒競走の走り方のコツ
手を繋いでゴールする学校ならともかく、競走をする学校ならなんとかして勝ちたいもの。
そこで徒競走のコツをご紹介します。
スタートのコツ
距離が短い場合、重要なのはスタートダッシュ。
そのためのコツは「地面を思いっきり蹴る」という意識をなくすことです。
地面を蹴ろうとすると、体重が後ろにかかります。
これが間違い。
スタート時は逆に、前に倒れてしまうくらい前傾姿勢になり、前足に体重を乗せることが重要です。
これはスタンディングスタートでもクラウチングスタートでも同じ。
ギリギリまで前傾になって合図を待ち、号砲と同時に前に倒れます。
地面を蹴るのではなく、前に倒れる身体を足が止め続けるという意識で進んでいくのです。
カーブ
小学生のうちはカーブの走り方に慣れていない子がほとんど。
コースにカーブがある場合、身体が外側に膨らんでスピードが落ちてしまいがちです。
そうならないよう、本番の前に身体を内側に傾けて走る練習をしておくのがお勧め。これだけでかなりスピードが上がるはずです。
ゴールのコツ
小学生の徒競走でよく見られるのが、ゴール直前での逆転です。
これはゴールで気を抜いてスピードを落としてしまうことが原因。
ゴールを過ぎたところで止まろうとすると、実際にはゴール前にかなりスピードを落としてしまっていることが多いのです。
そこで「ゴールはゴールラインの5m先」と意識するようにします。
こうすれば最後まで全力で走ることに。
ライバルが気を抜いたら、ゴール前で逆転できるかもしれません。
まとめ
他の生徒と競い合うことになる徒競走。
しかし実際の順位は組分け次第だとも言えます。
速く走るのは多くのスポーツの基本。
順位だけにこだわらず、短距離走の精神で自分に挑戦することも重要ではないでしょうか。