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【MLB】労使交渉とは?解決策や今後の課題について徹底解説!

2021年末から2022年の3月にかけて野球ファンの注目を集めたMLBの労使交渉。
「ミリオネア対ビリオネアの争い」とファンを呆れさせましたが、この労使交渉は数年に1度の間隔で大きな話題になります。
それはいったいなぜで、そもそも誰と誰が労使交渉をしているのでしょうか。
今回は、MLBの労使交渉について解説します。

【MLB】労使交渉とは

一般的な企業の労使交渉は、会社の経営者側労働組合が行い、賃金アップや労働条件の改善などを目指します。
MLBの労使交渉も基本的には同じ。
球団オーナーなどで構成された経営者側であるメジャーリーグ機構(MLB)と、労働組合である選手会(MLBPA)が交渉を行います

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世界最強の労働組合

野球の選手会は労働組合なのかと疑問に思うかもしれません。しかしMLBの選手会は最初からオーナー側との労使交渉を目的に結成されたものです。
1960年代まで、選手たちは圧倒的に不利な契約条件で球団に拘束されていました。その状況を改善するために1965年に選手会が結成されると、翌年には全米鉄鋼労連から敏腕エコノミストを起用。
厳しい団体交渉を展開して、今では「世界最強の労働組合」と呼ばれています

ストライキとロックダウン

過去にMLBの労使交渉は何度も決裂し、オーナー側であるメジャーリーグ機構によるロックダウンや、選手会側によるストライキが行われてきました
1981年にはシーズン中の6月12日から8月1日にかけて50日間ものストライキが行われ、713試合が中止に。
オーナー側はスト保険に入っていましたが、その限度を迎えてしまったために交渉が合意に達したと言われています。

【MLB】労使交渉 2022年の主な労使協定

記憶に新しい2021年末からの労使交渉では、2022年3月まで99日間に及ぶロックアウトが行われました。選手たちは新たな契約を結べず、球団施設で練習もできない事態に。
しかしオーナー側の強引な交渉に世間から批判が集まったこともあって、結果的に選手会側が有利な条件で協定を結ぶことができました。
その具体的な内容をご紹介します。

有効期間

労使協定の有効期間は 2022年から 5年間で、2026年まで
前回は2016年 11月に合意した労使協定が 2021年 12月に失効したため、オーナー側がロックアウトを実施しました。
この有効期間が終わる頃、再び労使交渉やストライキ、ロックアウトの話題が注目を集めることになりそうです。

最低保障年俸

MLBの選手は、昇格後3年間は最低保障年俸での契約となります。
2021年の最低保障年俸は57万500ドルでしたが、2022年は70万ドルになり、その後は毎年2万ドル増額することで合意しました。

ぜいたく税

ぜいたく税の正式名称はCBT(競争的均衡税)
選手への合計年俸が基準額を超えたチームから徴収し、年俸総額が少ないチームに配分するという制度です。
ぜいたく税を払えば合計年俸が基準を超えることが認められ、数チームが実際に支払っていましたが、実質的なサラリーキャップ(年俸総額の上限を設ける制度)だとも言われています。
オーナー側はその基準額を引き下げることで年俸を抑えたい意向でしたが、選手会側は「FA市場が活性化しない」と反対。
結局、課税対象額は2021年の2.10億ドルから上昇することになりました。
その額は2022年には2.30億ドル、2023年は2.33億ドル、2024年は2.37億ドル、2025年は2.41億ドル、2026年は2.44億ドルとなります。

ボーナスプール

ボーナスプールは、新しく年俸調停権を得る前の若手選手に対してボーナスを支払う制度
前述のようにメジャー昇格後3年までの若手選手は最低保障年俸となりますが、彼らを対象に、毎年5000万ドルを上位100人に分配することになりました。

プレーオフ枠拡大

これまでは10球団だったプレーオフの進出が12球団に拡大しました。
オーナー側はプレーオフを盛り上げるために14球団にしたい意向でしたが、「それでは長いシーズンを戦う意義が薄れる」と選手会側が反対。
結果としてお互いが歩み寄り、12球団となりました。

国際ドラフト導入

現在のMLBにはクオリファイング・オファー(適正契約の提示)という制度があります。
これは球団がフリーエージェントになった選手を残留させるために提示する契約で、その提示額はメジャーリーグの年俸上位125選手の平均年俸という決まり。
適正契約を提示した球団は、選手が契約を拒否して他球団と契約した場合にはドラフト1巡指名権が補填され、逆に適正契約を拒否した選手と契約した球団は、保有する上位のドラフト指名権を失うことになります。
2021-2022年の労使交渉では、オーナー陣はクオリファイング・オファー制度を廃止して、新たに国際ドラフトの導入を提案しました。
国際ドラフトとは、現在のアメリカ、カナダ、プエルトリコの学校や独立リーグ在籍の選手を対象にしているドラフトの対象を全世界に広げる制度
実施されるとドミニカ共和国やベネズエラ、メキシコ、さらには日本や韓国、台湾の選手も指名することができるようになるのです。
MLBの経営者にとっては有力な選手の価値が上がってしまう前に青田刈りできる魅力的な制度。しかし日本など各国のプロ野球界にとってみれば存亡に関わる制度です。
この国際ドラフトに関しては2022年3月時点での結論を先送りし、7月に合意期限を設けましたが、結局選手会の反対で見送られました

ルール変更の通告期間

頻繁にルールが変わるMLB。
ルール変更のための通告期間は、これまでの1年前から45日前通告へ大幅に短縮されました。

両リーグ指名打者制

指名打者制をアメリカンリーグだけでなく、ナショナルリーグでも導入しました。

今後の課題

2022年にはなんとか合意に達した労使協定ですが、より多くの金銭を選手に分配したい選手会側と、できるだけ出費を抑えたいオーナー側との溝は、これからも埋まることはありません。
しかしそれ以上に大きな問題もあるのです。

表面化した不信感

2021-2022年の労使交渉で明らかになったのは、オーナー側と選手会側の互いへの不信感でした。
オーナー側は何度も交渉のデッドラインを設定しては上から目線で譲歩を迫り、譲歩しなければ試合を中止にすると発言。しかもその会見で薄笑いを浮かべたことから選手会側は態度を硬化させました。
その結果、選手会の役員たちは「オーナー側がどのような譲歩案を出してきても徹底抗戦を続ける」という姿勢に。
最後にはファンの前でプレーすることを望む選手たちの多数決でなんとか合意に至りましたが、この不信感が残っている間は、次の労使交渉も醜いものになると言われています。

まとめ

日本よりもはるかに厳しい印象があるMLBの労使交渉。
2022年には締結後にコミッショナーが「我々はデッドラインを効果的に使った」と無神経な発言をしたことで選手会側の不信感はさらに大きくなりました。
より良い労働環境のための話し合いは重要。
しかし「金持ち同士の争い」と言われる労使交渉がファン離れにつながっているのもまた事実なのです。

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スポーツで人生楽しむ自然派ライター

筋トレとアウトドアをこよなく愛するライター。某FM局の作家時代、筋トレマスターに師事し、トレーニングブログを3年間で100本以上執筆しました。

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