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元なでしこ監督高倉麻子が語る|日本女子サッカーの現在地と未来

日本の女子サッカーの立ち上げ期から全盛期、そして今。

選手として監督として変化を見続けてきた元日本代表選手・元なでしこジャパン監督の高倉麻子さんへのインタビュー。

三回目となる今回は、日本の女子サッカーの発展と監督として感じた世界との差、そして今後日本の女子サッカーがさらに強くなるために必要なことを伺った。

【高倉麻子さん、インタビュー1回目の記事はこちら】⇩
【元なでしこ監督・選手が指導】才能を伸ばす『東京キラキラ FOOTBALLスクール』

【高倉麻子さん、インタビュー2回目の記事はこちら】⇩
元なでしこ監督・高倉麻子|女子サッカーの発展と共に歩んだ人生

 

高倉麻子(たかくらあさこ)/元なでしこジャパン(日本女子代表) 監督
1968年4月19日生まれ。福島県出身。元日本代表のサッカー選手。2016年から2021年までなでしこジャパン(日本女子代表)の監督を務めた。
日本サッカー界初のトップカテゴリを指揮する女性監督となる。

インタビュアー・文:高須啓睦

 

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日本女子サッカーの歴史

まず、日本の女子サッカーの歴史を振り返る。

日本で最初に女子サッカーチームができたのは1966年。
1970年代には関東や関西を中心に女子サッカーチームが誕生し、1980年に「第1回全日本女子選手権(現:皇后杯)」が開催された。
これを機に全国でチームが立ち上げられ発展していく。

1981年に初めて“日本代表チーム”が結成されると、1989年には日本初の「日本女子サッカーリーグ」が誕生。

サッカーの最高峰の世界大会と言われているFIFA女子ワールドカップの出場は全8回。2011年に優勝し、初めての世界一に輝いた。

2011年のW杯優勝は色々なことの積み重ね

なでしこジャパンの大きな転機といえば、2011年のワールドカップ優勝。

なでしこの快進撃は日本だけでなく世界中を大きく沸かせた。

日本のW杯優勝は世界の女子サッカー界にも影響を与えたという。

元なでしこ監督高倉麻子が語る|日本女子サッカーの現在地と未来②

ーーー2011年のワールドカップ優勝、なでしこジャパンが一躍注目を集めたあの時代をどう見ていますか?
高倉麻子 なでしこのワールドカップ優勝は、本当にこれまでの積み重ねがあってこそのものだったと思います。

日本の女子サッカー、立ち上げから30年余り何度も苦しい時期がありました。

その時に踏ん張ったチームや選手達、そうやって苦労した先輩たちを見てきた当時の代表選手たちは「このまま負けたら女子サッカーも終わっちゃうんじゃないか」「誰も見向きもしてくれなくなっちゃうんじゃないか」という思いが強かったです。

それに加えて東日本大震災があったことで“自分たちがサッカーでできることをやろう”と、選手達はもちろん、女子サッカーに携わっているみんながまとまっていった。

いろんなことが繋がって、ワールドカップ優勝ができたんだと思います。

 

ーーーなでしこの優勝は世界の女子サッカーにも大きな衝撃を与えましたね
高倉麻子 なでしこの結束力や細やかな女子サッカーが、長い間世界のトップにいたドイツやアメリカのフィジカルサッカーに一石を投じたと思います。

そこから世界の女子サッカーも大きく進化を遂げて、面白くなっていきました。

監督としての苦悩と、感じた“世界との差”

高倉さんが監督として初めて指揮を執ったのは2008年。

U-13・U-14の日本女子選抜監督を務めたあと、U-16/U-17、U-18/U-19/U-20の日本女子代表監督を経て世代別のW杯に出場し、2016年になでしこジャパンの監督に就任した。

ーーー高倉さんがなでしこジャパンの監督に就任した頃のチームはどのような印象がありましたか?
高倉麻子 私が監督に就任した2016年あたりは、ちょうど選手の入れ替えの時期でした。

2011年のワールドカップ優勝から、代表チームはある程度長い期間同じ選手たちで構成されていたので、中堅の選手たちが上手くここに入っていくのが難しい時期が続きました。
そのためこの中堅世代は少し伸び悩んでいるように見えました。

また、私はそれまでもっと下の世代を見ていて、ボール扱いは根本的に上手い選手が多くいました。
若い世代になればなるほど、ポテンシャルが高い選手が多いと感じていました。

でも、A代表は技術だけじゃ上に行けない。
これまで活躍してきたベテラン選手たちの経験と、中堅の良さ、若手の伸び代を踏まえて、チームを創り上げていくのは根気がいったし、予想と違うことが起きることが多く、チームを創り上げていくのはとても難しかったです。

世界一のチームの、その後を追いかける、その地位を守っていかなければならないというプレッシャーと向かい合っていくのは並大抵な事ではなかったです。

 

ーーー世界との差を感じることはありましたか?
高倉麻子 フィジカルの差はやはり大きいと思います。

男子サッカーはそこまで世界とのフィジカルの差っていうのは最近感じなくなってきましたが、女子はまだ海外のチームと比べて平均身長が10センチほど異なることもあります。

例えば守備では高身長のチームにゴール前にクロスをたくさん上げられたら、10本中9本を一生懸命防いでも1本が入ってしまったりする…。

それを理解して、対策を練り、練習し、を繰り返しましたが、やっぱり高さと、ゴール前の圧倒的なパワーを受けてしまうと差が出てしまうことが多かったです。

日本の選手は、真面目で言われたことをよく聞きしっかりトレーニングするので、育成年代である程度出来上がってしまうという事が言えます。
なので「すごい選手になるぞ!」と思っていたら、それほど伸びなかったりすることがあったりする。

でもアメリカや諸外国の選手達は、育成年代では、それほどではなくとも、そこからグンと上がってくるんですよね。そこは強く感じます。

 

【高倉麻子さん、インタビュー1回目の記事はこちら】⇩
【元なでしこ監督・選手が指導】才能を伸ばす『東京キラキラ FOOTBALLスクール』

【高倉麻子さん、インタビュー2回目の記事はこちら】⇩
元なでしこ監督・高倉麻子|女子サッカーの発展と共に歩んだ人生

 

ーーー海外の選手が大人になってからもグンと伸びるというお話がありましたが、日本の選手とはなにが違うと思いますか?
高倉麻子 日本の選手たちは、みんなボール扱いはうまいです。でもサッカーが上手いのとボール扱いが上手いのは違います。

サッカーが上手い選手は技術はもちろんですが “パーソナリティーの部分”の強さや、自立心がやはり別格だと感じます。

海外選手の強みはフィジカルはもちろんですが、選手それぞれの自立というか、ひとりひとりが自分の意見を持ち、自ら考えられるという点が長けていると思います。

そういった点では少し日本は、こじんまりまとまってしまっている印象はありますね。

日本の場合、育成まではみんな、コーチの言うことをよく聞き、言われたとおりにきちんと練習するので割と世界で勝てることが多いですが、その先伸び悩む選手が多いのは、この自立や自ら考える力、行動する力が足りない事が大きいと思います。

A代表の場合は技術だけではなく、メンタリティーの部分やリーダーシップとか、そういうところを持った選手が多くいないとチームに本当の強さをもたらすことは出来ないと思います。

 

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これからの日本の女子サッカーがさらに強くなるためには

なでしこジャパンの監督だけではなく、長きに渡り育成世代の代表監督を務めてきた高倉さん。

現在は「東京キラキラ FOOTBALLスクール」でコーチを務め、幼稚園から高校生を指導している。

元なでしこ監督高倉麻子が語る|日本女子サッカーの現在地と未来①

ーーー現代のこども達を指導していて、感じることはありますか?
高倉麻子 今のこどもは、“指示待ち”の子が多いように感じます。

今の若い世代の選手には特にそういうところがありますね。「どういうふうにやるか言ってくれなきゃできない」という選手が増えているような気がします。

 

ーーー今は知識が豊富な先生やコーチがたくさんいるし、ネットで何でも見ることが出来るので、何でもかんでも、一から十まで全部教えてもらえちゃうんですよね。
高倉麻子 そう。だから考えることができなくなってしまう。

若い子たちはみんな良い子だし、そうやって答えを求めることは大切ですが、私はすべてを指示することはしません。

うまくいく方法を自分で考える力を養っていく事が一番大切だと考えているからです。
そしてもちろんゴールデンエイジでしか養うことが出来ない技術や身のこなしを習得していく事、それを並行して指導していく事が大切です。

でも、女の子はやることを提示して「これをしなさい」と言った方が早く勝つんですよ。
これはもうデータとしてあって、バレーもバスケでも先生がカリスマ的な感じだったり、一から十までやることを決めてプレーさせるチームが強いんです。

でも私はそういうやり方は好きではないです。むしろ断固反対派です(笑)

 

ーーー若い時はそれでいいのかもしれないですが、その子達はその先生がいなくなったら力を発揮できなくなっちゃうような気がします。
高倉麻子 やっぱりそういう子たちは引退が早いようです。

今のこども達は自分の考えを友だちとシェアしたりそういうことに慣れてない子が多いので、急に自分でやれって言われてもなんのことか分からないんですよね。

大人になってからも成長するためには自分で考える力は絶対に大切だと思います。

女子サッカーの魅力は“華やかさ”と“細やかさ”

2021年に日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が開幕した。

日本の女子サッカーをもっと盛り上げるために必要な事、そして女子サッカーならではの魅力を伺った。

ーーー海外と日本では、女子サッカーに対する“熱”も異なると思います。この点はどうみていますか?
高倉麻子 今、女子サッカーが盛り上がっている国はヨーロッパです。

バルセロナでは、女子サッカーの試合観戦に9万人が集まる巨大ビジネスになりました。

日本もWEリーグがスタートして、みんなでなんとか良くしていこうと努力をしていますが、少し遅れをとっていることは確かだと思います。

ただ、30年以上の歴史があるなでしこリーグは、どの国よりも先にきちんとリーグ化して、しっかりやってきた歴史がある。
その財産が2011年のワールドカップ優勝に繋がり、代表が強くなることで日本の盛り上がりを高めてきました。

さらに盛り上げていくためには、育成世代から育てていくことはもちろんですが、指導者と、チーム運営のレベルアップも含めみんなが団結して、強くなっていくことが大切だと思います。

 

ーーー高倉さんが思う“女子サッカーならではの魅力”を教えてください
高倉麻子 女子サッカーは男子のサッカーとはまた違う面白さがあります。

技術もそうですし、やはり、男子にはないちょっとした華やかさもあります。技術、戦術、フィジカル的にも上がってきていて十分競技として成熟してきています。

女子サッカーはスピードがないと言われているけど、女子ならではの細やかなボール運びができたり、組織的でかつ、みんなが献身的なプレーをしたり。
パワーがない分、ひとつひとつのプレーが丁寧です。

こどもに見せる場合も女子サッカーはわかりやすいと思います。

女子サッカーならではの“華やかさ”とか“細やかさ”っていうのを、多くの人に楽しんでいただきたいです。

元なでしこ監督高倉麻子が語る|日本女子サッカーの現在地と未来③

さらなる高みを目指す日本の女子サッカー界。再び世界一に輝くためには私たち国民の応援も必要不可欠である。

女子サッカーならではの魅力を楽しみ、スタジアムに足を運び応援する―――。

東日本大震災の苦しい時、国民に光を与えてくれた女子サッカーの発展を、これからも応援していきたい。

 

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【高倉麻子さん、インタビュー1回目の記事はこちら】⇩
【元なでしこ監督・選手が指導】才能を伸ばす『東京キラキラ FOOTBALLスクール』

【高倉麻子さん、インタビュー2回目の記事はこちら】⇩
元なでしこ監督・高倉麻子|女子サッカーの発展と共に歩んだ人生

 

 



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高須啓睦

高須啓睦

フリーアナウンサー(元NHKキャスター)

学生時代は陸上部で毎日走り込んでいました。主な種目は100mハードルでした!最近はゴルフとキャンプにハマっています。スポーツは見るのもするのも大好きです!

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