高校野球で2023年から本格導入された制度が、クーリングタイム。熱中症対策として10分間の休憩を行うものですが、その間、具体的に何をしているかご存知でしょうか?また2023年の夏には制度が導入されたにもかかわらず足が攣る選手も多かったのですが、もしかして逆効果ということはないのでしょうか?
今回は、高校野球の新制度であるクーリングタイムについて、分かりやすく解説します。
【高校野球】クーリングタイムとは
クーリングタイムは、他のスポーツではクーリングブレイクとも呼ばれる制度。主に屋外で行われるスポーツの大会で、気温がある基準より高くなった場合に審判の判断で設けられる給水時間のことです。
このクーリングタイム、もともとはサッカーから始まったもので、国際サッカー連盟(FIFA)の基準では、気温が32度に達したときに審判の判断で前半30分、後半30分の前後に3分間の給水時間を設けることができるとしています。
高校野球のクーリングタイムの変遷
高校野球では2023年に始まったと思われがちですが、実は制度が認められたのは2018年。大会本部の判断で熱中症対策のための休憩時間を設けることが決まり、実際に大会第6日の第2試合、折尾愛真(北福岡)対日大三(西東京)の7回裏終了後に10分間の休憩が実施されました。
そして2023年大会から、5回裏終了後に原則としてクーリングタイム(給水タイム)を行うと決定。
2024年からはさらなる熱中症対策として、一部日程に朝・夕の2部制を導入。その代わりに16時以降に開始される試合についてはクーリングタイムを行わないことになりました。
各都道府県が独自に実施
クーリングタイムは全国共通で行われているものではありません。しかし都道府県の地方大会でも、それぞれの高校野球連盟が独自に対策を行なっています。
例えば千葉県では、全国大会のように5回だけでなく、2回、5回、7回終了後に10分間の給水タイムを設け、大量のスポーツドリンクとベンチの大型扇風機を用意しました。
埼玉県では3回、5回、7回後に3分から5分の給水タイムを実施。
また神奈川県では、開会式を夕方から行うことにし、開会式後の試合は取りやめました。さらに5回終了後など、必要に応じてクーリングタイムを設ける上、ネッククーラーなど体を冷やす道具の持参を認め、ベンチにスポットクーラーを設置しました。
このようにクーリングタイムなどの熱中症対策は各都道府県でもかなり進んでいます。
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【高校野球】クーリングタイムに何をする?
では高校野球のクーリングタイムに、選手たちはベンチで何をしているのでしょうか?具体的なクーリングタイムの過ごし方をご紹介します。
クーリングスペースで体を冷やす
クーリングタイムは日本語で給水タイムともいいますが、給水だけでなく実際に体を積極的に冷やします。
甲子園の場合、ベンチ裏の特設クーリングスペースにスポットクーラーやサーキュレーター、保冷剤の入ったアイスベスト、ネッククーラーなどの冷房器具を完備。選手たちはその部屋でスポーツドリンクなどを飲み、アイシングマッサージをしてもらいながら体を冷やすのです。
さらに選手をサポートする理学療法士がいる上、サーモグラフィーで選手の体温をチェック。
昨年の調査では体表面の温度が45度にもなっていた選手が、クーリングタイム後には37度まで下がっていたそうです。
クーリングタイムの問題点も判明
2023年の大会1日目には、6人の選手に足が攣るなどの熱中症の症状が発生。そのうち何人かの選手はクーリングタイムの後に症状が出て交代しています。
これは体を冷やしすぎた後に熱いグラウンドに戻ったことで筋肉が攣ってしまったからだそう。そこで高野連では、クーリングタイム中にも足首の上下運動や膝の屈伸などを行い、グラウンドに戻る前に軽くジャンプするなど、ふくらはぎをほぐす動きをすることを指導しました。
さらに2024年からはクーリングタイム中のセカンドアップは終了3分前からOKとするなど、実施方法を改良しています。
戦術面でも有効に利用
2023年大会で優勝したのは神奈川の慶應。その試合の中でも最も印象的だったのが、準々決勝の沖縄尚学戦です。
この試合で慶応は5回終了までわずか3安打。2対0で負けていました。ところがクーリングタイム後の6回表に沖縄尚学の東恩納投手に四球を挟む5連打を浴びせ、一挙に6得点も挙げています。
この試合後、森林貴彦監督は、「5回までと6回からの2試合に分けて考えていた」と話しました。前半は負け試合で終了、6回から2試合目が始まるという意識で気持ちを切り替え。さらにクーリングタイムの後半5分を使って選手たちはミーティングを開き、狙い球を各自で絞ることを確認しました。それが6回の攻撃につながったというのです。
同じように多くの勝ちチームが、クーリングタイム中に体だけでなく頭も冷やし、考え方を整理できたと話しています。
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まとめ
近年になって急激に増えている猛暑日。本来なら屋外での活動を避けるように言われる気温の中で高校球児たちは全力の試合を行なっています。
クーリングタイムは一定の効果がある対策。戦術的に上手く活かすチームも増えています。
しかし一方で、「今の暑さにはそれではとても足りない」という声も。2024年からは昼間を避けて2部制にする対策も行われますが、もしかしたら今後はさらに思い切った変更が必要になるかもしれません。
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